※この記事は2025/10/12(日)に開催した第42回交流会におけるあいち小児保健医療総合センター小児外科の毛利先生のご講演を参考に作成しました

良い排泄は水分や電解質バランス、良い腸内細菌を保ち、食欲やすっきりした良い気持ち、外出のしやすさなどにつながり、QOL(※1)を向上させます。この排泄は、
- 小腸が水分とほとんどの栄養を吸収し、大腸(結腸)が良い硬さのウンチを作る
- 胃に飲食物が入ったことで隣にある大腸が刺激されて腸が蠕動(ぜんどう)を始めて内容物を肛門側に送る(※2)
- ウンチが直腸に移動することで直腸が刺激されて(※3)排便スイッチが入り、肛門がゆるむ
ことで起こりますが、短腸症候群の患者はこの1.で小腸が短いか、機能していないためにやわらかい(水っぽい)ウンチになり、小腸だけでなく大腸まで切除している(回盲弁なし)と2.が起こりにくくなってまとまった排泄をしにくくなり、ヒルシュスプルング病や類縁疾患の患者は腸が蠕動するための神経に問題があるために2.の内容物を肛門側に送ることがうまくできなくて便秘になったり、うっ滞(うったい)を起こしたりします。
このため、良い排泄を目指すとしても短腸症候群やヒルシュスプルング病など腸管不全の患者には難しいところもあるので、遠回りに思えても小さな改善を少しずつ積み重ねて、少し不便でもコントロール可能な、その患者にとってのQOLの高い排泄を目指すことが重要です。
なお、うっ滞はヒルシュスプルング病や類縁疾患以外の短腸症候群の患者でも起こります。切除によって短くなった腸は切除された腸の分まで働こうとしてシワが深く(絨毛(じゅうもう)が長く)なったり、長く太くなったりします(※4)が、太くなりすぎると蠕動で内容物を肛門側に送ることが難しくなってうっ滞を起こします。
うっ滞が起きると腸管内の細菌が増殖して腸炎になったり、水分や栄養を十分吸収できなくなったりします。逆に、うっ滞を改善できると、吸収が良くなって下痢や栄養状態が改善したり、細菌が減少して腸炎を予防や改善したりできます。
このうっ滞を予防や改善する対策としては、
- チューブを使って減圧する
- 制酸剤を飲んで消化液を減らす
- 睡眠、栄養、運動を改善したり、良い菌や水様性食物繊維を取り入れたり、抗菌剤を使い過ぎないようにしたりすることで腸内環境を改善する
などがあります。
最後に、飲んだ薬やウンチの状態や量、排泄した時刻やそのときの症状などを記録した排便日誌(※5)や排便記録をつけることで良かったことや悪かったことを振り返りやすくなって、排泄の改善につなげやすくなります。小さな改善を少しずつ積み重ねて良い排泄を目指しましょう。
(文:高橋(正))
※1:QOLは「Quality of Life(クオリティ・オブ・ライフ)」の頭文字を並べた略語で「生活の質」という意味です
※2:胃結腸反射(いけっちょうはんしゃ)
※3:直腸壁伸展刺激(ちょくちょうへきしんてんしげき)
※4:適応(てきおう)
※5:「排便日誌」とキーワード検索すると何種類も見つかるので、お好みのものをダウンロードして使ってみてください