【シナリオを書いているあなたへのお手紙 for you】五月のやさしい風
ベランダでは今か今かと百合のつぼみがふくらんでいます。今年も満開の日々を迎えられそうです。そしてここ五年ほど育ててきた観葉植物が、今年はじめて花を咲かせました。名前は忘れてしまった植物なのですが、レモンイエロー、オレンジとインディゴブルー、濃いパープルのまじった鮮やかな色彩で、ひとつの花の長さが二十センチをこえる大きな、南洋の花を咲かせています。少し前から予告するようにぷっくりふくらんだ大きなつぼみに、オレンジの花汁をしたたらせていました。いつ突然、花を咲かせるかわからない人生! お水しかあげていないのに、咲いてくれてありがとう、という気持ちでいっぱいです。
先日、部屋のエアコンをつけかえました。工事にこられた人が、外機工事のためにベランダに出られ、たおしてはなんだからと、小さなプランターをそっと除けられました。すると、除けた処からヘンテコなオブジェがにょっきり! 実は百歳ちかくまで長研にこられていたOさんが形見わけのようにくださったオブジェです。詳細はお伝えしにくい形をしているのですが、要するにちょっとエッチで、お茶目な形をしています。工事の人はぎょっと驚かれたのを、わたしに気づかれない風にされていたのですが、それから少し日がたちエアコンの調子が悪くなり、もう一度おなじ人が工事にきました。そのときは外機は関わりなかったのですが、工事の人はもう一度オブジェを見たかったようで、ベランダに二度も出られました。可愛らしい形だけれども、信じがたく、もう一度こっそり確認したかったようです。
Oさんは本当にお洒落な方でした。お洒落というのは、なにを着ているのか、なにを持っているのかということではなくて、心に持つものだということを教えてくださいました。いやな気持ちになるお話を伺ったことはありませんでした。わたしはまだまだ日々、反省します。Оさん、いつまでも大阪校を見守っていてくださいね!<鳩子>