ASKAママのTXらいふ -2ページ目

ASKAママのTXらいふ

引っ越し履歴: 東京⇨LA⇨Houston
子供3人(22歳男、20歳女、18歳男)のシングルマザー(主人とは別居・離婚手続き中)
普段の自分の仕事(州公務員・リハブテック・ケアギバー)、子供の現地校、こちらで遭遇した個性的な人たちについてなどいろいろ書いています


今日はリハブのお話

私は3つのお仕事をしています
◉州公務員(テキサス州の公務員をしています。心身に困難のある人達が、実社会に戻ることができるよう支援するのが目的の施設に勤務。月〜金のフルタイム。でもフレックス制なので出勤・退勤時間はバラバラ)
◉リハブテック(長期滞在型の病院でリハブテックをしています。理学療法士に指示されたエクササイズを患者さんに施術したり、動ける人にはトレーナーの様にカウントしながら自力で運動してもらいます。土日のみ)
◉ケアギバー(個人宅で全身麻痺の女性のケアギバーをしています。夜勤のみ週2日)

陣屋の店内はカッコいいけど店員はまぁまぁ



先週の金曜日のこと
仕事前に患者さんの体調を電子カルテでチェックしていたら、突然香港チャイニーズのボスに呼ばれた。周りのスタッフに聞かれたくなさそうで何事かと思ったら、やっぱりトラブルがあったんだそう。


「リハビリが終わってあと退院を待つだけの患者さんが怒っちゃってね。『いきなりもうセラピーは終わったって言われて、昨日は何もやってもらえなかったんだけど…一体どうなってるんだ?』ってね」

「リハビリが完了したなんて喜ぶべきなのに?」

「そうなんだよね、何か行き違いがあったんだと思うんだけど」


ボスも細かいことは知らないようで、要は今日(金曜)から週末の3日間私にこの患者さんを担当して欲しいとのこと。


クレームのある男性患者には女性スタッフ。逆に女性患者には男性スタッフをあてがう方がいいのはよく分かってる。ただ私はアクセントが強いから、時々受け入れてもらえない事があるからな…今回はもう相手が怒っちゃってるし。ベストは尽くすけどそんな場合はほぼ不可抗力でしょ。流石にちょっとナーバスになる。


スタスタ歩くボスについて行くと、1階最奥のエリア、問題の131号室に着いた。

部屋にいたのはガタイのいい白人のおじいちゃん、Mr. H。背も高いし若い頃はかなり体鍛えてただろうなって感じ。話を聞いている限りいい意味で抜け目なさそうというか、頭が切れるタイプというか…ただ単にクレーム付けてくるようなタイプじゃないのは分かった。どうやらスタッフとMr. Hとの間で言葉の解釈に行き違いがあったようで。


「今の状況はリハビリから卒業したって事なんです。今後も機能保持のためのセラピーが必要ということでしたら、我々リハブが引き続きケアします。もう何もしないって意味じゃないんですよ。取り敢えず今日から3日間、このSueが卒業後のプログラムを継続します。その後また月曜日に今後の方針について話し合いを持ちたいと思いますがどうでしょう」

彼は満足しにこやかに握手を交わすとボスは退室。

「じゃあSue、All Yours!」

きゃ〜〜〜ぁ、責任重大…滝汗


とにかくまず明快に今日の予定を伝える。

「では、今日は2階のリハブのGymに歩いて行きましょう。そしてバイクで30分。状態を見ながら有酸素運動をして行きます。他にもウェイトとかありますし。そして館内を歩き、入り口で新しいマスクを貰って部屋に戻ります。」

「マスク?」

「だって貴方使い捨てのマスクをまた使ってらっしゃるでしょ?」

「コレ俺のコレクションだから」

壁には使用済みのマスクが10枚弱かかっている。

「このマスクは使い捨てですよ。後で何枚でも新しいのを貰いましょう。このコレクションを捨てても惜しくないって思ってもらわないと…ね」

悪戯っ子のように肩をすくめるMr. H。


ヨシ、つかみはOK。



つづく


今日はリハブのお話

私は3つのお仕事をしています
◉州公務員(テキサス州の公務員をしています。心身に困難のある人達が、実社会に戻ることができるよう支援するのが目的の施設に勤務。月〜金のフルタイム。でもフレックス制なので出勤・退勤時間はバラバラ)
◉リハブテック(長期滞在型の病院でリハブテックをしています。理学療法士に指示されたエクササイズを患者さんに施術したり、動ける人にはトレーナーの様にカウントしながら自力で運動してもらいます。土日のみ)
◉ケアギバー(個人宅で全身麻痺の女性のケアギバーをしています。夜勤のみ週2日)

