リアリティのある女 | シナリオ・センター大阪校 鳩子の日記

リアリティのある女

 好きになる必然性が練られていないラブストーリーを読んだ時、「きっとこの女の人は美人なんだろうなぁ」と思ってしまいます。でも、それでは説得力として弱いですね。


 先日、シナリオとは無関係の女友達に、「リアリティのある女がいい」などと口走ると、彼女はあらためて、「リアリティのある女っていい言葉ねぇ」と云いました。そう云われると、私もあらためていい言葉だなぁと思いました。で、リアリティのある女って、どんな女なんでしょう?
 

 心の中が綺麗なだけじゃない女。人を傷つけたこともあって、ストレスも一杯かかえていて、格好良く見られたい見栄っ張りで、人に嘘はついても自分に嘘はつけないエゴイストで、人に嫌われると気になるくせにシニカルにポーズするのが癖で、そんなこんなでストレスがたまると、発散にはショッピング、美味しいものも大好きで、ワインなんて目がなくて…どうやら誰かさんのことを並べたみたい。でも、よく考えると、リアリティのある女とは欲望のある女? 一理はありそう。
 

 欲望を女が持つことは、どうやら日本では昔から良くないと考えられていたようです。動物の欲望に雄も雌もありません。人間の女だけが欲望を抱いてはヒロインらしくないなんて、変です。でも、むつかしいのは、欲望もあって魅力もある女。男でも女でも欲望が服も着ないで往来を歩いていたら、それこそ大変。魅力のない世界観です。
 

 谷崎潤一郎の『陰影礼賛』に「西洋には『聖なる淫婦』『みだらな貞婦』というタイプがあるけれど、日本にはこれがありえない」とありますが、女が欲望を抱くことをふしだらと見る時代は終わりました。それでも古い考えはいまだ蔓延っています。可愛くてヒューマンな「生きている女」の欲望が観たいです!