陛下の友達が放射能に汚染された世界を歩いている。放射能が霧のように立ち込め視界は悪い。そしてまだ旧センター街を歩いているのに、誰にも出会わなかった。まだ、人間の死体が転がっているのなら地獄絵図のようだったといえるのだが、放射能に汚染された街に人の姿は無く、もう900年以上前に人が死んだあとに、ここには人は住んでいない。もう人の死体も自然に帰ったのだろう。
「何者だ。ずっと、俺をつけているな。」
陛下の友達の足が止まる。すると街のビル影から宇宙服のようなものを着た、人間らしき者が4体現れる。
「我々は日本国の警備隊だ。」
日本国警備隊。日本国は放射能を除去しようと研究をしているが、そう簡単には進まなかった。一方で放射能汚染防止シールドの外の世界を調査するために、放射能に感染しない服を開発した。警備隊の役目は、放射能に汚染された準日本領土の調査を主な業務に七ている。
「おまえ、どうして、放射能に汚染されている、この世界で防護服も着ないで生きていける!?」
警備隊の隊員の隊長らしき物が訪ねる。
「こいつ、今、噂になっている化け物ですよ!?」
他の隊員が恐怖に吞まれながら慌てた様子で化け物と言う。
「レディエーションヒューマンか!?」
隊長は日本国の陛下に会ってきた、陛下の友達のことをレディエーションヒューマン、放射能人間と呼んだ。
 西暦3000年の日本国では、人間の呼び方も段階を設けていた。男と女が愛し合い生み出す純粋な日本人のことを純日本人。これは一部の貴族だけに許された権利である。食料調整・人口管理・人類の存続のために遺伝子操作され生み出される補助のための日本人を補日本人。そして放射能に汚染された人間をレディエーションヒューマンと言い、放射能人間と呼ぶ。
 レディエーションヒューマンは本来なら人間が生きていけない放射能に汚染された世界で生きることができる突然変異の生命体とされ、放射能に汚染されていない世界の人間は、放射能人間を人間として認めなかった。
「答えろ! おまえはレディエーションヒューマンなのか!?」
警備隊は恐怖に震える体で、職務だからと陛下の友達に詰め寄る。警備隊の隊員の中には、レディエーションヒューマンを捕まえて、人類の発展、手柄を立てて、死の世界の調査という実務から逃れて、デスクワークの内勤に回りたい者も多かった。
「逃げろ。」
陛下の友達は警備隊に向かって言った。
「はあ!? 逃げろだと!?」
警備隊の隊員は質問の答えでもない予想外の返事に戸惑った。中には自分たちの質問に答えない目の前のレディエーションヒューマンに怒りを感じる隊員もいた。
「死にたくなければ、逃げろ。」
陛下の友達は頭の悪そうな警備隊の隊員に言葉をつけたして言った。
「なんだと!? 俺たちを殺そうって言うのか!? ふざけるな!?」
警備隊の隊員の緊張感は最高潮に達していた。命を大切にしろという忠告も聞く耳を持たないくらいに。放射能空間で人間は平静を保てない。何かあれば死ぬという恐怖と隣り合わせである。
「もう手遅れだ。」
陛下の友達は、警備隊の隊員に向かって呟いた。
「ギャア!?」
警備隊の隊員の胸を何らかの手と思われるものが貫いている。胸から拳のようなものが隊員の血を流しながら飛び出ている。警備隊の隊員は何が起こったのかも分からないまま目を見開いたまま口から血を流し死んでいる。
「なんだ!?」
警備隊の隊員たちは、1人の隊員が何者かの手らしきものに胸を貫かれ血を流し死んでいるのを見つめる。その光景は自分が死んでしまうよりも恐ろしい光景だった。
「死んでる!?」
警備隊の隊員達が何が起こったのかと確認するために後ろを振り返る。
「!?」
その瞬間、もう1人の警備隊の隊員の首が跳ね飛ばされた。周囲や他の隊員の顔にその返り血がつく。これで警備隊の隊員の死者は2人目だ。残された警備隊の隊長と隊員は何が起こっているのか分からなかった。
