FORMULA 1 GRAND PRIX DE MONACO 2016
Circuit de Monaco 3.337km×78Laps=260.286km
winner:Lewis Hamilton(Mercedes AMG Petronas Formula One Team/
                                                                                         F1 W07 Hybrid)

 相変わらずニュル24時間とインディアナポリス500マイルと日程がかぶる
モナコGP。年によってはただのパレードになりますが、今年は比較的当たり年。
昨年ピットの失敗コールで涙をのんだルイス ハミルトンが、ダニエル リカルドの
まずいピットによって勝利を拾ったのも何かの縁でしょうか。

 予選ではダニエル リカルドがPP獲得、しかもQ2をSSで通過する奇策で
スティントの長さも確保し、前戦の屈辱を倍返しにする準備万端。
方やハミルトンはまたQ3でPUに問題発生。それでも走行不能ではなく、なんとか
3位になれたことが結果的に優勝の第一歩となります。
それにしてもリカルドのアタック、かっ飛んでます。

 ところが決勝前から雨が降ってタイヤの話はほとんど無意味に。
SCスタートで全員W(ウエット)の装着義務付け、そして8周目にリスタート、
したと思ったらいきなりジョリオン パーマーがメイン ストレートで自爆。
即VSCになり、この間に後方のドライバー数人が速くもI(インターミディエイト)へ交換。
ちなみにSCドライバーのベルント マイランダーはこの日が誕生日です(・o・)

 こういう天気ではいかに的確なタイミングで良いタイヤに乗り換えるかが
大きく順位を上げるポイントで、ジェンソン バトンの動きを見ておけばだいたい
正解だと思うわけですが、今回そうはなりませんでした。
 確かにコンディション上は既にIで走れる領域に入り始めていたものの、
モナコは抜けないコースな上にさほど負荷も大きくないので、
『今更変えるぐらいならWで蓋してやろう』と留まる人も出没。結果、
判断で勝っても試合に負ける状態、先に動いたもん負けになることが後々
明らかになってきます。

 前方集団では、リカルドはVSC解除後どんどん差を広げ、というかどうも2位の
ニコ ロズベルグが全然グリップしていない模様。ハミルトンが後ろから
俺に行かせろオーラ全開で、ぶつかりやしないか心配になります。
さすがにこれではリカルドが逃げる一方で困るのでチームは順位入れ替えを指示。
16周目、ロズベルグは素直に従ってハミルトンが2位に。
既に14秒近くリカルドは逃げています。
 ここでロズベルグが拒否していたらハミルトンの勝ちはなかったと思うので、
貸し1つまでいくかどうかは微妙ですが、少なくとも0.5つです。

 早く動いた人が軒並み渋滞にハマって想定外にペースを落とす中、
前の2台は余裕があるのでじっくり見て行動、リカルドは23周を終えてIへ交換。
なお、川井ちゃんが解説で
「ウエットでのピットのデルタは22秒」で、ドライより多い数字をどこかで
言っていましたが、コース上の車が遅いウエットのほうがデルタは小さいはずで、
私が映像を見る限り19秒程度です。ロズベルグのアンセーフ リリース回避による
3秒遅いピットを誤って基準にしたのかもしれません。

 しかしさらにじっくり見たのがハミルトンで、どうせこのままじゃ
2位にしかなれんなら、とばかりにひたすら耐える。
リカルドがすぐに追いついてきたけど、ひたすら耐える。
普通のコースで合わないウエットは命取りですが、ここでならアリ。
見事に任務をこなします。これも勝利を引き寄せる一因となりました。

 そして31周を終えたところでいきなりスリックへ繋ぎます。満を持してUS
(ウルトラ ソフト)投入。残り距離が長く寿命が心配ですが、とにかく
前に出ないことには意味が無いので攻めの戦略です。
 翌周、リカルドも反応。まだ路面が濡れていてスリックは1周目からタイムが出にくく、
車が決まっているリカルドは楽々オーバーカットし、アウト ラップだけ
気をつければもう勝ったも同然です。ところが、

タイヤがねえええええええええええ!!!!

