名前のない関係
どんなことにトキメキを抱いて映画を観ますか?
私は愛に出逢えるかも知れないと思うと胸がふくらみます。「貴方のシナリオからは愛が感じられない」と、もし誰かに云われたら、自信喪失し、絶望の淵に立たされるでしょう。自分のことを、愛を描くのに背の届いていない、つまらない人間なのだと自己嫌悪して…。でも、絶望はそのまま希望です。その人にしか描けない愛が必ずあると思います。学び推敲しましょう。愛を描くことは容易いことではなくて、苦しいことです。
愛の種類についてノージャンルを描く人がいます。サスペンスやラブストーリーのジャンルではなく、関係のジャンルのことです。名前のない関係。例えば、恋人でも友達でも夫婦でもなくて、かけがえのない異性との関係。ところが通常、主人公と副主人公の関係が、恋愛、夫婦愛、親子の情、友情等、ドラマの主題になることが多く、説明するのに時を要するドラマは、主題の伝わりにくいドラマということになり、理解者も減りがちです。と云って新しい関係に挑む創作意欲は大事なエネルギーです。
そこで長篇作品への提案ですが、まず主となる関係は分かりやすい関係に決めてみて、サブエピソードにひねった関係を絡めてみるのはどうでしょう? サブエピソードをついステレオタイプにしたが故に、手抜きのシナリオと思われることもあります。反対に、サブエピソードにオリジナリティある視線を組み入れてみては…?
人が人ゆえに人と糾える縄のごとく感情を絡ませてゆくのがドラマ。夏の夜、遠く生命を伝えてくれる虫の音に包まれ、さまざまな愛情関係の構図に想いを馳せてみるのはいかが? 「貴方のシナリオからは愛が伝わりました」と、きっと云わせてみせる…そう信じて。