「な、なんだ!? こいつらは!?」
ただ分かっていることは、自分たちは死ぬということだけだった。警備隊の隊員を2人も殺したのは人間でもなく、容姿は化け物のような、獣のような姿をしている二足歩行の生物だった。それが3人・・・ではなく、3体いる。
「レディオアクティビティクリーチャだ。」
陛下の友達は、恐怖で足が竦み、前身が震えて動くことができないが生き残っている警備隊の隊長と隊員にレディオアクティビティクリーチャ、地球の、世界の、人間の放射能汚染により突然変異で生み出された放射能生命体である。
「レディオアクティビ・・・なんだ!? それ!?」
隊員はパニックに陥っていた。自分の知識で理解できないことに出会うと脳みそが情報を処理できないでいる。
「レディオアクティビティクリーチャ、放射能生命体だ。」
陛下の友達は平然と答える。まるで、この化け物たちを知っているかのように。
「放射能生命体!?」
隊長は黙って何か助かる策はないかと模索しているが、隊員はもう生きた心地はしなかった。少しでも恐怖を紛らわせようとよくしゃべった。
「この化け物は、おまえが命令して動かしているのか?」
警備隊長は冷静に状況を分析して、1つの可能性にたどり着く。この化け物たちを操っているのは、この目の前の怪しい男なのではないかと。この男は放射能に汚染された世界で防護服も着ないで平然と普通に生活しているのだ。この男が放射能生命体と呼ばれる化け物を操っていても、なんの不思議もない。
「外れだ。こいつらはレディオアクティビティクリーチャ、タイプ、ゴブリン。放射能に汚染された世界で、突然変異で生まれたと考えられる。元が人間なのか、犬なのかは分からない。」
陛下の友達は目の前の放射能生命体のゴブリンのような化け物の正体を人間、若しくは犬だと言った。
「に、人間だというのか!? これが人間・・・。」
警備隊の隊長は化け物の正体が人間だと聞いて、衝撃を受け言葉を失う。人間とはもっときれいな生き物のことを指し、目の前の怪物は、とても人間には見えなかった。
「も、もう嫌だ!? 死にたくない!? うわあああ!?」
警備隊の隊員が現実に耐えられなくなり発狂した。しかし、その行為はレディオアクティビティクリーチャたちの野生を刺激してしまう。
「ギャア!?」
気が狂い大声を出して狂いだした隊員がレディオアクティビティクリーチャを怒らせた。敵意を感じたのだろうかレディオアクティビティクリーチャは隊員に鋭い爪で攻撃を仕掛ける。
「危ない!? ギャア!?」
レディオアクティビティクリーチャの爪に隊員が引っかかれそうになった時に警備隊の隊長が身を挺して隊員の救おうと飛び出す。隊長は鋭い爪に引っかかれて致命傷を負う。
「!? 隊長!? 隊長!?」
隊員の目の前で今度は体長が殺された。これで隊員は自分で人間が殺されるところを3人も見てしまう。しかも隊長は自分をかばってだ。隊員が隊長の体を抱きかかえ隊長に懸命に呼びかける。
「お・・・おまえだけでも・・・守れて・・・良かった。」
隊長は隊員に最後の言葉を投げ掛ける。隊長として、先に2人の隊員は失ったが、最後の1人は体長として守れて安堵している。
「隊長!? どうして自分なんかをかばって!?」
隊員は隊長に守ってもらったが、自分なんかを助けても、どうせ直ぐに化け物に殺されて死ぬのに、隊長に対して申し訳ないとしか心で思えなかった。
「た、隊長だからな・・・。」
そういうと隊長は首と手をぐたっとさせ息を引き取った。隊長は最後に助けた隊員の腕の中で安らかそうに眠りに着いた。
「隊長!?」
悲しみに囚われた隊員は、またしても過ちを犯してしまう。隊長の死に感情的に大声で隊長と叫んでしまう。
「ガルル。」
この隊員の行為は目の前のレディオアクティビティクリーチャを刺激し、若しくは周囲に他のレディオアクティビティクリーチャを呼び寄せてしまうだろう。
