12月12日(金)


今日は太郎君の学校の1、2年生によるクリスマス・コンサートがありました。学校の敷地内にある素敵なチャペルです。子どもたちは赤いリボンをつけて、ジングルベルや赤鼻のトナカイなど、おなじみのクリスマス・ソングを楽しそうに歌ってくれました。太郎君?もう、もちろん心配なんかしていませんよ。ばっちりでした。鈴なんか持たしてもらっちゃって、お友達のピアニカに合わせてノリノリです。結構リズム感もいいんだなあ、とまた眼尻が下がってしまいました。それにしても、昨日のきな臭さの後で、ここは何と平和な世界だろうと、若干の違和感さえ感じました。学校でこんなに無邪気にクリスマス・ソングだけ歌いまくれるなんてことは、カリフォルニアでもこの街でも地元の学校ではありえません。クリスマス=キリスト教ですからね。日本は悩みが少なくて楽です。


米国東海岸子連れ生活日記


太郎君のバスラインではありませんが、スクールバスの運転手さんは実はプロの歌手なんだそうで、素晴らしい声を聞かせてくれました。しかし、観客のノリがちょっと悪かったなぁ。後でお迎えの時に日本人ママたちと話したら、みんなそう思っていたらしく、誰か「イェ~」って言わないかな、って周りの様子を窺っていたんだそうです。
米国東海岸子連れ生活日記

12月11日(木)


学校から帰ってくるなり、花子ちゃんは、「今日は学校で嫌なことがあった。」と怒って話し始めました。新聞記事を発表する時間に、ロシアの話から第二次世界大戦の話に発展して、チャールズという男の子が、Japanが、Japanがと連発して日本のことを攻撃し始めた、男の子たちが興奮してしまってザワザワして花子ちゃんの英語力では全てが聞き取れたわけではないのでよくわからなかったけれど、チャールズはアメリカはどんどん戦争をして領土を広げると国民が幸せになるとも言っていた、最後には第二次世界大戦に負けた日本とドイツはアメリカが作ってやったようなものだと言って、それを聞いた先生も否定しなかった、のだそうです。


周りの子はチャールズが話している間花子ちゃんとは目を合わせないようにしていたし、隣の子は心配そうに覗きこんでくれた、日本の方が歴史が長いのに悔しい、というので、日本人が5人もいるのにチャールズにそんなこと言われて誰も反論しなかったのか、アメリカ人は沈黙=yesだと思うのよと、scamamまで悔しくなりました。こんなこともあろうと想像はしていましたが、今週は開戦記念日もあるので前もって対策しておかなかったのは失敗でした。このまま流してしまうか、明日何らかの意思表示をするか、どうしたものか、迷って他の日本人のお母さんたちに聞いてみたところ、それぞれの子どもたちの反応はとても興味深いものでした。


1年生からこちらにいる男の子は、チャールズの家族は先祖がメイフラワー号でやってきた共和党びいきの保守党一族で、代々軍関係の仕事をしているから、いつも他国についての発言は過激、この前選挙で負けた時には散々みんなに言われていたから今日は言いたかったんだよ、って余裕で聞き流しています。もう一人、この男の子よりも長くいる女の子は、「チャールズの言っていたことのどこが悪いのかわからなった。」のだそうです。一方3年生でやって来て、中学受験用に日本史を塾でかじっている男の子は花子ちゃんと同様の反応を示し、「チャールズが話している間中、何言ってんだ、とむかむかしていた。」のだそうです。彼もやっぱり「日本の方が歴史が長いのに。」って言ったのだそうです。去年来たばかりの女の子は、隣の子とふざけあっていて聞いていなかったそうで分析不能。長くいると考え方、感じ方がアメリカ人ぽくなるからか、ある程度の年まで日本にいたり日本史をかじったりすると愛国心が湧くのか、データが4人だけなのでなんとも言えませんが、滞米期間の長短できれいに分かれた結果となりました。


面白がってばかりもいられず、とりあえず、花子ちゃんの気持ちを尊重して担任の先生へのお手紙の下書きを作らせてみました。


「昨日、クラスで誰かがアメリカが日本を作ったと言ったけれど私はそうは思いません。日本は2000年もの歴史があってずっと独立を通してきました。素晴らしい文化もあります。確かに日本は第2次世界大戦に参加し、負けました。問題を戦争によって解決しようとした日本は間違っていました。戦争は人々に悲しみをもたらすだけです。でも、戦後日本は素晴らしい憲法を手に入れました。日本の憲法は日本政府が国と国との争いを武力で解決することを認めていません。私はこの憲法を誇りに思っています。そして、日本がこの素晴らしい憲法とともに独立した国家として再び立ち上がるのを助けてくれた合衆国に感謝しています。でも、私は皆さんに、日本がアメリカに作られたと思っている日本人はそんなに多くはないということを知ってほしいのです。」


