電機大手の中で近年、経営不振にあえいでいたソニーとシャープの業績が回復傾向にある。
ソニーは28日、本業のもうけを示す連結営業黒字が2018年3月期に前期比1.7倍になるとの見通しを発表したほか、シャープは17年3月期に3年ぶりに連結営業黒字を達成した。
不振事業の整理やコスト削減を進めた成果が表れた形で、V字回復の傾向が鮮明になっている。
ソニーが28日発表した18年3月期の連結営業損益の見通しは、前期比1.7倍の5000億円の黒字で、達成すれば1998年3月期の営業利益(5257億円)以来の高水準になる。
東京都内で記者会見した吉田憲一郎副社長兼最高財務責任者(CFO)は、「5000億円は達成できる目標だ」と自信を見せた上で、「いたずらに規模を追わず、新しいことにチャレンジする」と強調した。
この日、発表した17年3月期連結決算は、売上高が前期比6.2%減の7兆6032億円、営業利益が1.9%減の2887億円、最終利益が50.4%減の732億円だった。
インターネットの動画配信サービスの普及によって映画のDVD市場が縮小し、事業価値を低く見直す「減損処理」を行ったことや、昨年4月に起きた熊本地震で半導体工場が3カ月間停止したことが響いたためだ。
だが、17年1~3月期には、スマートフォンのカメラ用センサーの販売数量が大幅に増加。
発売から3年半が経過した家庭用ゲーム機「プレイステーション(PS)4」の販売も好調で、この二つの分野が引き続き、業績をけん引する見通しだ。
吉田副社長がCFOに就任した3年間で、同社は映画事業やモバイル事業などで計5000億円の減損処理を行ってきた。
吉田副社長は「現時点でリスクとして認識している物はなく、(映画事業の)他に減損はない」と、不振事業の清算は終わったとの考えを示した。
不振事業の合理化を進めてきたソニーは攻めの姿勢に転じ、勢いに乗せる考えだ。
◇キーワード・ソニー
1946年に井深大氏と盛田昭夫氏が創業。
かつて携帯音楽プレーヤー「ウォークマン」などヒット商品を次々と出したが、2000年代以降はヒット商品に恵まれず、業績が悪化。
03年4月期の業績悪化予想では、「ソニーショック」と呼ばれる株価急落に見舞われた。
その後、事業整理や人員削減を行い、事業立て直しの目玉として、米テレビ4大ネットワークのCBS放送部門社長などを務めたハワード・ストリンガー氏を最高経営責任者(CEO)に招き、08年3月期には過去最高の最終(当期)利益を記録した。
だが、08年秋のリーマン・ショックで再び業績が悪化。
ライバルに比べ、新事業の金融部門が本業の落ち込みを補っていたことで構造改革が遅れたとされる。