 たのクリの話ではありません。どうもピットが狭いモナコではいつもと
勝手が違って、混乱して使いたいSSではなく誤ってSを用意してしまったとのこと。
慌ててタイヤを持ってきたものの10秒を失い、ピットを出るとハミルトンが
脇をかすめていきます。昨年のハミルトンの悪夢と姿が重なります・・・

 ただここからまだチェッカーまで45周以上、ハミルトンは一番柔らかいUS、
リカルドは中間のSS、そして3位にはうまくタイヤを繋いできたセルジオ ペレスが
しれっと存在しており、セバスチャン ベッテルが4位。この2人は一番固い
Sを履いており、前の2人のタイヤが崖に到達することを願いながら走ります。
 実際、どのぐらい保つのか、特にUSは未知数なので、抜けないコースであっても
終盤の大逆転アリ、な感じで目が離せませんでした。

 しかし最終的にハミルトンは最後までタイヤを維持し続けて無事チェッカー。
なんだ、46周も保つじゃないか、というところですが、ハミルトンにとっては、
このスティントで3回もVSCが出たことが大きな助けになったと思います。
 しかも1回はザウバーのしょうもない同士討ちで、1回はバイクのカバーみたいな
大きな物体がコースに飛来、まさに神風でしょうか?
この度にタイヤの温度を一旦下げることができたのは幸運でした。
 逆に3、4位のソフト組は「チェッ」と思ったでしょう。ハミルトンの崖が
来づらくなる上に、自分たちのタイヤは作動温度領域が高いので、
冷えると性能が大幅に低下してしまいます。ペレス大逆転優勝を期待していた私も
ちょっと水を差されたなあと思っていました。
本当に最後の数周は雨が降って水を差してましたが(・o・)

 ハミルトンのタイヤ戦略は2回とも、下手すればタイヤが壊れて全てを
失いかねないギリギリの決断だったと思いますが、運と実力で賭けに勝ちました。
これで悪い流れが止まってくれればと思います。

 またチームの不手際で勝利を失ったリカルドはメディアに対して
「2週続けてトレーラーに轢かれたみたいな気分」と辛辣。
勝てそうなコースが限られるレッド ブルにとって、この2戦ほどのチャンスはないので
落胆は相当なものでしょう。

 そしてしれっと3位のペレス。やはりこういうトラクション系のコースでは
めっぽう強いです。見ていると、この順位を争っていた集団では先に
スリックに乗り換えてアンダーカットに成功していました。
ということはアウト ラップがけっこう速かったということになると思います。
ここも運+実力の3位と言っていいと思います。

 一方、ロズベルグは路面が乾いたら速いわけでもなく、しかも中継では
気に留められていなかったようですが、最終周の最終コーナーの
立ち上がりでニコ ヒュルケンベルグに抜かれて7位に落ちていました。
ところで、ヒュルケンベルグってスリックに変えたあとのピット出口で
黄色線を思いっきり踏み越えてたのに何でペナルティー無いんでしょう?


 そして、忘れちゃいけない、史上最年少優勝者、時の人・マックス フェルスタッペン。
なんと週末で3回車破壊で今回も大注目でしたw
1回目=FP3で壁に当たる
2回目=予選で攻めすぎて事故る
3回目=決勝でFP3と同じ轍を踏む

 昨年のフリー走行の段階で、彼がここでトンデモなく速く、才能が有ることは
明らかでした。が、前戦の優勝で自身を少々持ちすぎて、抑えるべきところを
見極められない、若手にありがちなミス連発でした。
特に予選での失敗は、Q1の全く攻める必要が無い場面で、手前のコーナーから既に
速すぎてラインが決まらず右前輪を壁にぶつけており、叱責ものだったと思います。
ちょっとしたことで全く輝きを失う人も多いので、チームは言うべきことは
きちんと教えて才能を伸ばす必要があると思います。