NASCARスプリント カップ シリーズ第35戦、Quicken Loans Race for Heroes 500。
1マイルオーバルを312周で争われたレースは最後の最後までドラマの嵐。
トラックレコードとなる12回のコーションが発生した厳しい戦いを
くぐり抜け、いよいよ2014年のシリーズチャンピオンを決める最終戦へと
駒を進める4人が決定しました。
 
No.    ドライバー    メーカー       チーム
 4    ケビン ハービック  シボレー  スチュワート ハース レーシング
11   デニー ハムリン   トヨタ   ジョー ギブス レーシング
22   ジョーイ ロガーノ  フォード  ペンスキー レーシング
31 ライアン ニューマン シボレー  リチャード チルドレス レーシング
 
 
 春のフェニックスでは勝利しており、フェニックス2連勝中、ここ4戦で3勝と
ここを得意としているハービック。3位スタートの彼はレース序盤に
リードを奪うと、何かずるしてるんじゃないかと思うぐらい他を圧倒。
なんと最終的に264周をリード。度重なるリスタートでも誰一人彼を
脅かすことができませんでした。
 ハービック、仮に2位だとポイントでは生き残れなかったため、
勝つ以外に最終戦に残る方法はありませんでした。
 
 ハムリンとロガーノは一度地獄を見ました。
ハムリンはポールポジションスタートながら、最初のコーションでのタイヤ交換後に
右リアタイヤがパンク。恐らくまだエアガンをナットに当てているときに
ジャッキを下ろしてしまい誤ってタイヤの空気バルブを破損したようです。
これでリードラップの最後尾に落ちると、車のアジャストもうまくいかないのか
周回遅れに。一度はラッキードッグパスでラップバックしながらまたその後
周回遅れ。しかし終盤のコーション連発で再びラップバックすると
ピットサイクルがうまくレース展開と噛み合い順位を回復。
結局5位でレースを終えました。
 
 ロガーノもまた、給油缶が外れきらないまま発進して缶が自分のピットボックス前まで
転がってしまい、リードラップ最後尾へ落とされるペナルティ。ここからなかなか
順位を上げられず、チートの速さのハービックに抜かれて周回遅れ。
さらに1つ前のジェイミー マクマーリーも抜かれた直後にコーションが出て
ほんのわずかなタイミングの差でラッキードッグを逃してしまい苛立ちが爆発。
 中盤には同じ境遇のハムリンと激しい「周回遅れの中のトップ」争いを
制してなんとかラップバック。ここからはハムリンと似た展開でした。
結局6位でフィニッシュ。生き残りました。
 
 最も劇的だったのはニューマン。序盤は着実に順位を上げていたのに
中盤以降車のバランスに苦しみ今度は落ちだし苦しい立場になります。
チームは終盤、作戦の分かれ目となったコーションでステイアウトし
トラックポジションを重視。あとはタイヤを換えて抜きにかかってくる
後続を抑えてこらえきれるか、の勝負となります。
 ポイントで争うジェフ ゴードンは2位走行で、1位にはなれそうもなく、
ニューマンに必要な順位は「11位」。
残り12周、最後のリスタートを9位で迎えたニューマンの無線です。
 
クルーチーフ「今ポジション2つの差で圏内だ。OK?」
ニューマン「厳しそうだな」
クルーチーフ「お前ならできるさ」
 
 リスタート直後にデイル アーンハート ジュニアに抜かれ後が無いニューマン。
背後にマルコス アンブローズと、新しいタイヤで猛烈に追いかけてくるカイル ラーソンが
迫ります。なんとか必死で抑えるニューマン。しかし中古タイヤはもう限界。
残り8周、アンブローズにインに入られ、続けてラーソンにも抜かれます。
じわじわ離されるニューマン。万事休す、誰もがそう思いました。
 ところが残り3周、前の2台がサイド バイ サイドで争い、再び差が詰まりだします。
しかし2台の争いはアンブローズが守って再び縦1列に戻り、とうとうファイナルラップ。
 この1つの順位に運命がかかるニューマン。そして・・・
 
ラスト2周の争い
 
 なんと最後の最後、ターン3から4にかけてラーソンのインに飛び込んだニューマン。
そのままラーソンをちょっと壁にしながらターン。方やラーソンは壁まで
押し流されていき、これでニューマンが大逆転で11位。他カテゴリーなら
認められない可能性がありそうですがこれはNASCAR。
まさかの幕切れでニューマンが入りました。
 
「可能な限りフェアーにいきたかったから満足はしていないけど」とニューマン。
  一方のラーソンは「彼の状況は理解していた」と、話し、
ラジオ番組でも「100%フェアだとは言わないが100%ダーティーでもない」
と語ったそうです。
文字だけを見たので実際の口調は分かりませんが、その1つの順位に
チャンピオンが掛かっているならやむを得ない、と思ったんだろうと
推測しています。ラーソンは新人なんですが、すごいドライバーだと思います。
 
 一方これで1ポイント差で敗退となったゴードンは、
「クリーンに行ってほしいよね。他の車をクラッシュさせて勝ち残ったり
チャンピオンになったりするのは見苦しい。ここ2週を見ていると
来週もそうなるんじゃないかと心配しているよ」
といった感じのコメントをしていました。
(ざっくり解釈しているので間違ってたらごめんなさい)
 ゴードンは先週、残り2周でブラッド ケゼロウスキーに接触されて
大きくポイントを失い、そして今週の結末ですから文句を言いたくもなるでしょう。
 ちなみにそのケゼロウスキーは、自身の先週の行為と今週のニューマンの
行為が似ていることを指摘されTwitterで
「自分はわざとじゃないがあれはわざと」といった趣旨のコメントをして
違いを強調したそうです。
 
 さあ、いよいよ日本時間で17日の早朝、
ホームステッド マイアミ スピードウェイでのFord EcoBoost 400で
チャンピオンが決まります。
4人はポイントが5000にリセットされ、このレースでは
ラップリード、、最多ラップリードのボーナスポイントは無し。
要するにここで4人の中で一番良い順位だった人がチャンピオンです。
 仮に争ってもつれて全員ガレージ送りになったら、その中で無理やりにでも
ボロボロの車で1周でも多く走って帰ってきた人が、たとえレースの順位は
39位でもチャンピオンです(^ ^;)
 4人はいずれもチャンピオン経験が無いため誰が獲っても初タイトル。
情勢はハービックvsロガーノですが、ハムリンは昨年のこのレースの勝者。
そしてニューマンは、明らかにもっと早くに争いから脱落すると思われていた
「アンダードッグ」なのに、ここまで来たという点である意味最も
流れと運を掴んでいます。
 最終戦も最後の最後まで何がおきるかわかりません