この土日は実家に帰省して将来の進路について話した。

どうやら両親は、私の将来が何になるのか不安に思っていたらしい…

まぁ確かにカウンセラーは様々な雇用形態はあるものの、不安定な職業だから心配されるのは当然なのかもしれない。

自分自身今はお酒やギターに没頭するあまり、将来何になりたいだとか断固とした目標を全く持っていなかった。

でも卒業後は、フリーターをしつつもバーテンダーとしての道を歩んでいきたいと考えていた。

バーという世界に足を踏み出すリスクも考えず、今までにない世界を見せてくれるバーテンダーが純粋に楽しい。

知識もまだまだで何も出来ない自分だけど、バーテンダーになりたい。

でもカウンセラー以上に安定しない職業であることも、限りない努力量が無ければ続けていけない職業であることも分かっていたから、断固たる意志は持てていない。

にもかかわらず、俺はバーテンダーという選択肢があることを親に伝えてしまった。

イタリア料理店のチーフの経験がある親だからこそ、その一言は一層親を心配にさせてしまった。

 

そこで、もう一つの選択肢「公務員」も考えていることを伝えた瞬間に親の表情は不安から一転安堵と喜びに変わった。

公務員という選択肢があることを知った瞬間の親の笑顔といったらもう…。これまで俺との会話でそんなに笑顔になったことあったか…?

公務員になりたいなんて夢を語る人の理由なんてたかがしれていて、口を揃えて「安定」と言う。

そんな夢も希望も持っていない人間が大嫌いで、夢を持って一生懸命頑張れることが誠実だと思っていた。

だから、適当に公務員何て言いたくなかったし、そんな気持ちで公務員試験の勉強しても絶対上手くいかない。

昔本当にやりたいことが見つからず最終手段として公務員になろうと思い勉強した時期もあったが、公務員になる理由が見つからず三日坊主で終わってしまった。

何となく勉強することは苦手で何でも意味を求めてしまう性格だから、意味付けできなかった公務員試験勉強は持続しないのは当然のこと。

だから不思議で仕方なかった。

どうして「安定」という言葉だけが魅力の公務員を目指してひたむきに勉強できるのか。安定することがそんなに嬉しいことなのか。

でも、ようやく俺の中で納得のいく理由が分かった。

きっと親に対する恩返しなんだ。

 

家庭に恵まれていた俺は、金にも困っていなかったし、親も簡単にやりたいことをやらせてくれていた。

中学高校と私立に通い、趣味のゲーム漫画カードはいくらでも買ってもらえた。

でも、周りも医者や弁護士の息子のお坊ちゃまばかりだったから、自分が恵まれているなんて考えていなかった。

欲しいものがあればいつかは買ってもらえる。行きたい場所があれば行かせてもらえる。感謝の心は大して持たず、与えられたものを当然とまで考えていた自分もいた。

親の親切を俺は大して考えず、何なら親切を利用していた。

親は心配して休ませてくれることを知っていたから、休みたい時には嘘をついて欠席していた。甘えてばかりで親のありがたみを知らないクズ人間。

大学でも駅近いマンションに住ませてもらったり、数十万のセミナーに参加させてもらったり、習い事の費用も出してもらったり、苦労せずとも自分の思うが儘。楽勝な人生だったのだろう。

俺は甘え続けてきたあまり、親に恩返ししようなんて考えたこともなかった。

「親に迷惑をかけたくないから」と言う人は、自分の意思を殺して生きているだけの消極的な人生で可愛そうだとも思っていた。

でも、同時に親のことを考えて動けることに対する尊敬の眼差しでも見ていた。俺はそんな親のこと考えられていないからさ。

 

親に恩返ししつつ、自分が納得のいく進路を選ぶことこそが一番望ましい人生。

当然のことだと思われるかもしれないけど、社会人として自立することは、親との関係を断ち切ることではない。

社会人とは、親に恩を返し続けること。

一般教養が無い自分が公務員を目指すのは相当な努力が必要だけど、知識を身に付けることは間違いなく意味はあることだし、勉強することは嫌いではない。

正直今はカウンセリングに関する職業に就ければ何でもオッケーだと思っている。

ダラダラ将来の進路に悩み続けているぐらいなら、公務員試験の勉強をする方が良い。

でも、バーテンダーの夢を諦めたわけではない。

今は我慢と恩返しの期間だろう。

公務員になり安定した収入を得て親を安心させつつも、土台を固めていく。

そこでずっと公務員にやりがいを持てていれば続けるし、それでもバーテンダーになりたいと思ったらやってみる。

数ヶ月のバイト経験でバーテンダーと決めるのは早過ぎるし、考えが甘過ぎる。

その場の気分で直ぐに行動できるのは一つの俺の長所ではあるけど、その行動が周りをどれだけ振り回すのか考えないといけない。

自分一人の身体ではない。親が生んでくれたこの身体。

親の気持ちも考えつつ、自分のやりたいことを実現していこう。