Phoに行ったけど暑いのでVermicelli Bowlに
上からかけるChili Fish Sauceが美味しい〜



必死の形相の患者さん。

大の大人が必死に訴えてる…あまりにも切羽詰まった目つきの彼にボスも観念した。


「じゃあ1回だけ」


ゲイトベルトを体に巻き、まずベッド脇に彼を座らせる。フラフラではないけど、顔をずっと上にあげて座っていることができない状態。明らかに無理がある。


「顔あげて座って!ホラ、出来る?」


寝たきりだった人がいきなり体を起こすと、頭が痛くなったり眩暈がする事がある。血圧が跳ね上がり血糖値の上下も激しい。ソレに加え術後の痛み等あると、座っているだけで辛いんでどうしても顔は下を向く。でもまだ必死に訴える。


「立ちたい」


サポートは私だけ。患者は肥満。ボスは痩せ型なんで、患者の方が2-3倍の重さがありそう。何かあったらボスは自分のライセンスを賭けてる訳だ。


「Please…」


ボスが彼の真正面に立つ。


「手を僕の背中に回して!捕まって!」

「腕を伸ばして捕まるぐらいちゃんと出来ないと立てないよ!ガンバレ!」


ボスの胸に顔を埋めしがみつく患者さん。数秒自身の体を支えることもできず、結局ベッドに崩れるように戻る。


「ホラ、まだ全然支えられないよ」

「まだ立ちたい…」

「でも今も体支えられなかったでしょう?」

「立たせて…」

「…じゃああと1回だけ。僕もギリギリだから」


2回目、やっぱり立てない。そりゃ当然だ。

でも患者は声にならない声で言う。


「また立ちたい…」


大の大人が外見とか何も考えず必死に訴えている。アメリカ人って人にバカにされないよういつも気にしてる人達だから、自分がどう見られているかってすごく気にするんだけど…


ボスも困り果てた。これ以上は流石に無理。


「今日初めて2回も立てたでしょ?頑張ったね。普通は座る練習からやって足腰を強くするのよ。今日はもう終わり。少しずつ増やしていこう。明日は3回立てるかもしれない。少しずつよ。」


女の私に宥められて、やっとボスにしがみついていた手を離した。


サッサと退院したい理由の一番は金銭的な問題だと思うけど、好きなものが食べれないとかプライベートがないって言うのも大きな理由だろうと思う。他にも早く仕事に復帰したいとか、子供がいたりペットがいたりして一日も早く!って人もいるし。


何であれ早く退院できるなら私も嬉しい。こんなに必死な患者さんには毎日少しでも長くセラピーをやりたいし、是非サッサと退院して貰いたいな…。今週末彼の担当になったらタップリ30分は見てあげよう!


今日はリハブのお話

私は3つのお仕事をしています
◉州公務員(テキサス州の公務員をしています。心身に困難のある人達が、実社会に戻ることができるよう支援するのが目的の施設に勤務。月〜金のフルタイム。でもフレックス制なので出勤・退勤時間はバラバラ)
◉リハブテック(長期滞在型の病院でリハブテックをしています。理学療法士に指示されたエクササイズを患者さんに施術したり、動ける人にはトレーナーの様にカウントしながら自力で運動してもらいます。土日のみ)
◉ケアギバー(個人宅で全身麻痺の女性のケアギバーをしています。夜勤のみ週2日)

啓人の豚骨黒?だっけ?



先週の金・土と2日連続でリハブトップのボスと2人で一緒に仕事をした。彼は史上最長の面接をした香港チャイニーズのボス。

私は普段週末のみの出勤。一方彼は本当に人手が足りない時しか週末は出ないんで、ほぼ会わない。でもよくTextでメッセージは受けるし、物凄い気遣いの人なのは分かってる。


先週同じリハブテックのリーダー的スタッフにイロイロ教わった。やっぱり州施設の方針とは違うところがイロイロあったけど、ソレが施設の方針なのかその人個人のやり方なのかイチイチ突っ込んで聞けず…やはりこういうのはトップのトップのやり方を直接知りたい。他の人はいつでもボスと話せるけど、私は何かあるたびいつもTextで邪魔するのが嫌で…


独立記念日前後で沢山スタッフが休んでいた、といういいタイミングだったのもあって実現した。


結論から言って理想のボス。


患者には私のことをパートナーだと紹介し、どう言うエクササイズをする予定か説明すると後はお任せ。体の大きな患者さんをベッドから車椅子へ移動させるなど、ヘルプのいる所だけいてくれる。術後のリハビリで長期滞在の患者さんは、1日少なくとも3時間のプログラムがある。OT(作業療法士)とPT(理学療法士)合わせて3時間以上。


家に帰るための機能を回復するのが目的だから、患者さんによってプログラムが全然違う。退院後車は運転するのか?退院しても車椅子なのか?ウォーカーを使うのか?シャワーは誰か助けてくれるのか?ウォークインのシャワーなのか?バスタブを跨がないといけないのか?2階建てで階段の昇降があるのか?


