春風はヒュー、ヒューと唸っていた。
しなやかな全てのものは荒れ狂ったように、優しかった新緑も体を痛めつけながら強風に耐えていた。

そんな風景を窓の外に見ながら、バウンドケーキとアップルグラタンを焼く。 香りは部屋中に広がる。

TV「心の時代」に合わせて、午後のティータイムをする。
思いもかけず、ゲストは「辺見よう」だった。

十数年前 講演会で感動し、「物食う人々」を読み圧倒されたことを覚えている。
更に 穏やかに、大きくみえた。
語ることも 心の奥底から落ち着いていた。
それは大宇宙と人間を深く、謙虚に見詰めたからではないのだろうか。
そんな感じがした。

この震災で誰もその莫大な被害に対する言葉を知らず、数字でしか表現できない。

あの光景では生きてることが偶然であって、死んで当たり前だったのかもしれないほどの被害だ。

ことごとく破壊された外部に対して、新しい内部をこしらえなければならない。
個として自分でこしらえなければならない。

この破壊に対して、メディアは真剣に深みに入っていこうとする言葉があっただろうか。

彼の真剣な、心の奥底からの言葉が、一つ一つ胸に響く。