雨が上がる寸前の山波のうつろいは魅力的だ。
三時のお茶の前、急に明るい日差しが差し込んでくる。
見渡す山波は雲のカーテンが上がろうとしている。
雲をまるごと帽子にしている山もある。
山と雲との協奏曲はダイナミックなステージで繰り広げられていく。
目の前の雨で洗われた楡の木は、たゆたゆとして枝を遊ばし、
水滴を光らせて、気持ちよげに日差しに遊ぶ。
魅力的な「カリブの国々」一気に読み終わる。
ブルーオリンピック選手団団長の大崎映晋氏は
カリブ海に潜った感動を綴っていた。
―――――海は光に溢れ、
その美しい色彩はとてもこの世のものとは思われず、
沢山の魚族は、みなそれぞれグループを作り、群れ遊んでいる。
これ以上素晴らしい世界が、ここをのぞいては、
もうどこにも見い出すことはできないように思われる。
人間を最も残忍な動物と知らない彼等は、珍しそうに集まってきて、
たちまち魚のカーテンで私達を取り巻いてしまう。
イセエビやシャコ貝なども手をのばせば、いくらでもそこにあった。
カリブ海のオオシカツノサンゴの林や、うす紫のウミオウギの間をぬって、
私達も魚になって一緒に泳いだ。
人間社会のことは、遠い世界の出来事となり、
カリブ海の海そこで呼吸をしに水面へ返らねばならないことも忘れてしまうほど、
もぐり続けた。
私達の肉体を構成する細胞のどれかが、遠い祖先の、
人類がまだ水棲動物であって、海底を泳いでいた頃の、
個体細胞の記憶を蘇らせているのではないかと思うほど、
空気の世界を忘れてしまっていたのである。―――――