こう言う患者さんたちは一日も早く家に帰りたいからとても意欲的。まだ酸素吸入受けてたり、人工呼吸器が付いているのにリハビリを始める。もちろん医師の許可が出てからだけど。


ベッドを出た初日から20分もバイクで有酸素運動しちゃう人。ゆっくり歩いてって言うのにどうしても病気前の速度で歩いちゃう人。血中の酸素濃度やら血圧やらモニターしながら休み休み運動してもらうんだけど、それにしてもすごいやる気。スピードダウンさせる方が大変。


こう言った患者さんのうち2-3割ぐらいは極度の肥満の患者さん。そうするとリハビリ前にまずもっと体重を落としてもらわないといけないんだけど…大体が入院前に既に肥満だった訳だから、落とすにも時間がいる。大抵は入院してしばらくはカロリー制限され経口摂取もしてないから、だいぶ体重が落ちてるはずなんだけど、ソレでもすごい体重…


患者さんの一人にとにかく早く退院したがっている人がいる。香港チャイニーズのボスと彼を担当した時、人工呼吸器をつけ朦朧とした彼に何度も訴えられた。


「立たせて…立ちたい…」


彼は肥満だからまず体重を落とさないといけない。そしてまずベッド上で座ったり自分一人で体重をずらしたりする練習。次にベッド脇に足をつけて一人で座れるように練習をしなければいけない。まだ何もやってない。そして抗生剤と痛み止めがガンガン投与されててまだフラフラ。寝たきりだったから足も弱って自分の体重を支えられない。でも出ない声を絞り出して訴える。


「立たせて…」



つづく


今日はケアギバーのお話

私は3つのお仕事をしています
◉州公務員(テキサス州の公務員をしています。心身に困難のある人達が、実社会に戻ることができるよう支援するのが目的の施設に勤務。月〜金のフルタイム。でもフレックス制なので出勤・退勤時間はバラバラ)
◉リハブテック(長期滞在型の病院でリハブテックをしています。理学療法士に指示されたエクササイズを患者さんに施術したり、動ける人にはトレーナーの様にカウントしながら自力で運動してもらいます。土日のみ)
◉ケアギバー(個人宅で全身麻痺の女性のケアギバーをしています。夜勤のみ週2日)

久々のラーメン屋(コレは陣屋)
アメリカだとスープが少々ぬるいのが嫌だ😞


私は3年前から同じ女性のケアギバーをしています。アンジェリカ、30代白人女性、生まれた時から(恐らく)ダウン症、後天的に全身麻痺と全盲へ。


アンジェリカの母親がAnne。

Anneの過去記事はこちら


Anneは旦那さんとは別居。彼女作って出て行きました。その彼女と言うのは以前私のようにアンジェリカのケアギバーをしていた人だそうで、モチロンAnneもよく知ってる人。で、旦那さんは家を出て数ヶ月で体調を崩し死亡。アンジェリカの弟になる一人息子は結婚して家を出ていたので、2階の4部屋を下宿人に貸しています(1部屋はAnneが使用) 。光熱費や朝食込みで大体$500/月。


この下宿人たちというのがクセが強く毎回ドラマのオンパレード。警察沙汰になったり、裁判沙汰になったり、毎晩怒鳴り合ってた人たちもいる。それでもAnneは下宿人を置くのをやめない、いい収入だから。


新しい下宿人に白人の19才か20才の女の子がいます。ガリガリでヘアスタイルも奇抜で、ウェイトレスをやってる人。彼女は今回初めて実家を出たんだけれど、人のことにあれこれ口突っ込んだり文句言ったりするんで、Anneも含めて皆んなに煙たがられている。


私は我が家の長女恵梨と同じぐらいの歳だし「まぁ最初はイロイロあるでしょ」と暖かく見守ろうとしてたんだけどダメだった。


シモの話になるけど、私のケアするアンジェリカが大や小をしてオムツを替える時のこと。上の部屋や隣のキッチンに臭いが行ったら下宿人たちに気の毒だから…と、いつも部屋に続くマスターバスの換気扇をつけ、パティオのドアを全開にし、更に外に向けて扇風機をつけてオムツ替えするんだけど…わざわざドアをノックしてきて文句を言われた。


「私バイトから帰ってきて寝ようとしてるんだけど、換気扇の音が響いて寝れないんだよね」

「貴女の部屋はアンジェリカのすぐ上な訳じゃないでしょ?」

「隣のキッチンの上だけどすごく響くの」


へぇ〜階下の換気扇の文句なんて初めて言われた

この換気扇別にそんなうるさくないよ?

