弱みを見せたい相手と強みを見せたい相手
好きなシーンです。「その夜、彼女はブランデーをグラスで大きくあおる。愛を捨て、金もうけに生きようと決心した夜だ。その時、粗野だがたくましく生きるレット・バトラーが訪ねてくる。憎みながらも惹かれているスカーレットは、酒のにおいを消すためにあわててオーデコロンでうがいをするのだ。(略)そして案の定、オーデコロンは何の役にもたたず、酔っていることをレットに見抜かれ、彼のプロポーズを受けてしまう」(日経新聞より)
「風とともに去りぬ」のこのシーンは忘れられません。オーデコロンでうがいをするスカーレットの心理が、分かるからです。もしアシュレーが訪ねてきたら、彼女はオーデコロンでうがいをせず、酔ってしまっている弱い自分をみつめて欲しいと思ったことでしょう。あなたのせいで、私はこんなに弱っているのよ…と見せつけて同情を買い、抱きしめてもらえたなら…と起こり得ない夢想を抱き。ちょっと色気のない例えですが、関西人は初対面でもボケとツッコミの立場を素早く察知します。この人の相手をするなら、ボケルしかないなぁ…なんて。それは人間関係を円滑に進めたい本能のようなもの。
でもこのシーンの女心が果たして、強い男に強みを見せて弱い男に弱みを見せることへの本能的な察知と云うことに、単純につながるのかどうかが、男女間の奥深い処です。おそらくレットなら見抜くことを、彼女は無意識の中で知っていたのでしょう。町の娼婦とも関わりのあるレット。スカーレットはお嬢様として崇めてもらうしか、自分のプライドが守れなかったのでしょう。生きる術もなく、何もかも失ったボロボロの彼女だから。そんな彼女の弱みと戦う姿を愛しく求めるレット。金もうけに生きようと決めたのに、愛されることを捨てられない物語の中の人。愛されたいのに金もうけにしか時間を費やせない現代人。
男の権威のドラマもいいけれど、女心が勇敢にざわめいているドラマが観たい!
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