【シナリオを書いているあなたへのお手紙 for you】 赤ひげ先生
先日、昭和四十八年にNHKで放送された連続ドラマ「赤ひげ 第十九回 ひとり」を観ました。黒澤明監督の映画は有名ですが、倉本聡氏脚本の連続ドラマの一話を鑑賞し、大変ドラマの勉強になりました。
倉本氏曰く、「映画の赤ひげはヒーローだが、ドラマにするとき、赤ひげをどうするかを考えた。ヒーローではなく、現代、誰しもが共感するジレンマを抱えた人物像にした」と。
先日、おうちあわせでジェームス三木先生にお会いしました。
そのとき先生曰く、「一番、主人公にしたくないのは二宮尊徳。欠点のない立派な人」と。
この先生方の仰る主人公たる人物造形のポイントは、とてもたいせつなことと思いました。
ドラマの赤ひげ先生は修行中の若い修行医を叱り、「人間である前に医者であれ。
医者は神だ」と言い渡します。若い修行医が連夜の診察に疲れていて、夜中の診察を断ったがために病床にあった少年が亡くなってしまったからです。
叱咤激励の極論をぶつける赤ひげ先生が、ラストに修行医に照れくさそうにやさしさを見せて…、亡くなられた小林桂樹氏の名シーンでした。
ああ言ったではないか、こう言ったではないか、理屈をぶつけたいはざまに揺れて、それでも到達する揺らぐことのない愛。
アンビバレントの中での真実。
そこに狙いを定めた主人公の核が輝いて…。
山本周五郎氏が描きぬいた人情もまた、主人公のラストのやさしさに輝いていました。
ジレンマとは、相反する二つのことの板ばさみにあって、どちらとも決めかねる状態をいいます。
あなたにとってジレンマはありますか?
主人公にジレンマを与えていますか?
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