SUPER GTがJGTCとして始まった当初から存在する『ウエイト ハンデ』
導入目的は、より多くの参加者に勝利の機会をもたらしてレースを面白く
することと、開発してもハンデで抑えこむからやるだけ無駄=予算を
使い過ぎないようにする、の2点と言えます。
 順位によるハンデ以外にも数々の特例で設けられたハンデ制度は
時に批判や軋轢を生みましたが、GTはハンデ制レースだからこそここまで
発展してきたと思いますし、それなりに機能もしてきたでしょう。

 ただ、最近のレースを見ていると、果たしてGT500に関してはまだ
この制度が必要なのか疑問に感じています。

 今年の最終戦、GT500のレース終盤は路面が乾いてドライのレースとなり、
SC開け以降は4台の僅差の争いで、この中には3車種が全て含まれていました。
最終的には上位6台が4.3秒差でゴールしています。
もてぎは空力性能があまり影響せず、普段性能で劣るNSX CONCEPT-GTに
とっても戦いやすい環境というのもありましたが、別にハンデがなくても
面白いレースになるんじゃないかという思いが強まりました。
 何せ今の車、というかその前のいわゆる『'09規定』から車両の寸法や
エンジン企画は同じで、極端な性能差はないわけですから。

 今の車は最低重量1020kgで、最大で50kgまでのウエイトを運転席(車両左側)の
下に積むことになっています。故にいわゆる『ウエイト感度』と呼ばれるものが
非常に大きくなっています。
 一方で安全上の問題から(DTM由来のモノコックは剛性が従来SGTで
使用していたものより弱い)現行規定では51kg以上のハンデに対しては
50kg分を燃料流量リストリクターに変換、通常100kg/hの流量を91.5kgに
絞ることでハンデとしています。が、これが富士では強烈に影響する一方で
テクニカルなコースだとあんまり変わらん、ていうか45kgとかのほうが
絶対キツイ、という問題が指摘されています。
 この点については、中途半端に重い人が「ずるいぞ」と言う一方、
実際の体験者側は「だったらやってみろ」と言うので平行線。※イメージです
ただ今年は特にそういう印象が強かったため、最終戦の会見ではこの辺りの
改善の可能性が示唆されました。

 で、肝心の性能均衡化が成り立ったかというと、今年勝った顔ぶれ、
選手権順位等を見ていると、失礼な言い方ですが後方組の遅い人たちが
ハンデの恩恵で下克上できたかというと全くそういうことはなかった気がします。
結局上位勢が重りを乗せながらもいつも上位を争い、そこでハンデ制度が
良いの悪いの言ってるぐらいなら、別にハンデ制なしでも変わらない気がします。

 車の重さが変わるとタイヤのライフも変わりますし、当然スプリング レートやら
何やら全部いじらないといけません。テストの度に各チームは
『実際にそこでレースをする時どのぐらいのハンデか』を想定しながら
テストし、タイヤもバンバン持ち込んでいます。
ん?ハンデのせいでお金かかってません?
 今の車は均等、高性能であるがゆえ本当にわずかな差でタイムが大きく
変わってしまい、ハンデがあろうとなかろうと後方集団の人は性能を
引き出すのに苦労しています。ちょっと5位とかになって10何kgの
ハンデをもらったら、もうそれで狂ってしまって次から全然ダメ、ということも
ひょっとするとあるかもしれません。



 せめてDTMのように基本的なハンデはメーカー単位をベースにして
搭載量もせいぜい20kg程度で調整、あるいはどの程度柔軟に作れるのか分かりませんが
燃料流量を何段階かで用意しておいて重量ハンデはしない、ぐらいでも
良いのではないでしょうか。エンジン側の制度ならより良い効率のエンジンを
開発して市販車に恩恵がある、というメーカーとしての大義名分も作れます。
 その代わり最低重量をもっと引き上げれば速度の抑制もできて、
今求められている要件を満たせるのではないでしょうか?

 GTの長年の伝統ではありますが、もうさすがに変えるべき時が来ている、
私はそう思います。