2015年のAUTOBACS SUPER GT、GT300クラスの
ドライバー選手権はアンドレ クート(GAINER TANAX GT-R)、
チーム選手権もGAINER(10号車)がチャンピオンとなりました。
GAINERは昨年も11号車(メルセデス-ベンツ SLS AMG GT3)がチームで
チャンピオンになっていますが、ドライバーでのチャンピオンは初めてです。
クートは2001年からGTに参戦していますが、GT500では通算2勝、
どちらかというと地味な外国人ドライバー、という印象です。
初年度に乗っていたのは綜警 McLaren GTR(マクラーレンF1 GTR)でした。
GT300は昨年から、今年の第2戦がGT300の初勝利で、第5戦でGT500と合わせて
通算100戦出場を達成。そして最終戦を待たずして第7戦でチャンピオンを決めました。
GT300クラスで外国人ドライバーがチャンピオンになるのは史上初めてです。
GAINERは昨年までのSLS2台から今年はSLSとGT-Rに変更。
昨年から全く体制の変わらない11号車SLSがエース、10号車GT-Rは新車だし
他チームは使用しないダンロップ タイヤなので、序盤はタイヤの問題で
手一杯だろう、というのがチームの当初の考えだったそうです。
ところが蓋を開けてみるとGT-R自体がとても速い。今年のFIA GT3車両で
新車はGT-Rだけで、昨年までの直線での速さをそのままに弱点だった劣悪な
燃費も人並みに進化。しかも予想に反して序盤からタイヤが抜群に機能して
経験値が豊富なはずのチームメイトのSLSすら寄せ付けません。
第2戦を終えた段階でチャンピオン争いを引っ張ることは確実だと思いました。
88kgのウエイトで鈴鹿1000kmに優勝したのは恐ろしかったです。
車体のデカイGT-Rは後方乱気流がひどくてZ4で追うのは大変だとか・・・
チームが異なる2台の車を動かすことは難しいでしょうし、ダンロップとしても
簡単ではなかったはずですが、今までGT300で色んな車にタイヤを作ってきた
経験が生きたのかもしれません。GT-RとSLSは規定最低重量はほぼ同じなので
そこら辺はZ4みたいな軽い車を使うよりはマシなのかもしれませんが。
組織力もずば抜けていました。
2人がコンビを組むGTでクートが『一人王者』になったのは、
相棒の千代 勝正がヨーロッパの耐久レースで、事実上世界最高峰のGT3レースとも
言われるブランパン耐久シリーズに参戦、日程が重なる2戦を欠場したためです。
千代はGTではこのおかげで権利はありませんでしたが、ブランパン耐久で
見事チャンピオンになりました。
そしてその穴を埋めたのは富田 竜一郎。彼は極めて異色の選手です。
免許を取ったのは21歳、カートにちょっと乗ったことがあるとはいえ、
ほとんどレース経験はなく、音楽で食っていこう、ぐらいのつもりだったそうです(・o・)
父親が会社の社長でR35 GT-Rのオーナーだったので、走行会に参加する際に
ちょろっと乗ったりしていたそうです。
で、富田父がGT-Rクラブ トラック エディション(GT6未収録)を使ったレース、
GT-R Prestige Cupに参加するにあたって車両を購入、しかし息子がえらく
速いんで「お前出てみろ」という話になります。まだこの時点で本人は
遊びの延長のつもりだったようですが、なんとチャンピオンになりますw
才能をみた関係者から声がかかり、本人もプロを意識。そして色々と繋がって
今年『千代の代役』という役が回ってきました。で、CTEのレースで勝ったのが
2013年の話で、まだレース経験3年程度、というあまり聞いたことのない
経歴の持ち主です。
タイトルはクートだけが獲得しましたが、クートは「みんなのタイトルだ」と
語ります。そしてその「みんな」の中には恐らく彼の息子、アフォンソ クートも
いたことでしょう。アフォンソは6歳の頃に白血病と診断され、2010年、わずか
7歳でこの世を去りました。
タイトルを争うライバルであったB-MAX NDDP GT-Rは第3戦で優勝した後
第4戦はアウディー ミサイルで轟沈。第7戦で一矢報いる優勝を挙げたものの、
最終戦で今度は86ミサイルで轟沈。勝つと撃ち落とされました^^;
TOYOTA PRIUS apr GTも最有力の1台でしたがミスや故障が着実に
点を重ねるGAINER相手には致命的でした。その他の車には対抗する力が
足りていませんでした。全ての原因をここに求めてはいけないんでしょうが、
GT3車両のレースは発売された車の性能と性能調整値で優劣が決まってしまいます。
今年GT-Rの対抗するのはかなり無理がありました。しかし来年は
他メーカーが新車ラッシュで、しかもGT-Rはブランパン耐久でチャンピオン車両と
なって調整が厳しく見積もられる可能性もあるので、いきなり役立たずの可能性が
無きにしもあらずです。
ちなみに、今年の優勝車両はプリウス、CR-Z、86、GT-Rと、規則は
バラバラですが全て日本車。シーズンを通じて外国車が1勝もしなかったのは
2010年以来ですが、この年は紫電が1勝。紫電はベースとなる公道走行車両が
存在せず、『優勝した全ての車両のベース車が日本車』となると2001年以来です。
この年はMR-S、シルビア、RX7でした。
その86を含むマザーシャシー(MC)。今年はVivac 86 MCがPPと優勝を
1度ずつ記録。シンティアム アップル ロータスも速さの片鱗を見せました。
私も以前『MC普及にメーカーも協力を』てなことを書きましたが、最終戦の
記者会見ではそう簡単ではない事情が説明されました。
MCは故障がとにかく多い車でした。その多くはエンジンに起因する振動で、
車体と共振でもしてたんでしょうね。そして電気系にも不具合多発。
「シフト ダウンしたらアップする」というバグが有名です。
壊れたデュアルショックか^^;
これについては販売側のGTAに責任がある、ということで、参加者と手を携えながら
問題を解決している段階で、引き合いはあるものの「売るに売れない」とのこと。
つまり問題解決まで今の4台のみなさんと引き続き実戦テストでもう1年
やらせてください、な状況のようです。
そうこうしている間にもGT3はまた速くなりおる可能性があるわけですが・・・
全体としては相変わらず台数と車種の多さで見応えがありました。
GT-Rがぶっちぎっていても3位以下で数珠つなぎ、とかになっていると
「おお、BoPが機能しとるw」と思ったものです。
GT500と違って、ハンデのおかげで普段見ない顔が上位は無理でも
中団争いに参加してきてくれることもあるのでハンデ大歓迎w
もう少しGT独自調整を遅い車に与えて
『富士にいきなり直線番長が現れてPP奪取』みたいな事件を起こしてくれても
いいんじゃないかなと思うんですがどうでしょう。
来季は新車がどのぐらい出てくるのか、aprは何かまた魔改造車両を
持ち込んでくるのか、RC F GT3はいつ速くなるのか、とやはり
話題が多そうです。なお、2016年以降に製造するJAF GT車両は
エンジン搭載位置の変更ができなくなったので、もうベースがFFの車を
MR化する手は使えなくなりました。