【1981.4.13 夢】 家路

 この風景はいつも見る夢だった。

 僕は家を目指して歩いている。
 夏の空気は乾いていて、砂埃は容赦なく視界を遮る。唯一の救いはさほど暑くなかったことくらい。金がないので乗り物にも乗れない。自転車を盗むほど落ちぶれたくもない。
 街中に入るとあちらこちらに地下道の入り口。それがまた山形らしい。よろめいて、ガードレールに寄りかかると、目の前に大きな川が現れた。ふと、そうだったと思った。
 その川にはボロボロの橋が架かっていた。それと並行に水道橋がかかっていた。こっちの方が安心ができたので、バランスを取りながら、そちらを歩いた。
 小さな商店街を抜けると、近所の家並みが見えてきた。家は近い。と、思った時だった。僕はスタート地点にいる。また、歩くのかぁ。僕は疲れてへたり込んだ。でも、歩かなければ家には着かない。安らぎが待っている。