あかぼんぼ 第2話   のぞ鬼 4


 その日、シュンは学校へは行かず、あのお化け屋敷にいたのだった。学校に行ったら間に合わなくなると考えたからだ。
  外で障子紙を大きさを合わせて切ると、のりを持って裏口にまわる。
  扉を開くと、なま暖かい風が吹いてきた。足が震えるシュン。恐怖とリョウタを助けたい気持ちが葛藤している。シュンはわき目もふらずにやぶれた障子のある方へと走っていく。一番奥の部屋で廊下がとても長く感じる。
  ようやくついたその部屋は、天井が崩れ、重い空気に包まれていた。やぶれた障子から外の光がはいっている。急いでのりを障子につけ始める。
「何をしているんだ」やぶれた障子の穴にのぞ鬼のリョウタが現れた。驚いて、シュ君は のりを落としてしまった。
そして「やめろー」拾おうとした手をつかまれる。今度は隣にのぞ鬼があらわれたのだ。伸びた目玉だらけのカンガルーのしっぽのような腕に締め付けられる。ぎりぎりと強い力だ。全身目玉だらけの怪物。
  このままではのぞ鬼にやられてしまう。シュンの体を絶望感がはしる。その時、ポケットからあの赤い石が落ちてわれた。すると、大きな赤ちゃんの泣き声が響きわたりました。
  オギャー、オギャー、オギャー
  オギャー、オギャー、オギャー
  のぞ鬼はたまらず、両手で耳を押さえて転げまわる。そのスキにのりを拾いつけ  て、とうとう紙で穴をふさぐことができたシュン。
「おのれー」と叫びながら、のぞ鬼は爆発して消えていった。
  安心がシュンの体に疲れを蘇らせる。よろよろとしか歩けない。重々しく外に出ると、道路にボーっと立っているリョウタがいた。そこはリョウタが昨日消えた場所だった。

  ありがとうあかぼんぼ、助けてくれて。シュンがつぶやいた。
  その頃、二年一組では大騒ぎになっていた。授業中に突然リョウタ君が消えたからだった。

  のぞき見をする人がいる。きっとのぞ鬼だ。のぞきながら人間の体を乗っ取り、だんだん増えていく。のぞいている人を見たら、誰かに知らせよう。もし、君があかぼんぼの友達だったら心配はいらないだろうが・・・