DTMの第6ラウンド(11・12戦)モスクワを前にして、DTMは
前戦シュピールベルクで発生した問題に対し、アウディーを厳罰に処する
決定を下しました。
この話、発生後に取り上げようとして機会を逃していたんですが、
第10戦の終盤で事件は起きました。
このレースの最終周、3台での6位争いが展開されていました。
メルセデスのロバート ウィケンズ、アウディーのティモ シャイダー、
メルセデスのパスカル ベアラインという順でした。
ただでさえブレーキが難しいコースで、しかも強い雨が降る状況。
最後まで目が離せない状態でした。
前日の第9戦を終えてポイント首位に立っていたベアライン。
ターン2でシャイダーの隙を付いて7位に上がると、ここは仲間同士、
ついでにウィケンズも抜いて6位に上がります。
するとその直後、放送に何かしらシャイダー陣営の無線が流れた後、
ターン3でシャイダーが止まりきれずウィケンズに追突。
押されたウィケンズは雨のせいもあってそのまま流され、ベアラインに接触。
2台とも砂にハマりました。その時の様子です↓
問題となったのがこの無線。「Schieb ihn raus!」 英語で言うところの
「push him out!」つまり「ヤツを押し出せ!」と言っていたのです。
明らかに故意にライバルを蹴落とそうとした行為だとレース後に
メルセデス側は激怒。「この声は誰だ」という話になり、
「ウォルフガング ウルリッヒじゃね?」という話になりました。
ウルリッヒはアウディーのモータースポーツの一番偉い人です。
当初否定していた彼でしたが、その後追求に折れたか自身だと認めます。
しかし「無線がつながっているとは思わなかった」
「あれは私の内なる感情。ティモへの指示ではない」としメルセデスに謝罪。
またシャイダーも「無線は聞こえていなかった」と釈明。
しかしデータを洗いざらい調べた結果、全部嘘、明らかに故意だという
結論に至ったようでDTMはモスクワ戦にシャイダーを出場停止、ウルリッヒは
ピットへの「出入り禁止」、そしてシュピールベルクでアウディーが獲得した
製造者ポイント剥奪、20万ユーロの罰金が科せられました。
恐らくウルリッヒもシャイダーも熱くなっていたので、
売り言葉に買い言葉、じゃないですが、勢いでやってしまったんでしょう。
しかし勢いでやったから済まされる問題ではもちろんなく、
データで集めた証拠が確実であるならば、厳罰は妥当な処分だと思います。
彼らが処罰されても、ベアラインのポイントは戻らず、このレースで
勝ったアウディーのマティアス エクストロームが選手権で大きな差を持って
首位に立った事実は変わらないのですから。
ところで、DTMでは以前にも似たようなことがありました。
メルセデスとアウディーの2メーカーだった2007年。
最終戦の1つ前となるバルセロナでのレース。シーズンはアウディーが
極めて優勢でしたが、このレースの序盤からやたらとメルセデスの車が
アウディーの車に接触。
立て続けにぶつけられて脱落者が出たことに怒ったウルリッヒが
なんとレースをボイコット。まるで2005年のF1アメリカGPのように
全てのA4 DTMがピットへと戻ってリタイアするという異例の事態が起きました。
故意性の有無は不明でしたが、ぶつけたドライバーにはペナルティーが
課せられ、結局選手権王者はアウディーのエクストロームでした。