FORMULA 1 GRAN PREMIO DE ESPAÑA PIRELLI 2016
Circuit de Barcelona-Catalunya 4.655km×66Laps=307.104km
winner:Max Verstappen(Red Bull Racing/RB12)

 スポーツには時として目に見えないすごい力が働いているんじゃないかと
思わせる場面があり、言うなればたった数年に1度の予想外を目撃したいがために
F1を見ることを止められない自分がいるわけですが、
マックス フェルスタッペン、18歳と228日、史上最年少のF1初優勝です。
ちなみにNASCARのカップ シリーズでの最年少優勝記録は
ジョーイ ロガーノが2009年に記録した19歳1ヶ月4日。抜かれた(~_~)


 予選ではルイス ハミルトンがPP獲得。Q3の1回目でエラいロックして
アタックに大失敗でしたが、ニコ ロズベルグが出したタイムが自分のQ2のタイム
以下だったことが好材料となったか、2回目のアタックで1"22.000とピタリ賞w
 ポイントで大きく負けるハミルトンからしたらこれで10点ぐらい欲しいでしょうが
残念ながら何ももらえません。

 2列目にレッド ブルが並び、フェラーリは3列目。
フェルスタッペンはQ2までダニエル リカルドを上回るタイムを連発でしたが、
Q3でリカルドが意地の1発アタック。しかしフェルスタッペンの底知れぬ可能性を
感じた瞬間でした。
 ただレース前に私はこんなふうに思っていました。
トロ ロッソではタイヤを多く使いガンガン攻め、チームメイトですら
突付きまくる超積極的レースが、おそらくチーム方針として取られていたので
好きに走れましたが、『1軍』ではそうは行かないはず。
抜きたくても抜かせてもらえない、ピットでの優先権がなく不本意な順位低下がある、
しかも、リカルドは現ドライバーでトップ級のタイヤ維持能力者。
この環境でどこまでやれるのか、今日は3ストップで抜けずにそこそこに
落ち着くのか、そんな感じでした。そう、ほとんど全て逆になったわけです。


 今年スタートがうまくいかないハミルトン、緊張のスタート。
蹴りだしは良かったものの、ロズベルグも同等でスリップストリームを使って
ターン1で大外刈り。これは素晴らしい動きでした。しかしその後に悲劇が。
 ターン3の立ち上がり以降やや速度が鈍いロズベルグ。乱気流を避けるように
少し違うラインで追うハミルトン。ターン4に向けてハミルトン急接近!
外から内に大きくラインを変えてインに飛び込もうとするハミルトンに対し、
インを抑えに行くロズベルグ。引かなかったハミルトンは押し出されるように
右側から芝に乗ってしまい芝ブレーキで打つ手なし。ロズベルグを巻き込んで
2台でクラッシュして砂場へ。何もかもが一瞬で終わりました。
この件は別個扱おうと思いますが、レーシング アクシデントであるということは
間違いないと思います。


 優勝候補2台が消え、『3位争い』だった青と赤のレースが一転優勝争いに。
リカルド、フェルスタッペン、セバスチャン ベッテル、キミ ライコネンと
いう並びで、ここから2対2のレース。それ以降はペースが遅いので無視しますw

 このレースは、計算上は3ストップが速いようだが、とにかくコース上での
追い抜きが難しいので、よほどタイヤが保たないか、圧倒的な速さがなければ
2ストップのほうが無難、という予想。
 そして現在のトップはリカルドで、彼はマネージメント超人。
当然彼は2ストップで、フェルスタッペンが対ベッテルの『防壁』であろうと
予測します。
ひょっとしたらチームでの初レースだし、リカルドに付き合ってるのも
大変なので彼は3ストップかも?そんな想像で、見事に逆でした。

 ところが、結果的にリカルドとベッテルが3ストップ、フェルスタッペンと
ライコネンが2ストップという展開に。
レース後のコメントを見ると、両陣営とも作戦を2台で分けた上で、
基本的に3のほうが速いので良いドライバーをそっちに割り当て、もう片方を
予備的に配置したような感じ。
 ベッテルはソフトでは良いけどミディアムがうまく使えないのでできるだけ
ミディアムの時間を短くしたかったようです。

 4人のピットのタイミングとタイヤをまとめると

Lap
1
12
13


16
        
29
30


35
36


38


44


66
VES
S
――
M
―――――
M
――――
RAI
S
――
M
―――――
M
――――
VET
S
――
M
―――――
S
M
――――
RIC
S
――
M
―――――
S



M
――――
?

