【シナリオを書いているあなたへのお手紙 for you】淡い蛍
水辺のくさむらに、舞うことをまちながら佇んでいる、淡い蛍の灯りをたくさんみつけました。六月も中旬をすぎると幻想的な灯りをはなち舞う蛍。今はその力をたくわえているかのように、しっかりふかく煌き、群生していました。この蛍が生命力をみなぎらせて夜空を舞うころには、夏の準備もととのっていることでしょう。
蛍の叙情はおおくの文学を生んでいます。和歌、俳句をはじめ、小説や映画に蛍はモチーフとして使われてきました。儚くも、失せるに失せない想いや、ときに命のあらわれとして、映像的にも効果的なモチーフです。とくに日本人にとっては、蛍の灯りはえもいわれぬ雰囲気をかもしだします。それは、情念でしょうか。
情念とは… デカルトによれば、肉体内における動物精気により惹きおこされる受動の意識で、生きている人間内に源を発する粗暴な驚異・愛・憎・欲望・悦び・悲しみであり、これらは理性により規制されなければならぬと説かれています。そこで理性で抑制できない人のさがが、芸術では永遠のテーマとして描きつづけられ…。
というわけで、蒸し暑い六月の早朝から頬杖をついて情念について考えていると、寝ちがいのように首と肩の調子がわるくなりました。情念に想いをはせるのにも年齢との戦いがあるのかな、と、ちょっとショック! 昭和の時代のゼミでは、のんびりと、情念と情熱はどうちがうのかなどと、みんなで語りあっていたことを思いだしました。
舞う蛍、風鈴の音、すだれ、葦、打ち水、夏の風物詩も今夏はどうなることやらという、政局につけ余震につけ、気持ちをおちつかなくさせる日々がつづきます。
でも今年は、風物詩の出番といった年になるかもしれません。節電もお年寄りやお体の芳しくない方のためには、やさしくありたいものです。どうぞご家族ともども、今夏を乗りこえてくださいね!<鳩子>
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