4.城の庭先
ジュヌヴィエーヴは、息子ゴローの後妻として
メリザンドを迎え入れ、城の案内をしている所でした。
屋敷のまわりは木立に覆われ、長年、日光を
まるで通さないその場所は苔むしていて、

辺りはうっそうとしておりました。

ジュヌヴィエーヴは40年近くも、この城に住んでいれば、
それも慣れてしまうものと教えながら、日当たりの良く、
景観の美しい庭先までやってきました。
その庭先からは海が一望でき、海側からは穏やかな日が

差し込んでくるのでした。

二人で話し込んでいるところに、海辺の方からは
ペレアスが憂鬱そうに疲れ気味の表情で歩いてきました。

 

ジュヌヴィエーヴはペレアスを手で招き入れ、兄の後妻の
メリザンドであることを紹介して城内へ戻っていきました。
二人は軽く挨拶を交わすと、荒れた海を眺めながら、
出航する船の行方を追って話し始めました。


 

今夜はしけになりそうですね。うっかり船を出すと
帰れなくなるかもしれないですよ

ええ。 そのようですわ・・・
でも、港から船が出て行くわ

ああ、かなり大きな船ですね。

まだ、よくは見えないが、もうすぐ光の帯に入ったら、

はっきりしてきそうですね。霧も湧いているようですし・・・

ほら、あちらに小さな光が見える。 あれは何かしら?

あれは灯台。この辺りはあちこちにあるんですよ。
あっ、あれは、外国船ですね。 どこのだろう?

あれ・・・私を乗せてきた船ですわ。帆が大きくて
あの形でわかりますもの。 なぜ、出て行ったのかしら
きっと、難破するわ・・・

 

・・・・・・・・・

空が暗くなってきましたね。 今にも雨がふってきそうだ
そのまえに城に戻った方がよさそうですよ

ええ。 でも・・・・・  

もう少し、ここにいて雨の降り出す前に

この花を摘んでいきたいの


みるみるうちに、辺りは先ほどよりも うす暗くなってきて
風は強くなり、大粒の雨が降り出してきそうです。それでも、
メリザンドは、まだ花や草の葉を摘みたいと言うので、
ペレアスは手を貸してあげました。

城に来て以来、どうして良いのかわからず不安な日々を
過ごしておりましたので、ペレアスの傍らで優しさを感じながら、
メリザンドの心は、次第に安らいでいくのがわかりました。

今、嵐がやって来ようという時に、ペレアスはメリザンドに向かって
明日から旅に出たいと考えていることを告げました。

メリザンドはそれを聞いて、なぜか、一抹の寂しさを覚えるのでした。