長い長い夜の宴、シンガポールGP(SINGAPORE AIRLINES SINGAPORE GRAND PRIX)。
予想だにしない結末、というか始まりによりシーズンの行方はまた大きく動くこととなりました。
結果だけを見ればハミルトンが勝ち、レッドブルが脇を固めた、という
簡単なお話ですが、そこに至る過程には玄人好みな見えない争いが見えました。
予選ではルイス ハミルトンがニコ ロズベルグを0.007秒上回りポールポジション。
市街地で偶数列スタートがかなり不利とされるため、2列目のレッドブル2台、5位の
フェルナンド アロンソを絡めたスタート後の動きがポイント。そこに過去出動率100%の
セーフティーカー(SC)、そして毎年イマイチな動きでずいぶん時間をかけてしまうマーシャルの
手際が案外関係したりして、と思っていました。
◎ニコ、動け、ニコ!なぜ動かん!!
ところがありえないことにロズベルグの車は日曜になると突然不調でガレージ大慌て。
なんとかグリッドには付いたもののステアリング関係の何かがおかしい模様で動きません。
ステアリングは高性能PCのような頭脳の塊。こいつが作動しないとまともに走れません。
ピットレーンへと移され、ステアリングを差し直してとりあえずスタートしたものの、
車はセーフモードで起動したPC状態。ほとんどの機能は使えず、なぜかシフトアップは
1速飛ばし。テールエンダーすらまともに抜けず、結局リタイアに終わりました。
ステアリング内の配線が原因と発表されましたが詳細は謎。
ハミルトンのプレッシャーに負けたのでしょうか?
案外湿気で傷んだ、とかバカみたいな理由で格好悪いから黙ってるのかもw
| シロッコ 「 | 『身体を通して出る力』?そんなものが、グランプリカーを倒せるものか!」 |
◎一方コース上は
ナイトレースでステアリングディスプレイがよく見えるもんだから壊れたロズベルグ車の
車載は結構面白いわけですが(差し込むとまずメルセデスロゴの起動画面が出てくるなあ、とか)
トップはハミルトンが快走し、2位争いがスタートから盛況でした。
4位のセバスチャン ベッテルが偶数列ながら抜群のスタート。前のグリッドに誰もいないので
真っ直ぐ加速し、3位のダニエル リカルドはすかさずインに寄せていきます。
するとこれで5位のアロンソの前が開ける形となりスリーワイド。
アロンソは全く曲がらず超絶ショートカットして2位。ベッテル3位となりますが、
間違いなく怒られるのでベッテルに譲りお咎めなしに。リカルドにも譲った方が良いのでは?
と思う微妙な感じだったので、アロンソは結果的にうまくやったことになります。
◎明暗分けたタイヤ選択
2~4位争いは、2回目のピットサイクルでアロンソが3セット目のオプション(スーパーソフト)
タイヤを使い、ベッテルに対しアンダーカットを仕掛けます。するとレッドブル側は恐らく
「どうせ今から対処しても逆転されるに決まってる」と考えたか、ここでプライム(ソフト)タイヤに
交換し、アロンソと張り合うよりタイヤ義務を消化しておくことを決断。リカルドも
周回を引っ張った上で同じ戦略をとり、後々の展開に備えます。ハミルトンは
ほどほどの差でトップを走行中です。これが終盤にとても影響してきました。
◎SCさんが入室中です・・・
今年は出ないなあと思ったちょうどレース半分の30周目、セルジオ ペレスが
エイドリアン スーティルに、踏まれたような壁に追いやられてぶつけたような
感じでフロントウイングが粉々に飛び散り、やっぱりSC投入となります。
上位4台はいずれもさっきタイヤを換えたばかり、アロンソは
「ここで換えて義務を消化しないとまずそうだなあ」とプライムに交換し2→4位に落ちます。
他3台はステイアウト。
私自身は、コース清掃だけですぐリスタートすると思っていましたので、いくら義務を
終えたとはいえ、レッドブルは最後にもう1度タイヤを変えないと最後までもたないと
思っていました。元々3ストップのつまりだったものが、数周SCが出たくらいじゃあ覆らんだろう、と。
実際リスタート後もベッテルは最後までいけるとは考えていなかった節があります。
推測ですがアロンソ陣営も当初はそう考えており、彼らは