(タイヤを基準に書いているので、例えばリカルド12周ミディアム、というと
ピットに入ったのは11周終わりです。また、リカルドはバースト後の最後のタイヤが
画面上確認できなかったので?にしたんですが、画面から切れましたw
まあ展開に関係ないのでいいですw)

 第1スティントはSC開けのリスタート時には3位にカルロス サインツがいたので
この2チーム間に差がありすぐには何もおきない状態。
 トップのリカルドがアンダーカットでせっかくのチャンスをフイにしては困るので
真っ先に1回目、次の周にフェルスタッペンとライコネンが同じ周。
ベッテルは妙に引っ張ったので、普通に考えたら2ストップで、タイヤの差を生かして
フェルスタッペンを仕留めたあと、次はリカルドをアンダーカットで抜く作戦か?
と予想していました。

 第2スティントはリカルドが先に入った分リードしていたものを少しづつ
フェルスタッペン、ベッテルが追いついて3台が接近戦に。
フェルスタッペンは逃げたくても前にリカルドがいるから飛ばすとタイヤを
消耗するわけですが、一方でDRSを拾うとベッテルのDRSをほぼ無力化できるため
微妙な立ち位置。
 見た目上リカルドが追われているようですが、普通に考えたらリカルドは
抜けないコース特性を考慮してペースを抑えて走っているんだろう、と思いますが、
なんと真っ先に2回目&ソフトへ交換で3ストップ確定。
ベッテル陣営も「先越された!」とばかりに翌周追随。
方や残った2台は反応する様子がなく、ここで初めて作戦が違うらしいと気づきます。
 リカルドの能力からすればなぜ3ストップを選んだのかやや謎。
レース後の彼のコメントも、とやかく言わないぞ、という感じでとやかく言っていますw
計算上は速いと思ったら、思った以上に2ストップでもタイムが落ちなかったんでしょう。
 なにせ、最初から3と2で分かれているなら、3のリカルドは飛ばしていかないと
いけない立場で、にもかかわらず2のフェルスタッペンの目の前を走っていたんですから、
ここの時点からして計算と違っているはずです。

 3ストップ組は3回目にしてベッテルが先にアクション。
たった8周でソフトを捨ててしまうという意表をついたアンダーカットに
リカルド陣営はカバー不能と判断してステイ アウト。
新しいタイヤで最後にもう1度アタックを試みる考えで、実際終盤に
追いついてアタック開始。

 で、実は私はというとこの頃、
「実はタイヤの使用順が違うだけで実はフェルスタッペンも残り15周で
ソフトに替えるんじゃないの?」とまだ疑っていました。
こんな、あまりに出来過ぎで、脚本を書いたらベタすぎて
脚本家をクビになりそうな展開のまま終わることが信じられなかったのですw

 この2台自体も前より1周0.5秒ぐらい速いペースで走行していたため、
単純計算で最後の最後にピッタリ同じ場所まで追いつくと思われましたが、
リカルド得意の超絶ウルトラスーパーレイトブレーキングで争ったため
2台揃ってタイムを失いそれすら成らず。

 それでも疑う私は画面の前でこう呟きました。
「しかし我々は残り3周でいきなり右リアがバーストするということを知っている・・・」
勝ってほしくないわけではなくむしろ逆で、あまりに信じられなくて、
ここまで来てこれで何かあってダメだったらショックがハンパないから
何かダメだった時の自分への保険をかけておきたくて・・・^^;
 そうしたら本当に残り2周で右リアがバーストしましたよええ。しかも
リカルドのがね。
バーストして余分にピットに入ってまだ4位って、いかにウイリアムズと
差があったかが分かります。バルテリ ボッタス、5位は望みうる最大の結果でしょうが、
バーストした人より後ろとか結構ショックでしょう・・・

 

 なんだか結果的にフェルスタッペンを勝たせるためにリカルドが囮になったような
展開になってしまい、作戦と抜けない特性とメルセデスの自滅で運良く勝った、
という厳しい評価をする人も多いでしょうが、2ストップでありながら
3ストップのリカルドと同じペースで走ってスティントの長さを守った
フェルスタッペンはやはり高い能力を発揮したといえるんじゃないかと思います。
 ましてや、30周以上というタイヤの寿命的にもギリギリのスティントを、
自分より直線の速い、経験値が豊富な元チャンピオン相手に、
まだ完全に慣れているとは言えない移籍したばっかりの立場で、表彰台にすら
立った事ない選手が優勝を目の前にぶら下げられて
最後まで抑え続けたんですから、「あんなことぐらい誰でもできる」とは
言わせない走りだったと思います。

 また、彼を助けた要素の1つに、ものすごく頭がよく入る車両特性も
あったと思います。
セクター3で切れ味鋭く曲がるので、ライコネンは直線に出る前に距離を開けられ、
さらに最終コーナーで乱気流の影響を受けてどうしても直線の出足で負けていました。
モナコでもかなり速い車であろうと予想できます。
 
 さあ、色んな連続記録はリセット、そして新たな歴史が生まれたあとは、
いよいよモナコ。
 今年はウルトラ ソフトがあるので、単調な1ストップ戦から久々に
違ったレースになってくれると面白いと思います。