アッツ・ジー・ボム・ジーンまたは厚木凡人そして踊るあなたと踊り見るあなたによせる四つの断章(スパーク)  伏久田喬行・ザ・パンフレットⅢから

 

 

 

☆辞書を片手に、もう一方には、やはりヴェールを用意して?ディクショなり、表紙には、何色を選ぼうか。(言わずもがなのまっ赤っ赤?)麻布(あさぬの)、青山(せいざん)六本木(りくほんぼく)

 

読みかけの、ページには、極く極く細い導火線

 

辞書を片手に、もう一方には、ちとえば傘を用意して?アンブレら、落下傘、雲間も見えぬ宵のくち、雨ひとしきり墜つ……。

(大空には、厚き凡<BOM>)

ヒトの姿も、はや影、影となりゆきて、辞書を片手に、もう一方には必ず特注レンズを用意して?

 

をどり見る、あなたにささやく(二~三の秘密)

麻布(あさぬの)、青山(せいざん)六本木(りくほんぼく)ーー1977年9月9日--世界は、その時恋愛せよ。

 

 

 

震える蝶々(てふてふ)の、飛翔の法則を、だれが計測しえただろうかーー?ふるえるトンボーの飛翔の自在に、だれが眼をみはっただろうかーー?

UFOと、叫ぶも愚か、愚か、大航路ありーースペースの、窓また窓、あなたのそば、や、わたしのそば、大気に数知りない扉がたたみ込まれており、きらめく星座や波うち際や息つくきわ、に、たしかな静寂の気配を誘い、誘い……。

渦巻く雲海、渦巻く入江、渦巻く呼吸に渦巻く旋毛(つむじ)

にもかかわらーず、依然、廻転するジドウリッちゃんめ!むしろ独楽せよ、自動者、輪、に自転者、輪。

おお、むしろ独楽せよ、自動筆記に自動催眠、自動選択機に自動頭洗い機、自動飛行機に自動思考器に自動恋愛器(やや?!オオゴン?)

おおおー、そしてみごとにn律背反を連想する、このトランス、頭脳というやつの、ありかを証してみよ合理屋さん。

おおおおー、ひとねじふたねじ分解ずきの、ゼンマイ修理学?!

汽笛ー声夜のトレイン、大脱線の安らぎからこそブヨウは自由に復権しなければならなかった。

鏡よカガミ、この世でいちばん美しいものはなあに?それはーー、

ただひたすらの吃音・絶句(しーん)

 

 

☆一九七七、九・九、ユニ、イク、バーレイ、シア、トゥール、壁、そして床、に暗転(まっくろけ)

ディスタンスーー無量の意識をただなぞっている。

ディス・ターンズーーさてさて律動する交感、「一者」との?

ディーズ・ダンシイズーー夢はただ自在様に拡がっており、

ザ・ディ・イズ・ダーンーーそして「影」(イデア)はその日から、傷持つ半身にかぶってくるだろう。

だがしかし、この、優しい人の憂いをみよ、この、愛し、そこなった人々の憂いのかずかずをみよ、疑いぶかく、選択する、眼線のかずかず、不思議な、というより形容のない「光」を底知れずたたえた両の水晶球、の、いかにも多様にすぎる現象や走行を邪悪な風と、退けてはならない。

発熱する惑い、頭脳にはいまや微妙な眼線の間隔をぬって、ひらかれた「恋」の瞬間を、十分に感じとる毛髪や皮肌のエネルギーが加えられねばならないのだ。

ーー存在はある日、忽然と、不意の角度からやってくる……そのとき、すでに、全身は眼(まなこ)である。

 

 

☆踊れ踊れ、やあ、ガーティ!訪れる汎世界への跳梁に、落ちよ墜ちよ意識から、自身の重みを重みとして発熱する軋り音、オーンと呪えりや西遊記(さあいこう)、自在の変幻を身体の亀裂と傾斜に沿って乗せ、飛べ飛べ、スッカイ青空、心地よい、エントロビーにエントロ・ベアー、微塵に魅かれていく大ビーイングーー

(海辺には、ただ潮騒ーー)

住めば鎌倉カンマクル、おお、カム・ア・クーラー、大コンディショナー、春夏秋冬全季節、いつの日からか形象の喪失に流れゆくひとすじの冷汗ーー

カム・ア・クール、そうして、凡(ボーン)~&凡(ボーン)、いつの日からそそり立つ

精神の音楽(おとがく)劇ーー

栃の木(マロニエ)から泉しょうしょう(ハッピー・ジャーニィ・オーレィ!1934611)生誕の一瞬から軋む身体には、地中の海に天上の海、に意識下の海と結ぶ存在の剥離自在、緞子(ダンス)に緞子(ダンス)、厚き観念の野ヘザーッ、針、Ich(イッヒ)、戒(かい)、戸(と)ーー

さても戒めの肉体、炎の乱舞、痛みの角度から、アン・ドゥ・トロア・アンド・トゥルーにドット・ロー、アンド・ロウーー

日はなされ、日は変わり、日は旋回(ターン)するだろう。この踊りという営為の彼方には、無限に夢幻の、距離、旅程ーー

さて

暗黒にスパークせよ頭脳、パンダグラーフ!

熱望する「影」(イデア)の絵柄は星空に変転し、変転し、

そう、世界はそのとき恋愛する

(1977・9・27)

 

(本篇は、厚木凡人氏が、彼のダンスを支持するオランダの批評家の要請にもとずき彼の資料の一部として提出するために、9月2日に執筆依頼があり、かねてよりかぶさっていた想念を、400字詰め原稿用紙5枚程度という枠の中で、主に新作「DISTANCE」を手がかりに現像・定着化されたものです。なお、本篇は英訳されます。)

 

 

 

この詩篇は、ザ・パンフレット3号に掲載されたものです。上の注釈は、伏久田本人が書いたもので、そもそもこれは厚木氏が実際に踊っている映像の上に、夫がタイピングしたビラ形式のものになっており、詩と映像のコラージュみたいな作品です。私が、技術上の問題でその詩篇だけ掲載しているので、ちょっとニュアンスが違ってしまっているかもしれません。

 

厚木凡人氏は舞踏家で振付師。ポスト・モダンダンスの第一人者と言われた人物で、夫は美術手帳「インタヴュー作家論」が初めてお会いしたようです。