こんなのが本当に気になるなら他人と同居なんて無理じゃん?と思ったけど。


他にも私が乾燥機を使った後にゴミを取ってあるかチェックされたこともある。他のケアギバーともそりゃもうイロイロあったそう。


彼女的には自分もここに住んでるんだから、Anneのようにアレコレ私たちに言えると勘違いしてたみたい。


で、とうとう家主のAnneがキレた。


「彼女らは仕事しにきてるの。邪魔しないで。今後一切彼女らに口利かないで!」


アメリカって人間観察には最適

皆んな面白すぎチュー


アメリカ名物

長くてトロい貨物列車に落書きに…




ホントによく聞くフレーズ

「2度目だから」


何かって言うと、熟年とまではいかなくても若くないご夫婦で、ものすごく感じのいい夫婦が揃って言うフレーズがコレ。


「私達2度目だからね」

「最初の結婚で勉強したんだよ」

「浮気とかね〜?」

「お互いを思いやれるから喧嘩さえないよ」


パッと見あまりカップルに見えない2人…が多い。言い方が失礼なんだけど、例えば旦那さんがすごく格好良くて「歳のわりに気をつけてるなぁ」という感じなのに、奥さんが物凄い巨体で髪もボサボサで全然外見に気をつけてなくて「ホントに夫婦?」みたいな凸凹さだったり。あるいは旦那さんか奥さんだけが物凄く年取って見えるカップルだったり。


例えばあるカップルは、奥さんが入院してるんだけど旦那さんはいつも朝イチでやってくる。物凄く優しくて妻を労ってる。目に入れても痛くないってぐらい甲斐甲斐しく世話してる。で、全然フェイクじゃない。


こんな素晴らしい旦那さんどこで見つけたの?!


微笑ましくて本当に感心してしまって、奥さんも全身全霊で愛されてるおかげで、入院でストレス溜まってるはずなのにとっても穏やか。


で、失礼だけど彼らもかなりな外見凸凹カップル


またスーパーで買い物中にいきなり話しかけられたカップルもそう。とても気さくで私たちが話す日本語を聞いて話しかけてきた。あっちがハッピーだから話しかけられた私達も笑顔になる。

で、こちらも(失礼だけど)凸凹

「仲良いですね〜」

って言ったら

「うん、再婚だからね」

もうお決まりのパターン


奥さんが入院してて、旦那さんが何言う事なくずっと病室にいて、二人でテレビ見てるだけなのに穏やかな病室…で、凸凹とか。


ここで法則…わかった!

ドコも奥さんが外見に無頓着だけど、旦那さんがそれなりに格好いいカップルだって事。だからパッと見て何か違和感があるんだ。「本当にご夫婦?」って。(ほら、話しかけるのにもご夫婦なのか親子なのか分からないと会話できないでしょ?ソレぐらいの凸凹さ)


そうか!


最初の若い頃の結婚で男は外見がそこそこだけど性格の悪い妻で失敗し、2度目は性格で選んで大成功!!ってパターンなのかな?

女性ではなく男性が成長したのかぁ〜

(👆かなり失礼、両方に)


そうだ

そうだ、きっと!

再婚に対する偏見が吹っ飛ぶ!


今日はリハブのお話

私は3つのお仕事をしています
◉州公務員(テキサス州の公務員をしています。心身に困難のある人達が、実社会に戻ることができるよう支援するのが目的の施設に勤務。月〜金のフルタイム。でもフレックス制なので出勤・退勤時間はバラバラ)
◉リハブテック(長期滞在型の病院でリハブテックをしています。理学療法士に指示されたエクササイズを患者さんに施術したり、動ける人にはトレーナーの様にカウントしながら自力で運動してもらいます。土日のみ)
◉ケアギバー(個人宅で全身麻痺の女性のケアギバーをしています。夜勤のみ週2日)


すぐにナースステーションに戻ると担当ナースに報告。Williamの担当ナースは、昨日#109を担当していた彼女である。彼女は部屋に入り状態を確認するとすぐナースステーションに戻り叫んだ。


「あんたがやったんでしょ!」

「え?」

「またあんたがやったんでしょ!」


すぐにピンと来た。

昨日の#109の事で何か問題になったんだろう。家族が上司に報告でもしたのか…


「違うわよ?私は彼に触ってもいないから。貴女にセラピーしていいか聞いて病室に行って1分もしないで戻って来たでしょ」

「貴女の言ってることなんて信じないわよ!」


ブチ切れた彼女はまた急ぎ足でWilliamの元へと戻っていった。飛び出して行ったナースとすれ違いに仲のいいナースが入ってきたので彼女に話しかけた。


「ねぇ、新入りのナイジェリアン・ナースに今いきなりキレられたんだけど?彼女なんか問題でもあるの?」


私はコレまでの経緯を説明。

すると彼女は言った。


「いつものことよ。Don't take it personally.リハブはいつも身体中に管のついた患者さんを、ベッドから出したり歩かせたり運動させる…でしょ。その時に管が抜けちゃったりよくあるわけ。だからイライラしてるナースは多いのよ」


