智恵子は東京に空が無いという ほんとうの空を見たいという
私は驚いて空を見る
桜若葉の間に在るのは 切っても切れない むかしなじみのきれいな空だ
どんよりけむる地平のぼかしは うすもも色の朝のしめりだ
智恵子は遠くを見ながらいう
阿多多羅山の山の上に 毎日出ている青い空が 智恵子のほんとうの空だという
あどけない空の話である
―『智恵子抄』より
座長がことばをつづると、何故涙が出るのだろう
わたしは、あそこに行きつくことができるのだろうか
本番、最後までうたを届けることができるのかな
泣かずに、奏でることができるのかな
偽善ではない
ほんとうの空が 福島に、ほんとうの空が返ってくることを
心から祈りながら
私たちはことばをつむぐことしかできないのだ