3月13日放送のテレビ東京系『SUPER GT+』において、
”今季は燃料リストリクターの装着が義務付けられる”
”空力・足回りの開発が凍結となる中、日産は秘密兵器の新エンジンを投入”
といった表現がありました。
しかしこれは詳しい人間からするとややおかしな表現です。
後者に関しては日産だけの話ではないので、ちょっと誇張しすぎです。
そして前者のほうがもっと気になる点。それも含めて、今季の変更点を
いつも通り駄文を交えながらまとめてみたいと思います。
情報源には公式サイトの
”知っておきたい2016年のSUPER GTルール”という記事も取り入れましたので
合わせてご覧ください、ていうか内容だけ知りたい人はそっちを読んだら
うちは別にいいですw
◯勘違いしてはいけないが燃リスは元々付いている
GT+の表現の何が変かというと、『燃料リストリクター』ではなく、
正しくは『燃料”流量”リストリクター』なわけですが、その装着自体は
2014年からの規定で全車に常に行われています。
この規定ではより限られた燃料で効率よく出力を引き出すために、
確か7500rpm以上になったところだと記憶していますが、最大燃料流量が
100kg/hに制限されるような装置が仕込まれています。
(空気量を制限するエア リストリクターでは、空気量と燃料量の最適な混合比率が
空気側の制限で崩れるため、それ以降の領域では燃料が濃すぎて効率が悪い
燃焼を無理やり行ってパワーを出すことになるため、市販車の技術と何ら
関係がなくなり、環境イメージと逆行する)
これを、ハンデが51kg以上になった場合にはさらに91.5kg/hに絞り、
この状態をもってJ SPORTSの解説ですら「燃リスがある」という言い方を
していました。「ある」ではなく「絞られる」が正解です。
◯違和感ハンデは消滅
で、実際今年はどうなるのかというと、昨年まで100kg/hだったものが
95kg/hに絞られ、代わりに50kgを流量制限に置き換える規則は無くなります。
ハンデ50kgの車と51kgの車では、流量制限で1kgのウエイト、という方が
圧倒的に速いケースがあったため、制度の改定が必要なのは明らかでした。
そして、ハンデのウエイトは上限100kgまで、数字の見たままがどんどんと
足されていくことになります。
元々へんてこハンデができた背景には、DTMとの共通モノコック使用に際して、
向こうさんから「50kg以上重くしないで」と言われていた、ということがあります。
この共通モノコック、2013年までGT500が使っていたものより遥かに剛性が低いんです。
で、これは情報源が見当たらないので想像ですが、
DTMの重量はハンデによって1105kg~1140kg。
GT500は1020kg~ですが、NSXの当初の基礎ハンデが70kgあったので、
ここにポイントのハンデの50kgを足すと、GT500全体としては
1020kg~1140kgとなります。DTMとしては自分たちの上限を遥かに超えて
ウエイトを乗せるのはダメだということでしょうから、NSXから逆算して作った
重量計算な気がします。
そのNSXはその後+57kgになり、今年は非ハイブリッドで+28kgだろうと
いうようなお話。これだと1020kg~1148kgなので、ギリ許されそうです。
ヘンテコ制度は役目を終えたということだろうと解釈しました。
それはぜんぜん違うぞ、本当はこうだ、というのを知っている方がいたら
教えて下さいm(_ _)m
何にせよ、全体的に速度は抑制される方向になっています。
そして今年はウエイトを積めば積むほど明確に遅くなりますし、
しかもその重さのデータを皆さんもっていません。いや、ホンダは
あるっちゃあるかwそこが後半戦の大事な要素となるのは確実です。
GT3車両がさらに高速化すると予想されるので、重い車ではかなり
速度差が接近し、さばくのに苦労を強いられそうです。
◯PPのポイントが復活
そして今年意外な改定なのは、予選のPP獲得車のドライバーに対して
1ポイントが与えられるようになったことです。
SUPER GTでは2002~2008年、予選と決勝のトップ3にポイントが
付与されていましたが、2009年に持ち点×2で始まるウエイト制に抜本改革した際に
一緒に廃止になりました。
ボーナスをもらってもハンデが付いてくるから嬉しくなかったりもして、
確か2003年の第7戦で予選3位になったウェッズスポーツセリカは、
監督の坂東 正明が「バカヤロー、いらねえハンデもらいやがって」と
言っていたという話でした(1点もらえるけど次戦でハンデが+10kg)
当初は最終戦でも付与されていましたが、1点を争う熾烈な争いに、
各メーカーのチャンピオンに関係ない車が新品タイヤでファステストを狙いに行き
『ライバルを決勝ベストラップ上位3台から消して1点を奪い去る』というような
無茶苦茶なことまで起こるようになり、見ているお客さんも
一体誰がチャンピオンになったのかすぐ分からないので、2004年から
「最終戦では付与しない」に変更されたりもしました。
実際問題ハンデ レースのGTにおいて、PPというのは上位チームはシーズンが進むと
取れなくなっていくもので、PPを取ることが必ずしもいいこととも言い切れない
(悲しいかなまだ点が取れてなくて車が軽いままだから取れる場合が割とある)
というのもあったので、無くなったのは当然な気がしていました。
ですから、ここに来ての復活は意外です。
ただ今回はPP限定なので、かつてのような混乱はないでしょう。
◯大渋滞は起きない見込み
以前にも書きましたが、SC中のピットは再び禁止になりました。
仮にこのタイミングでドライバーを代えそこねて規定の周回数を超過した場合は
猶予される規定があるので、これで失格にはなりませんが、
たまたま燃料切れの時にSCが入ってやむにやまれず入った場合でも
容赦なく60秒ストップのペナルティーを受ける無慈悲な制度はそのまま。
例えば
「コーション中の場合は◯秒の給油のみ認める。ただしリスタート後△周以内に
必ずドライバー交代を行い、その作業時間は最低□秒以上でなければならない」
等の規則を別途定めておいて、燃料切れを言い訳にしたズルを防ぎつつ
不運でレースを完全に失わないための保護策も検討すべきではないでしょうか。
他には、GT300のQ2進出車両が昨年比1台増の14台となっている、とか、
「エントラントは観客の視界を妨げるような大きなのぼりなどを表彰台周辺に
持ち込んではならない」といった規定も新設されたようです。
とりあえず不都合なハンデがなくなった分だけ今季は分かりやすくなり、
また、重い人が露骨に遅いため、最近あまりなかった、軽量車両による
中盤戦でのサプライズ優勝も出てくるかもしれません。
特にヨコハマを使う2台は、SFにタイヤ供給が始まって格段にレース用タイヤの
技術力の向上が見込めるだけにちょっと期待してしまいます。