それは分かるけど…コッチはそれが仕事だから。私達もなるべく不注意がないようにはしている。でもセンサーやIVなどの管がこんがらがったまま寝かせられた患者さんも少なくない。そう言う場合、起き上がる前にセンサー等外してほどいていかないといけないしもう大変!いきなり倒れそうになった患者さんを支える時、咄嗟に伸ばした手が何かに絡まるのはままある事故。そんな事にならないようユックリ起こしてはいるけれど。リハビリテーションする事が患者や家族の選択なら、それを助けるのは私たち全員の仕事(方針は医師やPTや家族同席の会議等で決定されます)。皆んなに協力してもらうしかない。例え何かが取れても(快くとはいかないまでも)せめて嫌味など言わずに助けて欲しい。一応私はまだ無事故だけど、患者さん次第でいつでもあり得る事だから。


私たちが話していると当の本人がナースステーションに来て言った。


「何話してるの?」

「貴女のことよ」

(悪びれずハッキリ言います、こう言う時は。黙ってしまったらダメ、ここではね)

「#109のセラピーはもうやった?」

「Not Yet」

「じゃあもう触らないで!」

「貴女の言ってることは全く納得できないけど、セラピーを拒否するなら拒否するでただ報告するだけよ」

「レポートするって言うの?やりたけりゃやりゃいいでしょ?!」

「“レポート”ってね…他に何て言えばいいの?報告書に“書く”とでも言えばいいの?私は割り当てられた患者にセラピーするのが仕事なの。それが出来ないなら出来ない理由を上司に報告しなけりゃいけない。ただサボるわけにはいかないから。普通拒否されるのは医療上の問題がある時だけ。貴女みたいに(感情的になって)拒否されたら正直書きようがない。」

「もういいわよ!!」


捨て台詞を残して彼女は立ち去った。


Reportって言うと“通報”みたいに深刻な響きがある。だけど、普通の業務上の“報告”等にも使う単語だから仕方ない。感情的になってる彼女的にはカチンと来たんだろうケド。


その後彼女は30分以上もWilliamの手の甲のIVと格闘していた。手の甲のIVって腕なんかより大変…にしても時間かかりすぎ?結局いつ終わったかは知らない。さわらぬ神に何とやら。


その後、他の仲のいいナースにもさっきあったことを話した。彼女はICUのベテランナース。彼女は私の持っていた書類で新入りナースの名前を確認すると言った。


「こんな人知らないわ。やってもいないことをやったと言われたんなら、これ以上大きな問題になる前に彼女のボスに報告した方がいいわよ。」


彼女のボスってその友達のボスでもあるわけだけど…私は人のことをクビにしたいわけじゃない。2人のナースに相談したから、この状況を私一人で抱え込んでるわけでもない。他にも秘書など他のスタッフも彼女の叫び声を聞いていたし。


そこで家に帰るとゆっくり文面を考え、私のリハブのボスにだけ報告して置いた。Reportという言葉はワザと使わず「ちょっとお知らせしたいことがあるんですが…」って風に。


彼の返事はこうだった。



ほらぁ〜“R•E•P•O•R•T” だって

私は使ってないわよおいで


おわり


今日はリハブのお話

私は3つのお仕事をしています
◉州公務員(テキサス州の公務員をしています。心身に困難のある人達が、実社会に戻ることができるよう支援するのが目的の施設に勤務。月〜金のフルタイム。でもフレックス制なので出勤・退勤時間はバラバラ)
◉リハブテック(長期滞在型の病院でリハブテックをしています。理学療法士に指示されたエクササイズを患者さんに施術したり、動ける人にはトレーナーの様にカウントしながら自力で運動してもらいます。土日のみ)
◉ケアギバー(個人宅で全身麻痺の女性のケアギバーをしています。夜勤のみ週2日)

我が家のPokeが何かドンドン違うものになっている。入っているのはザーサイに筍のラー油漬けに中華風の漬物に…




土日勤務の日曜日。

3月から今の病院に勤め始めて、初めて1人のナースとトラブルがあった。それも完全に濡れ衣で…


まず土曜日。

#109には、当日ICUから普通病棟へ移動になったヒスパニックの男性患者が入っていた。私の担当リストにはICUと書かれていたんで、早めに病室に行って患者さんの状態を確認した。電子カルテのチャートは特に問題なし。患者は寝ておりベッド脇には奥さんが付き添っていた。