「うちはもうこれで最後まで無理やり走るから入らんもんね~」と、まだ自分たちが
不利益を被ったとは感じていなかったかもしれません。
◎やっぱり時間がかかった
ところが実際のコーションラップは7周に及び、リスタートは残り24周となった38周目。
1周5km以上の長いコースでのレースですから、レース距離の10%以上が消えたことになります。
プライムの耐久性は20周+アルファ(川井 一仁分析)ということで、数周既に走っている
プライムでも、ギリ行けそうな距離になってしまいました。というか残りの距離が
減るとオプションに換えても抜いて取り返す時間が無いのでもう意地でも最後までいくしか
選択肢がない雰囲気になってきました。もうちょっと手早く処理できんかったもんかと
思いつつ、やっぱり処理時間が鍵になったなあと妙に自分の予想に感心ですw
◎ハミルトンに課せられたミッション
というわけでもうピットに用事があるのはハミルトンだけ。彼はピットインまでに
ピットロードロスタイムの約27秒差をつけなければ、コース上でライバルと争わなければ
ならなくなりました。最初は快調に飛ばして行きますが、オプションは寿命が15周+アルファ、
デグラデーションが0.25秒/周(いずれも川井 一仁分析)とすぐボロボロになっていくので、
あんまり慌てると壊れてピットインが早まりますし、かといってあまりペース配分しすぎると
残り周回数が無くなって、仮に引き離しきれなかったときに抜き返す時間がなくなってしまいます。
ましてや23秒ぐらいのところで変にセーフティーカーに出られても困るので、
そこそこで義務を果たしにかからないと大損するリスクもあります。
ハミルトンは焦らず、ミス無く、かつ着実に差を築き上げる仕事を必要とされ、
楽勝ムードはどこかへ行ってしまいました。
◎任務完遂!
SC中に交わされた無線では、そこまで緊迫していないと考えたか、あるいは
慌てさせないようにするためか、「後ろはみんなプライムで最後まで走りきるけど、
こっちはペースが早いから問題ない」と言っていたエンジニアですが、実際けっこう
際どい状況になりました。
だんだんタイヤ性能が低下。もちろん後ろも無理して距離を伸ばしているので
差は広がっていくものの、広がり方は鈍化します。27秒差になるまで入れたくない、
でもそうしているうちにいきなりタイヤ性能の崖が来て後続を下回るタイムが出てしまったら大損です。
結局ハミルトンはリカルドまでを「オーバーテイク」したものの、ベッテルだけは
27秒圏内に残したまま最後のピットへ。
2位で戻ったハミルトン。さすがにベッテルに抵抗する余裕はなくあっさりと
トップを取り返し最後は楽勝となりましたが、ひょっとして、と思わせるレースでした。
◎きちんと使う重要性
実は2回目のストップ後、早く入ったアロンソと引っ張ったハミルトンの間隔は、見た目上
4秒付近まで接近していました。ここでもしハミルトンが必要以上に飛ばしてタイヤを
使っていたら、最後はもっと苦しくなっていました。することがないからって暇つぶしに
ベストラップを更新して遊んでいたら、こういう万一のときに苦労します。
昨年までその最たる存在だったベッテル、今年はタイヤマネージメントがうまくいかず、
今回も最後がかなり長くなったために最後の数周はタイヤがほとんど死んでいましたが、
なんとか2位のまま車を持って帰ってきました。
イタリアでもほとんど死んだタイヤで数周抜かれずに踏みとどまったりしていて、
マネージメントはうまくいかなくてもやれといわれたらとりあえずなんとか誤魔化して
帰ってくるあたりはやはり腕の成せる業でしょうか。
どうもエンジニアの作戦に不満が多い様子のこのごろですが、今回はエンジニアの指示に
したがって正解でした。これを機にもう1度信頼関係を築けるといいのですが。
ちなみにプライム引っ張り作戦はやはり結構ギリギリだったようで、バルテッリ ボッタスは
最終ラップにリアをロックさせてタイヤが完全にだめになってしまいました。
さあこれでいきなりハミルトンがポイントリーダーで日本GPに向かいます。
シンガポールではフォーメーションラップに壊れて1周もしませんでしたが、
小林 可夢偉は走るんでしょうか?