2014年のF1も残り2戦となりました。
ルイス ハミルトンがニコ ロズベルグに24点差を付け、いよいよ
自身2度目のワールドチャンピオンが近づいてきました。
今年は序盤からもう2人のどちらかがチャンピオンだというのは明らかでしたが、
私は「ロズベルグだろう」と思っていました。
開幕戦でハミルトンがリタイアして追う展開だったこともありますが、
ハミルトンは時折集中力を欠いたようなミスをすることがあり、
抑えるべきところで攻めすぎてリアタイヤを壊す傾向があるため、
既にリードしているロズベルグが淡々と要点を押さえていけば、
言い方は悪いですがハミルトンは勝手に取りこぼすだろう、と思っていたからです。
自分の中でハミルトンのランク付けは、例えばアロンソがAAA(トリプルA)
だとするとAAA-(トリプルAマイナス)か、AA+(ダブルAプラス)ぐらいの
位置づけでした。
ところが蓋を開けてみれば、予選の順位ではロズベルグがハミルトンに対して
10勝7敗としているものの、決勝では6勝11敗。
特にロズベルグがポールでスタートした9レースで、そのまま勝ったのはわずか2回。
(残りはハミルトン4、ダニエル リカルド3)
トラブル等で予選が実力を反映していない/決勝を走れていないケースも
もちろんありますが、私が思っていた印象とはまるで逆です。
とりわけ最近のレースを見ていると、ハミルトンはロズベルグの背後についても
チャンスをじっと待ち、ここぞのタイミングで一気に仕留める
抜群の集中力を見せていて、荒いバトルが批判されていたドライバーとは
別人のようにすら感じます。
専門的な問題は分かりませんが、私は両者を見ていて感じる違いは、
タイヤの使い方と燃費だと思います。
今年のロズベルグはタイヤの前後の発熱バランスに苦しんでいるような様子が
度々見られ、ハミルトンはうまく使いこなして対応しているように見えます。
シンガポールでは磨耗するタイヤと戦いながら、「見えないライバル」との
戦いを制しました。
これまたタイヤをすぐに傷めて、エンジニアから
「タイヤをもたせろ」と言われたら「どうやったらいいか分かんない」と
言っていたドライバーとは思えないイメージチェンジです。
ドイツGPからFRIC(前後のサスペンションを油圧で接続して、機械的に前後の
サスペンションに入力と逆の力を与えて車高を常に一定にする、
アクティブサスペンションの代替品)が実質禁止となり、これが戦闘力に
微妙に影響したことも考えられるかもしれません。
ドイツで勝って以降、ロズベルグはポールは4回獲ったものの勝てていないのです。
そして、国際映像に時折表示されるテロップから、ハミルトンはロズベルグより
燃費の良い走りをしていることが分かります。
後ろから追うときにはDRSを使って燃費を稼ぐことができますが、
それなら抜かれた後ロズベルグが同じことができるはずですから
それだけではないはず。
前を走っていてもやはりハミルトンの方が「エコドライブ」に見えます。
それゆえ、ハミルトンだけ最初から燃料を95kg程度しか搭載していないと
思われるレースがいくつかあったと思います。
軽くするからタイヤの負担が減り、ロングランで有利に働きます。
同じ搭載量ならよりパワーを出すことが出来ます。
燃費が良い理由がよく分かりませんが、コーナー手前でブレーキの前に
アクセルを戻して空走させる、いわゆる「リフト&コースト」のやり方がうまくて
タイムロスを最小限にしているのかもしれません。
リフト&コーストにはリアタイヤの発熱を抑え、長持ちさせる効果も
あるので、これだとハミルトンが今年タイヤを長持ちさせている理由にも
説明が付きそうです。
(ちなみにやりすぎるとタイヤの温度が下がってペースが保てなくなる)
アクセルオフできれいに曲がる車にしてやると旋回中にハーフスロットルで
コントロールしてやる必要がなく消費が抑えられますから、セットアップと
ドライビングスタイルかもしれません。
何にせよ、今年の規則では燃費が非常に重要なので、この面で
優位性を持っていることがかなり効いていると推測できます。
ロズベルグは何回やっても追い詰め、抜き去っていくライバルに歯がゆさを感じ、
ベルギーでの同士討ちやロシアでのスーパーフラットスポットブレーキングからは
初のタイトルに対する重圧に負けている印象を持たざるを得ません。
もはやポールポジションが取れなくても抜く自身があり、というかもう
抜いて1位になる必要性すら無くなったハミルトンの心境とは
雲泥の差があるでしょう。
無論ハミルトンも全く変わったわけではなく、危ない状況はありました。
予選でブレーキが壊れて20位スタートのドイツでは、
「譲ってくれるだろう」と安易にジェンソン バトンのインに入ってウイング破損。
エンジンが燃えて22位スタートのハンガリーでもスタート後いきなり
スピンしてまたウイング破損。悪い癖が出た形です。
どちらも当たり所しだいではレースを失っていましたし、双方ともセーフティーカーの
導入にいくらか助けられました。
この2戦がともに3位だったことはシーズンに大きく影響しています。
あたかも、この2戦と同士討ちで消えたベルギーを経て1段階進化したかのように
その後5連勝しています。
チームのボスは、ダブルポイント制による大逆転劇を少々危惧している様子。
ハミルトン自身、2007年にピットロードの砂場に車を埋めて確実だったはずの
タイトルを逃し、2008年は最終ラップの最終コーナーで逆転タイトルを
決めた身ですから、最後まで何が起こるか分からないのは良く知っているでしょう。
残り2戦、私が「もう以前とは違うからハミルトンが逃すはずは無い!」
とか言うとまた逆のことが起きそうなので黙って見ようと思いますが、
今年獲れば本当に最強レベルのドライバーに進化したと言えそうです。
もちろんロズベルグがここから盛り返しても劇的ですが、ただ
ダブルポイントの恩恵を存分に受けて、、、みたいな話だと
この制度導入時にも述べたと思いますが、心境としてはいわゆる
「*(アスタリスク=注釈)付き」として捉えてしまうかもしれません。
ちなみにブラジルの週末の天気を調べたら、週末どころかほとんど毎日
「晴れ一時雨」で全然役に立ちませんでしたw