はじめての方はこちらからどうぞ キノコ





 佐伯君と連絡を取り合うようになって一か月が経った。

 時々会ったりするようにもなったんだ。


 わたしらしくないけど・・・聞きたいことがどうしても聞き出せないでいた。


 

 佐伯君はわたしと違ってとても頭がいいの。さつきちゃんも言っていた。

 期末テスト前に一緒に図書館で勉強したりもした。わたしってば、仲良くなる人に必ず勉強教えてもらってるよね・・・情けないです。

 

 でも、毎日メールしてても時々会ってお話したりしても全然距離が縮まらないような気がして不安になっちゃった。

 この間堪らず学校帰りに会う約束をしていた日があって、無理を言ってしおりに会ってもらった。

 後日、しおりに佐伯君のこときいたら「いいんじゃない?お似合いだよ」って。

 正直、佐伯君に会って嫌な印象を受ける人っていないと思う。

 優しくて穏やかで、真面目で。でもお話するととてもおもしろい人。魅力的な人。

 でも、何を考えているのかわからない人でもある。


 もうすぐクリスマスだよ。

 焦ったって仕方ないけど、焦りたくもなるよね?一緒に過ごすことできるのかな。


 だから気になるよ。

 再会した日、さつきちゃんと一緒に佐伯君の高校の最寄りの駅まで会いに行った日。

 一緒に歩いていたキレイな女の子は誰?



 私わたしと佐伯君が学校帰りに会う日は決まって駅前。

 わたしの高校の最寄りの駅は佐伯君の自宅の通り道だから途中下車してくれる。

 学校帰りに会うのは今日で3回目。休みの日に会ったのは図書館に行った1回だけ。少ないのかな。

 でもメールを毎日しているからあまりそんな気はしないんだ。

 電車通学のさつきちゃんと一緒に駅まで向かって改札で手を振ってさつきちゃんを見送る。

 さつきちゃんは今から塾。佐伯君も塾に通っている。みんな進路のことを考え出す時期で、それなのにわたしは他のことばかりに夢中で・・・でも今は、進路のこととか考えられないよ。


 電車が到着して改札からたくさんの人が出てくる。佐伯君の姿を探していたら、佐伯君から「今から電車に乗るからあと5分くらい待って」というメールが届いてちょっぴり肩を落とす。

 人の波に邪魔にならない場所に立って「わかったよ」という返信メールを作っていたら誰かがわたしの前に立った。

 顔をあげるとそこには、無言でわたしをまっすぐ見つめるお人形さんのように目鼻立ちの整った女の子がいた。

 その瞳に見つめられてわたしの瞳も彼女の瞳をじっととらえてしまった。

 彼女の白い肌によく生える薄い赤色の唇が小さく開き「こんにちわ」と言った。


 一度会っただけなのに。

 この子だ。あの日、佐伯君と一緒に歩いていた女の子。


「こ、こんにちわ・・・」

「私のこと覚えてる?」

「はい・・・」

「そう」


 無表情。そして無愛想。それが彼女の第一印象。

 でもその印象は一瞬でくつがえる。

 急に、キレイな顔をくずしてにっこりほほ笑むと「今からデートなの?」と聞かれ、返事に困って「えっと・・・」とはっきりした返事ができないでいると


「私も良哉のこと好きなんだぁ。私たち、ライバルだね」

「 ・ ・ ・ は?」


 あっけらかんとスゴイことを言われた。そして無邪気に「じゃぁね」と手を振って去って行ってしまった。

 え・・・?え?なぁに、今の。キレイだけど・・・変な子。ていうか、今宣戦布告されたの?

 立ち去る彼女の背中を目で追いながらプチパニック状態になるわたし。



 また改札からたくさんの人が流れてきて、佐伯君と合流したけど彼女の言葉が頭から離れない。


「どうしたの?なんか今日静かだね?」


 喫茶店でコーヒーのカップを手に取ると佐伯君が口を開いた。


「うん ・ ・ ・ ちょっと ・ ・ ・ 」


 さっき佐伯君と同じ高校に通う子に宣戦布告されました、とは言えないよね。


「どうしたの?悩んでることがあるなら聞くけど」


 心配そうな顔で見つめられる。「たいしたことじゃないよ」と言いながらも嘘がすべて顔に出るわたしはの嘘は、出会って間もない佐伯君にさえ簡単に見破られてしまう。

 聞いちゃおうかな。ドキドキと音を立てる心臓に手をあてて大きく息をすって決心したかのように口を開いた。


「佐伯君!」

「は?はい?」


 しまった、テンション間違えた?声、裏返ってるし。


「あの ・ ・ ・ 」

「 ・ ・ ・ ?」

「その ・ ・ ・ 」

「うん、どうしたの?」


 出だしの勢いは一瞬で消え、急に静かになるわたし。

 こんなんだから昔から表情がよく変わるとか喜怒哀楽が激しいとか言われたっけ・・・。


「この間、一緒に歩いてた女の子 ・ ・ ・ お、お友達?」

「この間?」


 無言で首を縦に振ると佐伯君はちょっとの間黙って「あぁ」と思いだしたかのように微笑んだ。


「あの子はクラスメイトだよ」

「彼女なの?」

「 ・ ・ ・ は?」


 あっけにとられた様子の佐伯君。

 突拍子のないことを言い出すのはわたしの得意技。


「違うけど ・ ・ ・ ?」

「ほ、ほんとに!?」

「う、うん ・ ・ ・ 」

「よかったぁ ・ ・ ・ 」


 また声が大きくなってしまった。

 体、乗り出してるし。

 佐伯君が堪らず大笑いしだしたけどわたしは笑えなかった。

 彼女じゃないってことはわかったけど、佐伯君のこと好きな子はわたしだけじゃないんだもん。あの子の言ったことが本当かはわからないけど。


「小松さん、おもしろいよね」


 この笑顔。わたしのこと「おもしろいよね」と言って笑いかけてくれる顔が男の子に対してこの表現間違ってるかもしれないけど本当に可愛くて。

 わたし今きっと顔赤いよ。


 1時間くらいおしゃべりして喫茶店を出る。

 外に出るとひんやりとした風が頬をなでて白い息が日が傾きかけた空に広がった。


 でも・・・「彼女じゃない」って聞いて安心して浮かれていた自分をひどく後悔するのは、今日から数日後のことだった。




----------------- BACK 第七十四話 / 第七十六話 NEXT ------------------  





サイの小説部屋
ネット小説の人気投票です。投票していただけると励みになります。(週1回)


↑こちらにも参加してます★↓気に入ったらで結構です、クリックしてみてください^^