ついこの前終わったと思ったら2年目のFIAフォーミュラーE選手権が
始まりました。
 昨年はFOXが一手に放映権を引き受けていて、日本はテレビ朝日もこれと別に
契約したので双方で見れましたが、今年はFEが各国の様々なメディアと
放映契約を結んでFOXは地域が限定され、日本もテレビ朝日系のみでの放送です。

 今年からいわゆるパワートレインの開発が認められ、陣営によっては
大部分をオリジナルへと変更してきました。
MGUは最大2基、ギアは最大6段、という規則の下、例えばNEXTEV TCRは
「ツインMGUで1速のみ」という方式を選ぶなど、様々な方法で開発されています。
 決勝での最高出力は昨年比20kw向上の170kw(約231ps)で若干速くなります。

 一方でバッテリーや車体そのものは昨年同様単一車両。レース中に使える
エネルギー総量も変わりません。出力は増えたけど使える量は同じ=
効率を向上させないといけないわけです。
 Team Aguriはパワートレインも昨年と同じ仕様。Andrettiも独自仕様に
するはずが開発が間に合わずやはり継続使用となっています。
Trulli Formula E Teamに至っては準備が間に合わず開幕戦欠場となりました。無念。
 オフのテストの段階からやはりメーカー系チームの仕上がりが良く、
昨年は同じ車だから盛り上がったレースが、戦力差によって単調になるのではないか、
というのが懸念材料です。

 期待と不安の2年目ですが、その初戦SWUSP Beijing ePrix、26周の決勝を
制したのはセバスチャン ブエミ(Renault e.Dams)でした。予選PPと決勝FLも
獲得して30点の満点獲得。
昨年は1点差で年間2位でしたが、会心の滑り出しです。

 レースはPPのブエミが順位を守った一方で、2位のチームメイト、
ニコラ プロストは思いっきり空転して3位に転落。昨年このレースで死にかけた
ニック ハイドフェルドが2位に上がります。
 3周目、シモーナ デ シルベストロが壁に刺さるとF1のVSCに相当する
FCY(フル コース イエロー)が告げられます。詳しくは知りませんが、
告知後にレース コントロールから無線でドライバーに対して直接
カウントダウンが行われ、カウント0の瞬間から全ての車が50km/h以下での
走行を義務付けられます。再開時もカウントダウンが0になった瞬間に
レース再開のようです。

 ブエミはどんどんとリードを広げ、一方でハイドフェルドは後続に
つつかれて防戦の模様。このあたり、PTの性能差なのか、セットなのか、腕なのか、
まだちょっと判別がしづらいところ。
 レース半分の13周でほとんどの車が車両交換を行い、ここでルーカス ディ グラッシが
4位から一気に2位へ。プロストもハイドフェルドより先行しますが、
ピットを出たらすぐに抜き返されます。因縁でしょうか。
 すると交換直後にアントニオ フェリックス ダ コスタとジャック ビルヌーブが
接触して再びFCYになってしまい、1周遅らせた組はとても得をします。
ブエミにとって幸いだったのは上位陣はみんな入っていたことでしょう。

 プロストはこのFCY開けのアクセルを開けるタイミングでハイドフェルドを
出しぬいて再び3位へ。早押しクイズみたいな制度ですが集団でこれをやると
危ない気が^^;
 ハイドフェルドの後ろにはFCYで得をしたDragon Racingのロイック デュバルが
接近。序盤からガンガン攻めまくっているデュバルが揺さぶりまくるものの
そうそう抜けるものでもなく、そうこうしている間にチームメイトの
ジェローム ダンブロジオも追いついて4位争いは3台に。
 一方その頃プロストはディ グラッシを追いかけていたものの、壁に軽く当てて
ウイングの右側のステーが無くなってプレートが斜めに。
空力がいらない車なせいでそれでも追い上げるプロストでしたが、残念ながら
オレンジ ディスク旗が振られ、お怒りのところ申し訳ありませんがガレージへ
お戻りいただきました。どこまでいってもやられ役ですね。

 3位争いとなったハイドフェルドはペースでは明らかに負けており、
なんだか2年連続接触リタイアのフラグが立った気がしましたが、かろうじて
逃げ切ることに成功。Mahindra Racingは初の表彰台だそうです。
デュバルは「ウイングが向こうのほうが寝ていて直線で少し負けていた」と
語りました。
2位のディ グラッシも「本来なら3位、これが今日の精一杯」といった感じの
コメントでした。昨年は年間3位、今年はどうなるでしょうか。
 
 優勝のブエミ、PTの仕上がりもいいんでしょうが、動きを見ていると
シケインで切り返した後、加速に転じた瞬間に車がきちんと前に進んで、
横方向に逃げていない印象でした。
 やはりルノー、アウディー、という昨年から強かった上に独自技術を
足してきた人たちは速い印象。4・5位のドラゴンはベンチュリーの
システム供給を受ける、いわば『カスタマー チーム』なんですが、
本家より速く、特にデュバルは速いドライバーなので期待できそうに思われました。

 あれ?昨年の王者はどこ?という内容を書いてしまうのも無理はなく、
ネルソン ピケ ジュニアは予選からベラボーに遅く、決勝では一時停止するなど
結局2周遅れ。レース後の表情も見るからにがっかりで、
何もかもうまくいかないという感じ。
 チームメイトのオリバー ターベイはFCYの恩恵を受けてポイントを取ったものの、
その点について聞かれたピケは
「毎回自分たちのピットの時にSCが出てるわけじゃないしね・・・」
と、運が良かっただけで車はさっぱり、ということを何ら隠しませんでした。
 予選の映像を見ていると明らかに車の制御系がまともに機能していない様子で、
察するに2基のMGUの協調がきちんとされていないのではないでしょうか。
当分厳しいレースになりそうです。
 とはいえ、上位陣の進歩を見ても、継続使用で安定を求めていては
結果を得ることはできませんから、技術的挑戦とリスクは仕方のないこと。
彼らが今後どう改善してくるのかにも注目ですが、あまりにダメだと
とりあえず新機構を取り下げて元に戻す、なんてこともあるでしょうか。
(規則で開幕後にそれができるのかどうかは分かりませんが)
日本メーカーも亜久里さんに協力して挑戦する気概のある人はいないのか、
とちょっと残念な気がする2年目の開幕です。