(つづき)
そして今日最後の一品が、待ってました、本来はランチでしか食べることの出来ない裏看板メニュー「タンカレー」。
タンカレーに対するボルテージMaxの私達カレー部員の前についに現れた。
見た目地味な、さらっとした感じのカレーのルーと、それを奥ゆかしく包み込む麦飯、、そしてそこにこれでもかと言わんばかりに自己主張の激しい牛舌。
見た目だけで、一気に我々の胃袋を貪欲にさせる。
スプーンでまず、煮込みに煮込んだとろっとろの牛舌を切る。
催眠術をかけられたかのような、夜、女性がパンテーをずらされるような、無防備になった牛舌はするっと切れた。
切った牛舌と、麦飯をスプーンに乗せ、そのままカレーをひとすくいし、スプーンの中で、ちっちゃなカレーライスを作って、口に入れた。
なんだ、この見事なまでのバランスは!!
小気味良い弾力と共に旨みがジワッと染み出てくる牛舌。
その旨みエキスを存分に受け止めつつ、逆に酸味とまろやかさと言うスパイスを牛舌に加えるルー。
そして、歯ごたえを残しつつ、ふっくらと炊き上げた麦飯が、もちっとした食感と奥深い甘みをブレンドする。
何かひとつの喜劇を見ているかのような口いっぱいに広がるストーリー。
それぞれが主役級なのに、牛舌に主演を演じてもらうために、ルーと麦飯が見事に助演を演じきる。
オスカレー賞を上げるとすると、主演男優賞が牛舌で助演男優賞がルー、助演女優賞が麦飯というところか。
しかし、ここに1つのパラドックスが生じる。
それは、このお店はあくまでも牛舌が主演であり、他の食材は牛舌を際立たせるための1引き立て役でしかないこと。
だから、このお店ではカレーすら脇役ということになってしまう。
ここまで感動をもらったのだが、カレーだけでみると、評価点は10点満点中の8点だった。
これはカレー部員全員の意見だった。
部員全員でカレーに対する評価をつけ終わった頃、オーナーがおまけの品としてパインを持ってきてくれた。
「カレー美味しかったです。」と私が言うと、オーナーは恥ずかしそうに「有難うございます。」と答えた。
「カレー、食べた後、甘みが残ったんですが、何が入ってるんですか?」と尋ねると、
「スパイスに拘っているんですが、実は1つ隠し味で入れているものがあるんです。何だと思われますか?」とオーナーは控えめに、でも子供のようにいたずらっぽく尋ねてきた。
カレー部員それぞれがいろいろ答えを出したが、当たらず。
オーナーに答えを求めると、「本当は企業秘密にしたいんですけどね、この間一人のお客さんに見事に言い当てられちゃいましたから、答え教えちゃいますね。実は梅干しの汁が入っているんです。」
一同びっくり。予想だにしない答えだった。そして、牛舌専門店にも関わらず、カレーのスパイスや具材に拘るオーナーのあくなき探究心に感動した。このお話を聞いた後なら、10点付けたいです笑。
最後に、
お店には申し訳ないが、ここで牛舌を食べると、当分の間、牛舌を食べなくても良いと思ってしまう。胃の腑にジワーっとしみる旨みの余韻と、胸にジーンと広がる感激はなかなか消えやしない。
いや、むしろ舌に、鼻に、脳に深く刻まれる。だから中途半端な牛舌を食べるくらいなら、この余韻でしばらく白御飯を食べる方が幸せなのだ。
牛舌専門店の看板に恥じない牛舌店「牡舌亭」。
そこには、オーナーが牛舌とひたむきに向き合う真摯さがあった。
皆さんも是非一度足を運んでみられては。
saito
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