軽く挨拶。

するととてもフレンドリーな方だったんで「すぐ普通病棟に移動になってよかったですね」など当たり障りのない話をする。笑顔も出て会話も弾み「さぁ、じゃあ足の方から今の状態見させてもらいますね」と言いつつパッとカバーを取ると…患者を挟んで二人呆然としてしまった。


患者の閉じられた足の間に赤々と溜まった血…


チラッと見ただけでも少なくとも100ccは溜まってる。尿道カテーテルが下の方に透けて見えてるんで、100%血じゃ無いことは分かる。カテーテルが外れて血尿が漏れ出て溜まったんだろう。そうか付近から出血してるのか…それでもパッと見真っ赤なのに変わりはない。


「コレは…すぐナースを呼んできますね」


シーツでカバーをするとすぐに担当ナースを呼びに行った。ナースは状態を確認すると慌ててもう一人ナースを呼び処置を始めた。


コレが1日目。




2日目の日曜日。


土曜と同じナースが日曜も同じ患者たちを担当。セラピーの前に今日もエクササイズさせていいか聞いていく。特に問題はなし。確認後早速お気に入りのWilliamの部屋へ行く。


Williamの記事はこちら

聾唖のWilliamの記事①

聾唖のWilliamの記事②


…と…真っ白いフロアに血痕が…


WilliamがICUに来たばかりの頃は、誰も彼の言いたいことを理解できなかった。聾唖だということも周知されていなかったし、ICUに運ばれ人工呼吸器をつけられた患者さんがイライラしているのは日常茶飯時だったから。Williamは暴れに暴れ両手を拘束され、しかも24時間シッターまでついていた。


その後ABCボードを使い会話できるようになると、彼の両手の拘束もシッターも必要なくなっていた。穏やかな数日を過ごしその後普通病棟へ移動。するとまた拘束が始まった。最近は常に朦朧として寝てばかり。普通病棟のナースたちは彼とは一切会話しようとしていなかった。


イライラした彼は拘束された手をまた以前のようにベッドのフレームに打ちつけたんだろう。手は外に飛び出し床に血が滴っていた。血は手の甲に設置され大判テープで固定されたIVから出ていた。


後編へつづく


今日はリハブのお話

私は3つのお仕事をしています
◉州公務員(テキサス州の公務員をしています。心身に困難のある人達が、実社会に戻ることができるよう支援するのが目的の施設に勤務。月〜金のフルタイム。でもフレックス制なので出勤・退勤時間はバラバラ)
◉リハブテック(長期滞在型の病院でリハブテックをしています。理学療法士に指示されたエクササイズを患者さんに施術したり、動ける人にはトレーナーの様にカウントしながら自力で運動してもらいます。土日のみ)
◉ケアギバー(個人宅で全身麻痺の女性のケアギバーをしています。夜勤のみ週2日)


引き続き夏休みに入ったGalvestonの風景
左には超大型クルーズ客船が停泊中
ビーチに有料の駐車場
LAではこんなん見たことなかったからビックリ



7人目は白人男性。

体が大きく目がいつも据わっていて、ドアを一歩入っただけで異様な雰囲気に包まれた病室。


廊下を通り過ぎる人を見ては

「Hey, You!!」

と野太い声で呼び止める患者さん。


声がものすごく大きく一切の感情を感じないトーン。でも使う言葉がドレも汚いので完全にキレちゃった人みたいで更に怖い。電子カルテには「一切の治療を拒否」とある。

あぁまた私お得意のパターンだわ。


初日。

部屋に入ると明るく元気なトーンで話しかける。まず自己紹介。そして何をやるか簡潔に。フレンドリーだけど患者の虚をつき淀みなく話す。そしてまず気遣う言葉をかけつつゆっくり彼の手に手を伸ばす。


「Ow!!」


またあの感情のないバカでかい声で叫ぶ。


「大丈夫?まだ触ってませんよ?痛みがありますか?あるなら何処ですか?手?足?」

「Owww!!God Damn It!!!」


一泊置いて冷静に、でもフレンドリーな口調で聞く。コレは患者さんと同時に自分を守るために。病室の外に聞こえるように少し大きい声で。


「ホラね、まだ触ってませんよ?痛みがありますか?あるならソコはスキップできますしね。ココは?痛い?」

「God Damn It‼︎‼︎」

「痛いなら痛いって言ってください。痛みがありますか?」

「No‼︎」

「痛くないんですね?」

「No Pain‼︎」

「Good!」


どうやら彼は何に対しても「God Damn It!!」と叫ぶクセがあるらしい。体も大きく目も据わっているんで、こんな口調で叫ばれたら誰でも「殴られるんじゃないか?」と思ってしまう。いちいち叫ぶんで他の患者さんや付き添いの人にも「虐待でもしてるの?」って思われちゃうし。


