2015年のDTM最終ラウンドが10月17・18日に行なわれ、
17日の第1レースでパスカル ベアライン(Pascal Wehrlein/
gooix/Original-Teile Mercedes-AMG)の
ドライバー チャンピオンが決定しました。
ベアラインは20歳と365日でDTM史上最年少のチャンピオンです。
メルセデスにとっては2010年、ポール ディ レスタ以来のチャンピオン輩出です。
このレースは開始からなんだか荒れ模様で、久々にあちこちで
ぶつかりまくるDTMらしい展開に。
連続表彰台で大逆転チャンピオンを狙うアウディーの2人は、
マティアス エクストロームがスタートに大失敗、そして
エドアルド モルターラはあろうことか同じアウディーのミゲール モリーナに
接触されていずれも後方に落ちてしまい、ベアラインは何一つ焦ること無く
タイトルを手に入れました。
カーボンが飛び散ります
ベアラインは今季2勝を挙げ、2位2回、3位1回。18戦中無得点がたった3戦と
全ドライバー中最小。しかもそのうち1戦は故意接触で『撃墜』されたもので、
1つは最終戦の『消化試合』でした。
メルセデス-ベンツはマニュファクチャラー選手権では3位。メルセデスで
彼の次に得点を獲ったのはディ レスタでドライバー選手権8位。
彼以外で優勝したのはロバート ウィケンズの1勝のみ。
メルセデス-AMG C63DTMの戦闘力は決して高いとはいえませんでした。
今年彼を見ていてうまいなと思わされたのは、『ここ』と決めた場面で
躊躇なく相手の懐に飛び込んで抜きされる瞬発力と、荒れた条件での
車の制御能力だと思いました。
髪型や写真に映る表情なんかにもまだまだ若さがあり、無線では常に
何かにいらついて文句ばかり言ってたしなめているあたりの雰囲気は
F1に出てきた頃のルイス ハミルトンに似ている気がしました。
昨年のDTM史上最年少優勝といい、誕生日前日のチャンピオン決定といい、
いわゆる『持ってる』ところもあります。
一方で無線でのイライラっぷりは時にレースでも見え、
とりわけ最終戦はグダグダで、接触で車がボロボロになり、コース上では
ぶっちぎりの最下位(おかげで最後にカメラに大写しでフィニッシュ)
ぶつけられたニコ ミュラーは無線で
"He's F****** Crazy!" とお怒りでした。
ボンネットが飛びます
ライブ無線なので『無修正』です^^;
ハコ車のレースに出ている、というと何となくF1への道からは外れてしまった
印象を持ちがちですが、DTMはF3と併催されることもあってか注目度は高く、
DTMからF1へと進んだ人も数名います。
私が記憶しているのは、クリスチャン アルバース、ディ レスタ、
ロベルト メリー、スポット参戦だけどマーカス ビンケルホック。
特にディ レスタはDTM王者の翌年にフォース インディアでデビューし、
2度の4位を記録しました。今は出戻りでベアラインのチームメイトですが。
既にメルセデスAMG ペトロナス フォーミュラー ワン チームの
テスト・リザーブ ドライバーである彼にF1の可能性は十分あります。
ただ彼にとって最大の壁は、来季から導入されるスーパー ライセンスの
新発給要件。あまりに若い連中が一足飛びに出てくることからFIAは規則を改定し、
『このカテゴリーで総合◯位に入ったら◯点獲得。3年間で40点溜まったら発給』
というゲームみたいな仕組みに変更になりました。
DTMはチャンピオンが15点と低めになっており、(ちなみにGP2は40点、
日本のスーパー フォーミュラーは25点)仮にDTMだけで集めるとなると
最低でも1位、1位、3位、である必要があります。
これだけが絶対的条件、というわけでもないそうなので、政治力があれば
横車を押せるかもしれませんが
今年9月4日発売分のオートスポーツ誌に彼のインタビューが掲載されていますが、
「DTMの競争レベルを考えれば払った努力が全然反映されていない」
と語っています。
ただここでは将来については
「何も計画していない。成り行きに任せる」と語っています。
もし彼が、あるいはメルセデスがF1を標的にしているなら、DTMを続けるのか、
他のカテゴリーに移行するのか。今後の彼にも注目です。