惚れる | シナリオ・センター大阪校 鳩子の日記

惚れる

…辞書でひくと「心を奪われるまでに相手を慕う」とあります。


かつて大阪校の5枚シナリオコンクールで「惚れた瞬間」という課題を出しました。「今どきの若い人に惚れるという意味が分かるのだろうか?」とご年配の先生からの心配のお声も。確かに死語の範疇。
心を奪われるとはどんなこと?


平常心を失うこと。理性で判断できなくなること。とにかく理屈じゃないこと。寝ても覚めても無我夢中。
恋はもちろん仕事でもいい。勉強でもいい。心を奪われるほど夢中になれる人生でありたい。奪い奪われることに臆病な人はケチな人。お金にケチより心にケチは寂しい。惜しみなく奪い奪われる…創作者ならそうありたい。


そこで思うのは大人のルール。例えば恋にしぼって考えて、闇雲に奪い奪われてヘトヘトに疲れ、根こそぎ果てたのでは洒落にならず醜悪。危なっかしくて、「迷惑な人」。大人のルールを守り、なおかつ上手く惚れられるには、相手への思いやりが必要。しかし、そこに到達できるのには、いっぱい失敗を繰り返すことが必要なのでは? 失敗を恐れていては、いつまでたっても大人のルールが守れる人にはなれなくて、グラスに浪漫の滴る芳醇な赤ワインに似た、真の「惚れる」醍醐味も味わえないような。

これ、シナリオに置き換えます。失敗を恐れていては、いつまでたっても大人になれません。観客の心を奪えるシナリオが描けるようになるには、まず失敗を恐れず無我夢中になれるかどうかです。


シナリオに惚れましょう。

そしてお客さんを惚れさせましょう。