飛田の百番
先日、小説クラスの方たちと飛田の料亭、百番で宴会をしました。
そういえばずいぶんむかしに長研クラスでも百番でチョー昭和的宴会をしたことがありました。いやはや光陰矢のごとし…。うン十年前のことであったやら…。
飛田百番は飛田遊郭のなかにあります。飛田遊郭は難波新地乙部遊郭が1910年に全焼したのにつづいて1916年に生まれたそうです。1912年に完成した旧通天閣を中心とした新世界が第一次大戦後の好景気で大いに賑わい、そこから近い飛田遊郭も昭和初期には200軒を越える妓楼が軒を連ねたそうですが、戦災でほとんどの店が消失。その後ふたたび赤線としてよみがえり、1958年の売春防止法以降は料亭に転じ、現在も伝統的な雰囲気をかもしだす町並みが保たれている地区です。百番は大正初期1918年頃に遊郭として生まれ、戦後は内部が大改築され、現在は料亭として営業されています。
むかしロックや前衛アートに意気揚々な外国人の貧乏アーティストたちと、飛田裏手に軒並ぶ狭い狭い呑み屋長屋で呑んでいたことがありました。彼らは飛田に大いに創意を触発され、なかには亡くなった友人もいるのですが、才能溢れるステキな作品を残しました。今はそのエリアも綺麗なマンションが並ぶ再開発地区へとすっかり姿を変えていて、とても淋しく感じました。
またむかし、パリの遊郭街をひとりで歩いたことがあります。ハラリと纏ったふかふかの黒い毛皮のコートの下に赤いシュミーズだけを着ている、それこそリズ・テーラーばりのグラマーな娼婦が煙草を吹かしながら街角に佇んでいました。
それから一年も経たない頃に、そのエリアもビッグなファッションタウンへと様変わりしました。消えてゆくもの。消えないもの。形は消えようとも消えはしないものとは。そんなことを想いつつ…。
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