なんという愛国心、そしてなんというアメリカへの信頼感でしょう。と、心を打たれてばかりもいられません。まだまだscamamは花子ちゃんにgo signを出す決心がつかないのです。Big3に対するbail-outが連日議論されている昨今、日米関係の話題はさっと流してしまった方がいい、それに花子ちゃんの英語力じゃ何か言って議論になってもそれ以上ついていけない、他の日本人も助けてくれない、そうかと言って、国を想う子供の純粋な気持ちを抑えつけるのもかわいそうだし、と考えあぐねてとうとうカリフォルニアのG先生にメールで泣きつきました。


メールを読んだG先生は即電話してきて下さいました。開口一番、「こんなことで何をおたおたしているんですかっ!」ってお叱りです。


先生曰く、日本は太平洋戦争で本当に卑怯なひどいことをたくさんしました。台湾でも、朝鮮半島でも中国でもいたるところでです。ビルマでは国際法を破って英国兵士を奴隷のように扱いました。真珠湾攻撃だって奇襲だとかなんとかいっていますが、国際的な常識から見れば非常にお粗末な外交的失敗です。私たちは、まだまだそれをしょっているのです。申し訳なかった、申し訳なかった、と言い続けなければいけません。それが敗戦国の真実です。何世代も何世代もそれを引きずっていくのです。これが日本人の運命です。そして戦後の日本をアメリカが作った、という事実からも顔をそむけてはいけません。感情論に走ってはいけません。アメリカは日本の制度をそっくり作り変えました。アメリカがものを買ってくれたから日本は復興しました。今日本の技術を支えている多くの人々がフルブライトの奨学金を受けてアメリカで学びました。アメリカは戦争をして負かした国の人々にお金をだして勉強をさせたのですよ。これらの事実を受け止めなさい。アメリカが作った、と言っている日本は「戦後の日本」のことです。高々建国200年あまりのアメリカはティーンエイジャーと同じで過去は振り返りません。いくら日本には長い伝統があるといっても彼らにはわかりません。しかし、アメリカに対抗できるのは、日本の文化と伝統だけです。だから、常々花子さんに日本の古典を勉強せよ、と言っているのですが、あの子はまだ何も知りませんよ。そんな子供に論争をさせてはいけません。あの子にはまだ日本の文化・伝統を語る資格も力もありません。さらに、アメリカ人を納得させ、花子の言うことに耳を傾けさせるためには、科学の知識も身に着け、圧倒的優位に立たなくてはいけません。そうして初めて、この国の人々は一目おいてくれるようになるのです。今、言えることは黙って耐えよ、勉強してクラスの中で力を見せつけ、日本人とはこんなに優れた国民なのだと実績で訴えよ、ということだけです。わかりましたか、お母さん、しっかりして下さいよっ。


戦後日本のキャリアウーマンの先駆者としてキャリアを積まれたあと、アメリカ人とご結婚されて渡米され40年、この地で子育てをされ、たくさんの日本人の子どもたちを教えられてきたG先生の言葉はずしりと重みがあります。そういうわけで、つまらない抵抗は止めました。花子ちゃんの手紙はお蔵入りです。変な英語も気にすることなく普段はいろいろクラスで発言している花子ちゃんが今回は何も言えずに帰ってきた、それはscamamには到底分らないその場の雰囲気を敏感に感じていたからなのでしょう。花子ちゃんはscamamが伝えるG先生の言葉を静かに受け入れました。アメリカの学校でやっていくっていよいよ大変なことだと、とホリディシーズンを前に浮かれ気味だった気分も引き締まる出来事でした。


そうそう、今回は悔しがった花子ちゃんですが、彼女の安保観には仰天させられたことがあります。

「アメリカはさぁ、日本の憲法作ってくれて、9条では軍隊持っちゃいけない、って書かせたんだから、当然アメリカには日本を守る義務があるよね。」

日本国憲法をアメリカに作ってもらった、なんてすんなり言えちゃうところはアメリカに絶対的信頼を持つ帰国子女の所以でしょうか。