体の別の箇所を触るたびに

「God Damn It‼︎」

「痛い?」

「No Pain‼︎」

「Good‼︎」

を繰り返す。


そのうち彼の方がびっくりしたように私を見つめてきた。相変わらず口からは条件反射のように「God Damn It‼︎」が出てくるんだけど、目はもう据わっていない。何度「God Damn It‼︎」って言われても、痛みがないかその都度確認してセラピーを続ける。


「God Damn It‼︎」

「痛い?」

「No Pain‼︎」

「Good‼︎」


口調と裏腹に体はもう抵抗していない。セラピーに身を任せてる。でも口ではまだ「God Damn It‼︎」


このBehaviorのお陰であらゆるシッターや家族が彼を避けて来たのだろう。実際電子カルテにも「治療拒否」とある。拒否じゃない。タダのBehavior。そういうのを知らない人は殴られる前に接するのを諦めちゃうだろう。実際口調も見た目も怖いし。


私はキッチリセラピーをすると

「ほら、もうコレで終わりよ?Good Job!」

と締めくくった。

鳩が豆鉄砲でも喰らったような顔で私を見つめる患者さん。実際状況がまだあまり飲み込めてないんだろう。ゆっくりシーツを広げ彼に見せながら聞く。


「シーツでカバーして欲しい?」

「What⁈⁉︎」

「ほら、コレ、寒いならシーツでカバーしてあげますよ」

「Ok‼︎」


相変わらず抑揚のない野太い声。でも慣れればなんてことない。彼自身何もできないんだから。「No Pain!!」という新しいフレーズを引き出しただけでスゴイ。


こんな調子で毎回「God Damn It‼︎」と言われ続けた2週間目のことだった。何と帰り際に彼から「Thank You」と言われた。相変わらず感情も抑揚も一切ない口調ではあるけども…

教えてもないのに!


こういうので疲れが吹っ飛ぶんだなおねがい


今日はリハブのお話

私は3つのお仕事をしています
◉州公務員(テキサス州の公務員をしています。心身に困難のある人達が、実社会に戻ることができるよう支援するのが目的の施設に勤務。月〜金のフルタイム。でもフレックス制なので出勤・退勤時間はバラバラ)
◉リハブテック(長期滞在型の病院でリハブテックをしています。理学療法士に指示されたエクササイズを患者さんに施術したり、動ける人にはトレーナーの様にカウントしながら自力で運動してもらいます。土日のみ)
◉ケアギバー(個人宅で全身麻痺の女性のケアギバーをしています。夜勤のみ週2日)

夏休みになってGalvestonは海水浴客だらけ
タダタダ広いんで人が少なく見えるだけデス


つづき

6人目は2階に入院している白人女性(50代後半)の患者さん


彼女はNPO(経口摂取不可)なんだけど、いつも何か飲み物が欲しいと訴えてくる。口が乾くなら氷のかけらを許可することもあるけど、彼女の場合すぐ喉を詰まらせるんで氷さえダメ。本当に気の毒だけど何もあげられない。


カルテには「一切のセラピーを拒否」「今後協力するよう患者の意思が変化したら、治療方針を計画し直し続行」とある。以前投薬しようとした看護師に対して「そう何度もブスブス刺そうったってそうはいかないんだから!」と怒ってた患者さんが彼女。


Behaviorのある患者さんたちの記事


彼女はかなり痩せてしまって寝たきり。だけどいつもベッド周りも整頓されていて、ちゃんと眉も描いて身綺麗にしていて、見るからに「仕事できそうな感じ!」の女性。背は低いけど顔立ちの整ったショートヘア美人。


背骨付近に傷がありかなり強い痛みが出ることもあり、仰向けに寝ていられなくて体の向きを変えるよう訴えることあり。背中左脇要注意とある。


私は初日から彼女とは全く問題なかったんだけど、相変わらずPTのセラピーも拒否しナースにも嫌われているらしい。


先週末のこと

土日連勤の日曜日。部屋に入るなり「助けて」と言われた。何事かと思ったけど、私を覚えていてくれて話しかけてきただけみたいだった。


「寒い?」とかイロイロ話しかけていると落ち着いてきたんでセラピーを始める。相変わらず私のセラピーには完全に身を任してくれる。綺麗に手入れされた身体。ムダ毛の一本もなくスベスベの肌。グローブ越しなのに触ってるこっちの方が気持ちいい。信頼して身を任せてくれる患者さん相手だと、相手が何歳だろうと赤ちゃんの肌に触れてるような感覚になる。力使ってセラピーしてるのに何故か気持ちよくて、こっちが眠くなっちゃう。いや、コレ本当なの。


