フォーミュラーE第3戦 ウルグアイ。海岸沿いのリゾート地、
プンタ デル エステで行われました。
過去2戦と違ってコースはえらく斜めに延びた形状で、直角コーナーではなく、
モナコのプールサイド シケインのような中~低速のシケインと
ぐるんと折り返す2つのヘアピンで構成される全長2.8knのコースです。
「南米のモナコ」という愛称が付けられているそうで、実際コース図や
ホテルの上層階からワイン片手に眺める姿には似たものがありました。
カルン チャンドックのオンボード&解説
予選でポール ポジションを獲得したのはジャン エリック ベルニュー。
(アンドレッティー フォーミュラー E)今季限りでトロ ロッソのシートを失った
「ほぼ現役F1ドライバー」は早速力を見せ付けました。
31周の決勝。ベルニューはスタートですごいホイールスピンをして大失敗。
2位スタートのネルソン ピケ ジュニア(チャイナ レーシング)がトップに立ちます。
ベルニュー、すごい気迫で追い掛け回しますが、抜く場所がありません。
レースは序盤から波乱続き。前戦でスタートで故障していたダニエル アプト
(アウディ スポーツ アプト)が今回もいきなり動いたり止まったり。
4周目には前戦優勝で、予選でクラッシュしていたサム バード(バージン レーシング)
がブレーキングミスして縁石に乗りすぎ大ジャンプ。真っ直ぐ壁に当たり、
これでセーフティー カー(SC)出動となります。
7周目にリスタートしたものの、今度はアントニオ フェリックス ダ コスタ
(アムリン アグリ)が故障して止まりまたSC。
11周目再びリスタート、ベルニュー追い回す、の展開から13周目、ついに
ベルニューが抜いてトップに。しかし彼は猛烈に電力を消費しており、
2度のSCにもかかわらず半分以下の15周でほぼバッテリーを使い切って車両交換へ。
ピケはサスペンションが少し壊れていたようで、この後セバスチャン ブエミと
ニコラ プロスト(いずれもe-DAMS ルノー)にも抜かれてしまいます。
17周目にステファン サラザン(ベンチュリー)のクラッシュで3度目のSCとなり、
ここで車両交換を行ったブエミが先頭に。リスタート後はブエミが差を広げます。
ところが荒れた展開は終わらず、27周目、マシュー ブラバム(アンドレッティー
フォーミュラー E)がヤルノ トゥルーリ(トゥルーリ)を追いかけて自爆。
またSCとなり、残り2周でリスタートとなります。
もう電池は大丈夫、とばかりにまた攻めるベルニュー。この攻めに、
ブエミはシケインでブレーキに失敗してシケインをカット。
「あー、こりゃあ抜けなくてもレース後審議だな」と思った矢先、ベルニューの
車にまさかの故障発生。これで勝負あり。
ブエミが初優勝をあげ、2位にピケ、3位に3戦連続表彰台のルーカス ディ グラッシ
(アウディ スポーツ アプト)が入りました。
◎翼を授かる?面々
優勝のブエミ、速かったベルニュー、そして5位にはハイミ アルグエルスアリ
(バージン レーシング)。彼らは全員元トロ ロッソのドライバー。
ブエミは今年WECでトヨタ TS040 ハイブリッドを駆りドライバーズ タイトルも
獲得しています。レッドブルのドライバー選定の目は確かなのか、それとも
仕事がないと流れ着く「元一流」の集まりがフォーミュラー Eなのか・・・
◎ハイドフェルドはまた沈む
今回またもファン ブーストを得たニック ハイドフェルド(ベンチュリー)。
実はSC後一瞬だけトップにいましたがすぐにペナルティーでいなくなりました。
「エネルギー最大使用量違反」というもので、なんだかよく分かっていないのですが、
時々出てくる違反です。恐らくですが、「バッテリーを使い切る=残量ゼロ」だと
最後の方の電圧が安定しなかったりして困るので、最大使用量より少し余分に
バッテリーの容量が設定されており、規定使用量の100%+いくらかを
使ってしまった、ということでしょう。
そしてそもそも、SC後に先頭にいたのは、「車両交換の規定最低時間」に
違反していたからでした。安全性を確保する(ベルトを適当に付けて出るとか
されると困る)ため、レースごとに「車両交換の最低時間」が定められており、
今回は「64秒以上」となっていましたが、彼らは規定を大幅に逸脱し、「60秒」
で出ていました。これで同情を買ってまた次回もファン ブースト獲得でしょうか?
◎マネージメントが大事
ピケはレース後「何も当たっていないのにサスペンションがおかしかった」
とコメントしていました。サラザンの事故も、縁石に乗ったらサスペンションが
折れてしまい、どうせ事故にはなっていたでしょうが、ブラバムもスピンして
縁石に乗ったら壁に当たる前からサスペンションが折れていました。
開幕戦でも普通に縁石に乗ったブルーノ セナ(マヒンドラ レーシング)が同じく破損。
市街地レースでシケインと縁石は付き物ですが、重い、ホイールが大径、
そんなにお金かけてない?の3点から、折れやすいようです。
ドライバーはリスク回避をある程度選択する必要がありそうです。
また、F1から来たばかりのベルニューは、果たしてSCが出ていなければ
完走できたんだろうか?と聞きたくなるすごい電力消費でした。
SCを織り込んで使いまくり、後でなんとかする作戦だったのかもしれませんが、
一般的なレースと同じ気分で運転していると戦えない、ということが改めて
よく分かりました。特に今回は大きなブレーキング ポイントが無いレイアウトで
運動エネルギー回生が難しかっただけになおさらです。
新時代のフォーミュラーはあらゆる点で頭を使い、マネージメントをすることが
大事でしょう。
レース ハイライト