NASCAR Sprint Cup Series
STP 500
Martinsville Speedway 0.526miles×500Laps=263miles
winner:Kyle Busch(Joe Gibbs Racing/M&M's 75th Anniversary Toyota Camry)

 NSCS第6戦は約850mのコースを500回も回る非常識なマーティンズビル。
レース距離は短いんですが、それでも400kmを超えてます。
タイヤが肉厚でホイール系が小さい=ブレーキ容量が小さい、ということで、
気をつけて走らないとブレーキがイカれてレースにならなくなります(・o・)

 デイル アーンハート ジュニアは骨のデザインが施された変なレーシング グローブを
していますが、なんでも月ごとに使用するレーシング グローブをオークションにかけて、
その落札代金を基金を通じて寄付するような取り組みをしているそうですね。
 PPはジョーイ ロガーノ、外側には影が薄すぎるケイシー ケインが来て
久々に頑張ってくれることを期待します。
 開始わずか5周でジュニアがアクシデントに巻き込まれてスピン。
マーティンズビルでは6戦連続で開始から12周以内にコーションが出ています。
ここではよくある接触ですが、結果的に今日はこの手のアクシデントが
あんまり起きませんでした。

 リスタート後もしばらく続いていたロガーノ-ケイン体制ですが、ケインは
だんだん落ちていき、ロガーノも同様。最終的にロガーノは11位、ケイン22位でした。
 この後上位争いを形成していくのはカイル ブッシュ、マット ケンゼス、
ケビン ハービック、ブラッド ケゼロウスキー。そこに、ここで現役最多の8勝を
挙げているジミー ジョンソンも加わってきます。
 さらに、普段あまり出てこない、しかもどっちかというと高速が好きそうな
ポール メナード、ロード コースが得意なA J アルメンディンガーといった
面々も顔を出して単調な展開を阻止します。

 ただ、前日のNCWTSで勝利しているカイルは全般的に速く、
2位にチームメイトのケンゼスがいることでリスタートでも安泰の立場に。
ここではイン側にいないとどんどん後ろから入ってこられて順位が下がるので、
はっきり言って2位で外側からリスタートするぐらいなら奇数の5位とかのほうが
まだはるかにマシでさえあるんですが、チームメイト同士で前列を抑えた場合、
1位があえて外を選び、2位の人はわざとゆっくりスタートして1位を前に出した後
そこに続くと、引き続き1・2位の体制を維持し続けることができます。

 458周目、7回目のコーションで各車ピットへ。タイミング的に最後になるであろう
ピットでもカイル-ケンゼス防衛戦は維持され、残り34周でのリスタート。
ケンゼスはゆっくり出すぎて3位のハービックに攻め立てられますが、
結果的にこれで粘りすぎたハービックが順位を落としてしまい敵を1つ蹴落とします。
 代わって、車がボッコボコに凹んでいてもはやフォード車に見えない
ケゼロウスキーが襲いかかりますが、アルメンディンガーが好ペースで
ここに絡み、結果的に前の2台は逃げ続けます。

 残りが25周となった頃、接触で左リアを傷めたジェイミー マクマーリーの車が
フェンダーとタイヤの干渉で白煙を上げます。
どう考えてもバーストするに違いないんですが、たぶんコーションが出たほうが
ありがたいのでわざと放置している模様(・o・)
何せチームメイトのラーソンが5~6位あたりを走行中でコーションがあれば
逆転をねらえます。
 そして残り17周、待望の(?)バーストでコーション発生。
トップ3は自分から動ける状況になく、4位のケゼロウスキー以降でも選択が割れ、
結果8台のステイ アウト組の後ろに2タイヤ交換のラーソンがピット組の先頭。
 3位のアルメンディンガーが攻め込めるのか、ラーソンは上がってこれるのか、
という中で残り11周のレースが始まります。

 もう最後の最後、ということで、カイルはチームメイトをバッサリ切り捨てて
イン側リスタートを選択。他人に争わせてさっさとリードを築き、
アルメンディンガーがケンゼスを抜ききる頃にはもう0.7秒ほどの差が。
いや、数字で書くと大したことないけど0.7秒って大変やからw

 方やラーソンは明らかに速いものの、前が2ワイドで争っていたら行くところがないので
だいぶ時間を食ってしまい、3位になったのはもう残り4周。
1.7秒も差があっては打つ手がありません。
カイルがそのまま逃げ切り、自身5度目のトラック シリーズとカップ シリーズの
連勝を達成、マーティンズビルでの初勝利を挙げました。

 カイルと言えば、高速トラックで勢い良く走って、ただタイヤを使いすぎて
ロングではダメ、というのが長年のキャラクターだったのに、昨年の
チャンピオンを経てどんどん頭脳的なドライバーになってきています。
 特に今年はダウンフォース削減とタイヤのソフト化によってマネージメントなしに
勝てない制度になってきたので、そこに対応することは連覇の必須条件ですが、
ここまで非常にうまくこなしていると思います。
順位を下げた時もただ突撃するだけじゃなくて、冷静に1つ1つ順位を上げながら
レース全体を見越した走りをしているようです。

 マネージメントという点では、今回『争わずに相手に順位を譲る』という
場面が従来より多かったように感じました。
下手にインに入られてから外で粘っても、どんどん入られるしタイヤは使うし
損するだけなので、ならイン側でリフトして相手を前に出し、それに続いて
またインを走ろう、という安全策ですが、タイヤのライフが厳しくなった分、
やる人が増えた印象です。
 カイルもケンゼスとの間で頻繁に順位を入れ替わっていました。
いつもなら、どこかしらで
「おらー、遅いんじゃどけー、ゴリゴリゴリ」
「なんじゃいぶつけおって、こうしたるわ!」
   グシャッ
という感じのアクシデントが起きるのがマーティンズビルなんですが、
そういう場面があまり出てこなかったのはタイヤと無関係ではないでしょう。

 タイヤを柔らかく・良く減る仕様にすると、リスタート後に色んなラインを
取れるので積極的に順位変動を促す効果があり、タイヤの落ちた人とそうでない人で
速度差が出るので、バトルを人為的に演出できます。
他方で、実力の近いもの同士が走っていると、目先の順位よりライフが大事なので、
かえってバトルをしようとしなくなり、守りの走りが多くなります。
マネージメントも含めて『ドライバーの実力がよく見える』わけですが、
リスタート後しばらくすると上位陣でのバトルが極端に減って間延びした展開が
生まれがちな欠点があります。
 これはF1でのピレリのタイヤと同じ話で、タイヤの差が生む『人為的バトル』を
どこまで面白いと思えるかで評価が変わってきます。
差がありすぎると守る方もほぼ諦めてるので、見かけ上追い抜きシーンは
あるにはあるものの、白熱した駆け引き、というのはほとんどありません。

 ある面で攻勢を促すけどある面で逆に守りを誘発する、というのは
マイナス金利みたいなもんですねw
いっそ作動温度領域に入らないぐらい固いタイヤにしたらどうかと思いますが。
作動させるには攻めまくってタイヤに熱を入れるしかないからみんな暴れると
思いますけどねえw