SNSでアンドラーシュ・シフの言葉が流れてきて

読んで、その通りだなと思った。

 

音楽は視覚的な芸術ではありません。

現代では人々は音楽を聴こうとせず、

見ようとします。

 

しかし音楽の中に「見る」物は何もない。

目を閉じてごらん。音楽はそこにあるのです。

アンドラーシュ・シフ

4 Impromptus, Op.90, D.899 - No.1 

 

アンドラーシュ・シフさんの奥さんは

日本人でバイオリニスト塩川悠子さん

 

 

クラシック音楽についてはその通りで

派手な演出で見せるものではなくて

演奏家が日々演奏技術を磨いて、

質の良い音楽を提供することに価値があり

観客の脳や心を満たすものだと思う。

 

舞台芸術関係の仕事に携わっていた頃に

プロデューサーの光岡さんから、珍しく

「プライベートで演奏会を聴きに行くので

一緒に行ってくれないか」と誘って下さって

ご一緒させていただいたことがあった。

 

複数の演奏家が次々登場する演目で

その中の一人の演奏家が登場すると、

「あの演奏家の仕事をしてみたいと思う?」

と尋ねられたので、しばらく考えて

「いいえ、難しいです」と返答した。

 

「どうしてそう思うの?」と尋ねられたので

「全体的に派手な演出の歌や踊りですが、

 遠くの席からは何をしたいのか、

 表現があまり伝わってこないからです」

 

光岡さんは、黙って大きく頷いていた。

「うん、そうだね。 わかる。うんうん、、

 やっぱり無理だな・・・・・」

ボソボソつぶやいていた。

 

後々考えてみると、、

頼まれた仕事が断り切れずに迷っていて

私が何も知らない客として観た場合の反応を

知りたかったのだろうと思った。

 

しばらくすると今度は、バイオリニストのイヴリー・ギトリスさんのカセットテープを渡されて、「これを全曲聴いて感想を聞かせて欲しい」と言われた。

その時には、嬉しさが抑えきれない様子で、

「今度、日本に初めて招く予定の演奏家なんだけれどもね、まず聴いて欲しいんだよ。」と声が弾んでいた。

 

「本当に素晴らしかったです」と話すと、

「そうでしょう、僕はね、彼の音楽をはじめて聴いた時に涙が溢れてきてね、こんな気持ちになったことはなかったかもしれないな。

この仕事をしてきて、初めて命を削ってでも彼のために素晴らしい仕事をしたいと思ったんだよね」

 

最初に日本に招いた時から、光岡さんとギトリスさんは演奏家とプロデューサーという関係を越えて、大親友になられたようで、ギトリスさんが来日するたびに光岡さんから「ギトリスさんと一緒にいるんだよ」と嬉しそうに電話が入っていた。

「私も会わせて下さいよ」と話すと、「僕たち水入らずで楽しんでいるからね、そのうちね」と私は邪魔者扱いで、一度も誘ってもらえなかった。

 

よく光岡さんから言われた言葉で、

「チケットを売りさばけば、客はやってくる。

なんて簡単なことを考えるもんじゃない。

お客さんにメリットがなければダメなんだよ。

質の高い芸術を提供するのが仕事だから」

 

質の高い音楽や舞台芸術を提供するために、時間をかけて人脈を作り顧客リストを作って、様々な所にお声掛けをしてプレイガイドを回り、芸術家の方々の演奏会場の座席に空席を作らないために、ストイックに仕事をしておられたのを思い出す。

 


 

 

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