当然そういう時は患者さんもリラックスしてて、「1!2!3!4!」とトレーナーのように腕や足を動かさせてる時でも、いい感じにゆったりしてたり…。


セラピーが終わりクッションなどを戻した後に聞いた。

「寒い?シーツか何かかける?」

「うーん、別に今ちょうどいいから」

靴下さえ履いていない。

「あらそう、生足をそのまんま放り出して、皆んなに見せびらかしたいのね?」

「プププ」

思わず笑っちゃった患者さん。

内心 (うわー!声出して笑うなんて初めてじゃん!!) と思いつつ派手なリアクションはしない。大っぴらに喜ぶと気恥ずかしくて態度が変わっちゃうかもしれないから。でも帰り際、手袋を取り外し部屋を出ながら

「また来週ね! I love you!」

というと変な一泊の間の後で

「I love you, too!!」

と返してくれた!

これ以上のご褒美はないでしょラブ


つづく


今日はリハブのお話

私は3つのお仕事をしています
◉州公務員(テキサス州の公務員をしています。心身に困難のある人達が、実社会に戻ることができるよう支援するのが目的の施設に勤務。月〜金のフルタイム。でもフレックス制なので出勤・退勤時間はバラバラ)
◉リハブテック(長期滞在型の病院でリハブテックをしています。理学療法士に指示されたエクササイズを患者さんに施術したり、動ける人にはトレーナーの様にカウントしながら自力で運動してもらいます。土日のみ)
◉ケアギバー(個人宅で全身麻痺の女性のケアギバーをしています。夜勤のみ週2日)

ヒューストンはこんな感じの人工池が至る所にある。遊泳不可!アリゲーターがいるところもあるし。(うちのアパートの裏の池にはいますヨ) 時々魚釣りしてる人がいるけどいいのか不明。



つづき


CNAの方が既にイラついてるし、ナース部外者の私まで「業務に支障があるレベル」言えば彼女もボスと話しやすい。即刻院内無線と院内放送でボスを呼び出すCNA。ナースステーションにいた他のナースが「一体どうしたの?」と聞いてきた。「家族がアグレッシブになっちゃってて患者のケアが出来ないの」


スーパーバイザーはすぐ飛んできてCNAから事情を聞いた。私も、「足踏みをしてかなり攻撃的だった」と伝える。すると呼吸器科のベテラン技師が「私も一緒に行ってあげるから。大丈夫よ」と参戦。狭い個室にゾロゾロ4人で戻った。


相変わらずリクライナーでふんぞり返っていた息子。ソコヘ見るからにベテランそうなナースが「責任者です。どうしましたか?」と膝がくっつきそうな距離に椅子を引き寄せつつ入っていった。背筋をピンと伸ばして座り、だが親身で穏やかな口調で状況を聞き出すスーパーバイザー。ウンウンと頷き顔を覗き込むように話に聞き入ってる彼女相手に、彼もこちらを監視すると言っていたのをすっかり忘れている。というか、とても頭良さそうな責任者相手に、二つのことを同時に考えられなくなっているというのが正確な状況のように見えた。


さすが!

私とCNAはここぞとばかりにサッサとケアを進める。


「状況は分かりました。今カルテを確認してみますね…うーん、入院当初からもう意思の疎通はできてないって書いてありますね。じゃあ、この病院で突然ドンドン状態が悪くなったという訳じゃないんですね?不満を感じてらっしゃるのは前の病院に対してですか?」

「まぁそうだけど…」

「そうですか、ご心配だったでしょうね。ところで患者さんの治療方針に対してご意見があるとのことですが、法的な貴方の立場を確認しておきたいんですが…弁護士さんとは話されてます?」

「弁護士?いないけど」

「患者さんのガーディアンはどなたですか?」

「それは今の奥さんだろう」

「貴方はガーディアンじゃない?」

「あぁまぁ…」

「あら…そうなんですか…。法的なガーディアン以外の方に治療方針の決定権はないんですけども…公式な書類をキチンと調べ直してからお返事しますね。貴方の名前が載っていれば義母さん同席で話し合い持てますし…」


もうこの頃には何も言えなくなっていた息子。こっちもケアを全て終え部屋を後にする。スーパーバイザーも少しして呼吸器科の技師と部屋を出てきて苦笑した。


「要はタダの家族間の諍いね」


それ以降彼を病室で見かけたことはない。でも同時に現在の奥さんも見かけなくなった。どうしたんだろう。電話か家でまだ揉めているのだろうか。あの日以来、患者の個室の窓際には何枚もの息子や彼の妻の写真が置かれている。写真フレームに入れるでもなしにそのままで。


そしてMarvinは今日も一人きりだった。


つづく