【シナリオを書いているあなたへのお手紙 for you】備前小町の裸婦像 | シナリオ・センター大阪校 鳩子の日記

【シナリオを書いているあなたへのお手紙 for you】備前小町の裸婦像

 この季節は煌めく新緑から活力をいただきます。たわわに舞う藤棚の里をおとずれました。藤まつりたけなわ、多くのお客さんが花びらを傷つけまいと傘もささず小雨にうたれ、しだれて揺れる藤をめでていました。

 備前焼きの小さなお店をみつけました。狭い国道に佇むそのお店は、店頭に大きな笑い入道のオブジェが三体飾られていました。いわゆる壺や花器の作品よりも、ユーモラスで芸術的なオブジェが目立ち、個性派らしい印象をうけます。上がり框のお座敷の手こね場と、引き戸の小さなお店が並んでいます。

「ごめんください、ちょっとみせてください」
 と無人のような奥に声をかけると、九十くらいの綺麗なお婆ちゃんがでてこられました。備前は竹下夢二の古里ですが、そのお婆ちゃん、夢二の美人画にでてくる女の人が歳を重ねられたように、瓜実顔の綺麗な方でした。友だちへのお土産をとさがしながら、ちらほら作品をみていると、太陽の塔のようなオブジェ等、使い目的のないアート作品が多いのが特徴で、それもいかにも芸術家然としたものでなく、なんともユーモラスなのが魅力的でした。備前焼きの人間国宝作家展へいったことがあり、そのときうけた印象からはそのお店の作品は異なり、封建的な日本芸術界にもしかすると反抗されたのか、作者の勇気にエールを送りたい気持ちになりました。

 壁に備前で焼かれた女性の裸婦像がかけられていました。作家はおそらくお亡くなりになったお爺ちゃんで、裸婦は目の前で包装してくださってる備前小町にちがいない。どんな恋をされたのかしら。ふたりこの焼き物のように笑顔を絶やさず、きっとすごく愛しあっていたのだろうな… と空想しながら、「またきてね」と微笑んだくださったお婆ちゃんから、ステキな活力をいただきました。

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