「隊長!?」
隊員は放射能防護服のヘルメットマスクの中は涙が溢れていた。悲しくて、悲し過ぎて、これから自分が殺されることも考える余裕がなかった。
「おい、おまえ。」
陛下の友達は生きている最後の隊員に声をかける。
「た、隊長!?」
隊員は声をかけられても、声が聞こえていないのか、もう死ぬからと聞き流しているのか分からないが反応はしなかった。
「おまえは死んだ人間のために、生きようとは思わないのか?」
返事はなかったが、陛下の友達は続けて言葉を投げ掛ける。今度の言葉は泣くしかできない隊員には棘があり反応した。
「俺なんかが生きてどうなる!? 俺なんか死んだ方がいいんだ!? 俺なんか・・・、俺なんか・・・。」
最初はすごい勢いで言い返した隊員だったが、自分への自信の無さから声がどんどん小さくなっていった。誰かのために生きるというよりは、自分なんかが生き残って申し訳ないという気持ちに近いのだろう。
「合格だ。」
陛下の友達は泣き崩れ、生きる気力も無い隊員が気に入った。
「え?」
隊員は何が合格なのか意味が分からなかった。
「おまえを助けてやろう。」
陛下の友達は、隊員とレディオアクティビティクリーチャの間に入る。
「やめろ!? おまえも殺されるぞ!? 逃げろ!? 逃げるんだ!?」
隊員は、もう他の誰かに隊長のように自分なんかを助けるために死んでほしくはなかった。
「ガルル!」
レディオアクティビティクリーチャ・タイプ・ゴブリンの3体は、陛下の友達に狙いを定め獲物を狩ろうと襲い飛び掛かる。
「水帝。」
陛下の友達が話すと1体の放射能生命体は水に包まれ、そのまま圧縮されて水滴となって破壊され辺りに飛び散った。
「ガルル!」
1体のレディオアクティビティクリーチャが鋭い爪で陛下の友達を引っかこうと攻撃してきて、体を切り裂いたかに見えた。
「なんだ!? 体が水になっている!?」
隊員は驚いた。陛下の友達は化け物に体を引っかかれ、確実に殺されたと思われた。しかし、体は水のようになり、レディオアクティビティクリーチャの鋭い爪は水のようになった体を引っかいただけだった。
「ガルル!?」
今度はレディオアクティビティクリーチャたちが、何が起きているのかが分からなかった。ただ理解していることは、自分たちの仲間が1体、倒されたということだけである。レディオアクティビティクリーチャに考える脳があるのか、野生の本能だけで動いているのかは分からないが、得体の知れない敵に恐怖に似た違和感を感じているのは分かった。
「ガルルガルル。」
1体のレディオアクティビティクリーチャが逃げ出した。あとを追うようにもう1体のレディオアクティビティクリーチャも逃げ出した。陛下の友達も隊員も殺されずに生き残ることができたのだった。
「なんなんだ!? なんなんだ!? おまえは!?」
隊員は生き残ったことよりも、化け物から助けてもらったことよりも、その力があれば隊長たちは死なずに済んだかもしれないということよりも、敵を水に閉じ込めたり、水を圧縮して粉々にしたり、攻撃されても体を水にして攻撃を回避した目の前の男に関心があった。
「俺はレディエーションヒューマンだ。」
陛下の友達は自分のことを放射能人間だと言う。放射能人間とは、日本国には入ることが許されない異質な存在。目撃情報も少なく、いるかいないか噂される存在である。レディエーションヒューマンは死の世界と言われる放射能汚染地帯でも生きていけるといわれている。
「ほ、本当にいたんだ!? レディエーションヒューマン!?」
隊員は初めて放射能人間を見た。隊員は人類滅亡を阻止するための人工的な補完人間だったが、純人間以外の人間を見たのは初めてだった。
 これが日本国の一条陛下のお友達の飛鳥と呼ばれるレディエーションヒューマンとの警備隊の氏家隊員との出会いであった。

つづく。