F1第6戦の舞台は伝統のモナコ・モンテカルロ市街地。
レースは荒れた展開となる中、ニコ ロズベルグが2年連続のポールトゥウイン、
2位にチームメイトのルイス ハミルトンで、ロズベルグはポイントリーダーの座を1戦で奪還。
そして完走率が低い中、マルシアのジュール ビアンキが9位に入り、
前身のヴァージンレーシングが2010年に新規参戦を果たして以来初の
ポイントを獲得。ここらあたりを振り返っておきます。
 
◎とうとう分裂?
 両雄並び立たずとはよく言ったものですが、メルセデスの2人の友人関係も
もはや手に負えなくなりつつあるようです。
 予選ではロズベルグがベストタイムを保持した状態で最終ラップのミラボーで
コースオフ。これでイエローフラッグが出され、後ろから最終アタックに入っていた
(しかもいいペースだった)ハミルトンはアタックを諦めざるを得なくなりました。
バーレーン以来のポールで主導権を握ったロズベルグ。方や明らかに不機嫌なハミルトン。
ロズベルグはわざと飛び出したのではないか、と調査が入る事態となりましたが
不問となりました。個人的には単に攻めすぎたように見えましたが真相やいかに。
川井さんも同意見のようです。
 決勝では、スタートで順位が変わるはずも無く2人は並んで走行。
2度目のセーフティーカー導入で2人は続けてピットインしタイヤを交換しますが、
ここでもまたハミルトンはイライラ全開。
 セーフティーカーが入る前、クラッシュが起きた直後になぜ入れなかったのか、
他に勝つための手段はあるのか、無線でエンジニアを問い詰めますが、
チームとして後ろを走る人が有利になる作戦を遂行することはできないので
これは仕方の無い話。また川井さんの推測では1周早くても結果は変わらなかったようです。
 中盤ロズベルグが燃料の残量に不安を抱えて燃費走行し、ここに活路を見出そうとするも、
ハミルトンもずっと追走してタイヤの方が不安で硬直状態。そして終盤、とうとうハミルトンが
遅れだしますが・・・
 
◎目が、目がぁ~!
 なんとハミルトンの目に物が入るという珍しいアクシデントが発生。
追うどころか後ろからレッドブルのダニエル リカルドに終われる羽目に。
それでも「リカルドじゃない。ニコとの差を教えてくれ!」とあくまで前だけを見るハミルトン。
壁にぶつかってもおかしくない状況でその闘争心はすさまじいものがあります。
結局なんとか逃げ切りました。
 ところで私、GT5のPP550SSタッグレースでニュルを7周した際、ハミルトンと同じことが
起きました。1周目のアウディゲートあたりで左目にゴミが入り、予定の周回まで
ピットを我慢して、なんとかタイヤ交換中にゴミを取ろうとするも失敗。
2回のピットでいずれも除去できず。ていうかクルー出てこないから交換はええ(^ ^;)
結局6周目のビルシュタインゲートまで丸5周ほとんど片目で、非常につらい時間でした。
タッグでなければリタイアしていたと思います。余談でした。
 
◎悲願マルシア、悲嘆ケータハム
 そしてこのレースはマルシアがポイントを獲得したレースとして当分の間記憶されることでしょう。
ケータハムに差をつけたどころか、ザウバーより先にポイントを得てしまったのです。
確かにスペインから車が良くなりましたが、時間を巻き戻していくとなんとも複雑な
裏側が見えてきます。
 
◎ちょ、ちゃんと見ろww
 スタートからしばらくすると、ザウバーのエステバン グティエレスとマルシアの
2人に「スタートでグリッドを外れていた」という理由で5秒ペナルティーが掲示されます。
枠をうっかりはみ出したんだろうなあぐらいに考えていたら、川井さんの事後取材で
ザウバーはこう答えたそうです。
「あれはグティエレスの間違い。前に詰めちゃっただけ」
・・・・・・・・・・・・・・・・・はあ!?
 17番手スタートのグティエレス、その前のパストール マルドナードがトラブルで
フォーメーションラップに出れず、前のグリッドが空白になっている、はずでした。
ところがそれを詰めて、勝手に「15位」の位置に付いたというのです。
そして後ろにいたマルシアの2台も一緒に続いてそれぞれ勝手に違うところから
スタートした、というのが真相だというのです。
 抜きにくいモナコで、みんな必死になって予選がんばってるのに、勝手に詰めて
5秒ペナルティって軽くないですか???これが騒動の始まりでした。
 
◎あんまりルールを分かってなかった
 この5秒ペナ、今年新設された、比較的軽微な違反への罰則で、
「ピットインの際に5秒余分に止まって消化するが、ピットインしないなら
レース後に5秒加算でもOK」というもの。
他のペナが「掲示後3周以内に消化する必要がある=強制ピットロード送り」
なのと違って、嫌ならレース後に先送りしても良いという仕様なのです。
 で、ビアンキはセーフティーカー中にタイヤを交換し、ついでにペナも消化しました。
しかし、彼らは大事なことを忘れていました。セーフティーカー中には
ペナルティーは消化できないルールが大前提として存在するのです。
実際、グティエレスは同じタイミングのピットで、ペナは無視してコースに戻ったようです。
 ビアンキに対しては「さっきのは消化したことにならないからもう1回5秒ペナ」の裁定。
あまり意味の分かっていない彼らは「無視して走ってるグティエレスはセーフで
何で俺らまたクレーム来てんの?」と思ったそうで、終盤やっと意味を理解し、
「あ、レース後まで無視すればいいんだ」とそのまま走り続けたようです。
 
◎思わぬ遠因
 ペナルティでよくわからなくなったビアンキですが、セーフティーカー後は
小林 可夢偉、キミ ライコネンの後ろを走行。必死に防御する小林がシケインを
ショートカットし、これはまずいとライコネンに道を譲って空けたインに便乗して飛び込み、
計3回ごつごつと小林のサイド部分にぶつけながら前に出ます。
小林の車はボロボロになり大層お怒りだったようです(^ ^;)
 ところがこのバトル、そもそも起こりえないものだったと言えます。
というのもライコネンはセーフティーカー前に3位。こんな下位にいるはずありませんでした。
ところがライコネン、セーフティーカー中にビアンキのチームメイト、マックス チルトンに
接触され、余分なタイヤ交換を強いられてここに放り込まれたのです。
 この後なんとか挽回しにかかったライコネンは終盤、ケビン マグヌッセンと接触して脱落。
この2台が落ちていなければビアンキはポイントに手が届いていません。
 さらに言えば、マルシアが正しくルールを理解して、5秒止まらずにピットアウトしていたら
小林とライコネンの間にビアンキが入ってリスタートしていた可能性があり、
そうなると小林が道を開ける事態がそもそもなく、簡単には抜くことができなかったはずです。
 ここまでデビューから全戦完走し続けて、今季チーム最高の13位を獲得して
コンストラクターズ10に貢献してきたチルトンの思わぬ事故が、チームの
初ポイントをアシストしたような形になってしまいました。
 車が進化したのは事実、ビアンキも速いドライバーです。(私の推しドライバー)
しかし非常に色々な要素が絡まった末の、ある意味ドラマチックな出来事だったと思います。
 
 さて次戦はカナダ。ハミルトンはなぜかカナダと愛称がよく逆襲を狙っているでしょう。
かつてのセナプロ、あるいは2007年、マクラーレン時代のハミルトンとフェルナンド アロンソの
ように深刻な対立となってしまうのか。
 レースの間に飛び交うパドック外の情報からも目が離せなくなってきました。