SUPER GTは2戦を終了しましたが、GT500クラスの
NSX CONCEPT-GTの遅さが目立ちます。
最高位は、開幕戦でRAYBRIG NSX CONCEPT-GTが1周遅れの10位、
第2戦はARTA NSX CONCEPT-GTが1分遅れの6位。
1分遅れと言ったって1回はSCが入ってますから、残りの30周強で
置いて行かれたことになります。
オートスポーツ誌の記事でも開幕戦の段階からハンデについての
コメントが有りました。
今年のNSXはサプライヤー、恐らくザイテックのことだと思いますが、
そこからのバッテリー供給が受けれなくなり、自社制作にはコストも時間も
かかるので非搭載を決断。
重りが取れて速くなるかと思いきやそうでもなく苦戦が続いています。
ハイブリッド下ろしについては
「勝てないから下ろしたのに一つも早くならない自殺行為」といった感じの
論調も見受けられ、実際裏側でどうなっていたのかは分かりませんが、
表向きの理由は供給面であり「じゃあどうして自分でやらないんだ」
と批判されても、そもそも競技用のハイブリッドはザイテックに頼りっきりだったし、
GTに今からさらにお金と時間をかける余裕が無いことぐらい誰にだって分かります。
そもそも自社で作っていないものを誇らしげに掲げたことが方針として
誤りだと思いますが、だからと言って今更作れるものではありません。
速くない理由としては主に
・そもそもFRモノコックを無理やり改造したからMRは有利でも何でもない
・でも29kgのハンデがある
・ハイブリッド冷却用に開口部を広く作ったりしたのが、
空力開発凍結で直せないためただの抵抗物
・重さが変わったのにサスペンション開発も凍結で合わせこみができない
・各コースでのセッティング一からやり直し
といったことが上げられます。
開口部が大きいのは致命的で、口を塞いで空気を入れないことはできるでしょうが、
空気抵抗が大きく、空力的にも理想的でないのでダウンフォースでも損をします。
富士では直線で軒並み遅かったようですが、これもエンジン性能なのか、
空気抵抗なのか分からないところがあります。
足回りは時間をかければ煮詰めていくことは十分可能だと思いますが、
他所も少しづつでも前に進んでいますから、リセットを押したことは大きな損失です。
そして、これは個人的に少し気になっていることなんですが、
昨年まで最低1077kgと、他メーカーの最大ハンデ搭載時以上の重さを常に
背負って走っていた車は、剛性劣化がわずかに早いんじゃないだろうか、
ということです。
DTMと共通規格の3年継続使用モノコックは今年が最終の3年目。
低コストゆえに剛性が低いというのは有名で、実際かなり劣化しているんだけど、
ゆるいのはゆるいなりになんとなく走っている、とオートスポーツ誌での
ある技術屋さんの声。
年間通じてずーーーっと重かったのが2年間ですから、結構な負担があるのでは?
と素人ながら心配です。
で、やはり気になるのが、ハンデはいるのか?という話。
冒頭に上げたASの話、ジャーナリストの人はこんなふうに書いています。
「もちろん、ミッドシップレイアウトを自ら選んだホンダ自身が頑張れ、
という話ではあるが、開幕戦の惨敗ぶりを見るとイベント全体の演出という意味で
ミッドシップハンデはどうなのかという気分にもなる。
こんなことを言ったらホンダの関係者に怒鳴られそうだけど、
もし第2戦富士の現場で怒鳴られたらホンダは逆襲してくる気満々だということだし、
怒鳴られなかったら……ハンデを見直すことを主張しなくてはいけなくなるのだろうかと、
いろんな意味で心配になった開幕戦であった」
結果は心配の通りで、果たして怒鳴られたのか気になるところですが、
現状はまさしくこの文章の通り。
ホンダ自己責任論を掲げるのはとても容易いことですが、
そもそも過去2年はハイブリッド搭載によって何がどうに影響しているのか
はっきりしていないわけで、ミッドシップ単体がタイムにどの程度
寄与しているのかを示すような客観的裏付けがどこまであったのかは謎です。
GTは元々ハンデによって色んな車に勝ちのチャンスを与えよう、という
ハンデ制、規則で結果を盛り上げようという魅せることを重視した
レースだったはずで、F1のホンダPUと同等に、それを選んだんだから
なんとかしなさい、軽減とか甘えるな、という自己責任等の原則論で
片付けるべき問題では無いと、15年以上このレースを見ている私は
感じてしまいます。
恐らく最近の、特に09規定以降のほぼ共通規定でイコールな条件で、という
時代から見始めた人にとってGTは『ガチ』なレースで、自ら逸脱した
ホンダを甘やかすことは許されないのかもしれませんが、
トップを争う車が数台に限られて、しかも巨大なダウンフォースを引き連れているために
昔より遥かに抜きにくい車によるレースというのは残念ながら
玄人ウケはしても、子どもたちにとってはあまりおもしろい、ワクワクする
ものではありません。
GT人気がいかにして広がってきたか、を考えるとそれはあまり良いことでは
ないと思います。
主催のGTA側とすると、岡山はまだ仕方ないとして、富士は高速コースで
ダウンフォースとか足回りとかよりパワーと空気抵抗が物を言うので
あまり参考にならず、第3戦のオートポリスを1つの区切りにするんじゃないかな、
と思っていました。
が、熊本地震の影響でこのイベントは中止に。GTAは、代替イベントを
残るどこかのラウンドに、2レース制として組み入れてレース数を維持する意向を
示してはいますが、それが直近の第4戦になるとは思えず、
いずれにしても判断のための時間が少なくなった形です。
今年はハンデの重りが100kgまでどんどん積まれていくので、
他が重くなればどこかで釣り合いが取れる場面が来るとは思います。
が、シーズンの終わりにはハンデは下ろされていくわけで、そこで
また差がついてしまい、タイトル争いにホンダが絡まないと盛り上がらないのが
正直なところ。仮にメーカー単位で争う形になった場合、
3メーカーだとごちゃつきますが、2メーカーだと互いにその車を前に出す
展開になりやすくレースがシラケやすいという欠点もあります。
個人的にはハンデは無しにして、その代わり、来期以降の新モノコックでの
次期車両については、GTAがこの規定時に言っていた
『できるだけベース車のエンジン搭載位置を守って作成して欲しい』という
ポリシーは破棄して、全車FRの同じ形でレースできるように
3メーカーの話し合いを進めるべきだと思います。
増え始めたライバルに対していきなり軽くなるために、見た目上いきなり
NSX無双になる可能性が否定できず、GTAとして2の足を踏みたい気持ちもわかります。
開幕の段階からハンデ無しで、速ければ積む形にした方がことの運びが
スムーズだったと思うんですが、こうなっている以上時間は戻れないわけで、
果たしてGTAはどういった決断を下すんでしょうか。