GT300クラスの最終戦は戦前の予想通り、GAINER DIXCEL SLS
(平中 克幸/ビヨン ビルドハイム)が優勝。これでチームタイトルを獲得しましたが、
ドライバーズチャンピオンはグッドスマイル 初音ミク Z4(谷口 信輝/片岡 龍也)が、
同点ながら優勝回数の差で手にしました。
 初音ミクZ4は2011年以来実質的に2度目のドライバーズタイトル(前回獲得した際は
GSR&Studie with team UKYOだったが、今年からStudieがBMWの準ワークス
チームとして分離したため体制が異なる)で、谷口はその2011年以来。
片岡はウェッズスポーツIS350で獲得した2009年以来、いずれも2度目のチャンピオン。
 同点でチャンピオンになったのはGT300では2007年
TOY STORY Racing apr MR-S、大嶋 和也/石浦 宏明以来です。
 
 今年の初音ミクは開幕からの2連勝が光りました。確か第2戦の際に、
「過去開幕2連勝したチームは必ずチャンピオンになっている」と書いたと思うので、
法則は生きていました。
 結果的にこの最終戦でタイトルの可能性があったのは、その2レースで共に
表彰台に上がっていた3台。岡山で僅差の勝負となったStudieとは同点で
もてぎに来ましたから、最初の40点がいかに効いたかが分かります。
 
◎攻める姿勢崩さず
 レースはGAINERがぶっちぎり。誰とも争わない、トラブルも無い、とにかく速い。
他に書くことはありません。一方、3位に入らなければいけない、
3位にさえ入ればたとえGAINERの速さなんてどうでもいい初音ミク。
 予選3位からいきなりターン3でOGT Panasonic PRIUSのインに飛び込みます。
当たれば元も子も無い勝負で、プリウスは一瞬切り込みに行きましたが、
なんとか当たらずに抜いて2位にあがります。
 万一プリウスのレースペースが遅いと後続も含めて集団になりかねない、
という考えもあったと思われますが、結果的に初音ミクとプリウスは
ほぼ対等な速さで、しかも4位以下よりハイペース。長い間決め手を欠いた
テール トゥ ノーズとなります。
 
◎分かれた戦略
 抜けないなら作戦を使うしかないじゃない、とプリウスは早めのピットを選択。
タイヤ無交換作戦に出ます。
 一方初音ミクはどうするかと思えばここからさらに引っ張ります。
しかし彼らの後ろに追いついてくる車が2台。
GAINERのもう1台、GAINER Rn-SPORTS SLSとAudi R8 LMS Ultra。
Rnはセカンドドライバーがジェントルマンの植田 正幸なので抜かれても
さほど脅威ではありませんが、R8はそうもいかないので抜かれると
まずいことになります。しかしこの2台は初音ミクを抜いていき、
この時点での実質的な順位は5位。後半で取り返さないといけません。
 
◎迫るR8
 作戦面では4輪交換を選んだ初音ミク。ピットサイクルを終えると
プリウスは10秒以上前方。一方R8はアウトラップで一旦抜いたものの、タイヤに
熱が入ると追いかけられる形となり、GT300の注目はこの2台の争い1点となります。
というかGT500はこの時点でもう決まったようなものだったので
レースの見所自体がここに集約されました。
 見ているとR8はペースでは上回っているようですが、コーナーの立ち上がり、
特にターン4やヘアピンのように舵を当てながら立ち上がるコーナーの
センターでルースに見えました。
タイヤが磨耗してきたことで、ミッドシップの利点であるトラクションの良さよりも、
重量物が後ろにあることで振り子が大きくなる欠点のほうがわずかに勝ってしまって
力が横に逃げているような印象でした。
結局R8は初音ミクを脅かすほどの距離まで接近することができずそのままチェッカー。
 最後の最後まで熱いレースでした。
 
 1周目の飛び込みが甘く、抜きつ抜かれつになったり、後ろから何度も
抜きに掛かって争ったりしていれば、最終的な位置関係は変わっていたかも知れず、
そういう意味で最初のリスクを犯した攻撃には意味があったと言えそうです。
 もちろん、プリウスもいいペースだったので、早々に
「うしろにへばりついて抜かない」というストーキング作戦に出ていれば
恐らく結果には何の変化もなかったと思いますが、何にせよあのバトルが
コーナー1つで終わったことが、1つ勝負の決め手になったかな、と思いました。