まず最初に、ゴルファーや野球のピッチャー、また卓球選手のコンディショニングのなかで、とりわけ筋力トレーニングは難しいであろう。

なぜならば、全身の連動されたパワーが、指先の微細な感覚を通してクラブやラケット、そしてボールに伝わり微妙なコントロールを維持しなければならない。格闘技やラグビー、サッカーなどのコンタクト系スポーツとはトレーニングの質自体が大きく違うのである。

野球のピッチャーで140キロ台のスピードをさらに上げようと、ベンチプレスなど胸の筋肉を鍛え、ウェートトレーニングでは大きな成果が出たものの、ボールのスピードが落ちたピッチャーや、飛距離アップを目指し“流行りの筋トレ”やトレーニングを取り入れシード落ちしたプロゴルファーなど実は多いのである。


ここで言っておくがトレーニングが競技にマイナスなのではなく、競技の特性や自身の身体的特性を加味して行わないと逆効果になるということである。

さて石川遼プロであるが、雑誌の取材等あるたびに「デビュー当時の動きの方がいい」と言ってきた。巷の専門家達は「体もスイングも力強くなって世界で戦える準備が・・・」などと言っているが、私が彼のスイングで1番いいと思うのはデビューした年である。確かに上半身のひ弱さがあり、克服すべき点は多々あったが、あの時の重心移動は素晴らしかった。彼の場合は右股関節にやや硬さが見られるがさして問題はなかった。

ちなみに右股関節の硬い派はショートゲームに長ける半面、ドライバーからゴルフが崩れる傾向にある(ここでは詳しくは控える)。今年トーナメント会場で彼を見たが、上半身の大きさと下半身、特にお尻の小ささに疑問を感じた。
今の彼のスイングは上体の強さに頼ったもので、ロングアイアンの弾道の高さやラフ対策もあるだろうが、もっと下半身重視で行うべきと思っている。それも筋肉をつけることを目的とするのではなく、“粘り強さ”を得るために!
ここまで彼のスイングで1番気になるのは、右への重心移動に硬さがみられ、切り返しの“間”が年々短くなっていることである。


とにかく上半身のトレーニングを控えるか(もしできれば即刻上半身は中止)しないと、今期初優勝どころか世界が遠のくのではないかと心配である。


石川遼君には“柔よく剛を制す”で世界と互角に戦ってほしい。