予後詩篇(立詩彗星伝のうち) パートナー 伏久田喬行

 

 

パートナー

光り輝くアイ色のそら

屈折反射望遠鏡をのぞくのに

パートナー

影は伸びすぎて三重奏の

山獄にとどく

乱世に乱視の

パートナー

散りそぶる風景吸引譚

眼(まなこ)を伏せておどろくのに

パートナー

この夕べ

草木は息をつくだろう

 

 

大川にふりそそぐ

雨なつかしく

あの宿この宿

さんざめく行列をすごして

落ちた木の葉のひとひら

観察の手控えに

パートナー

 

 

不意に来たれふいごの炎

(気体に液体固体に合わせ)

火づくりに

錬金の

パートナー

変幻多様に

声あたたまる

エキ・ストーラ・パートナー

空中に 海 輝き 浮かぶ

ボートの上の無限時間

パートナー

(1975/11/6)

 

 

この短詩も、1976年11月10日の「ザ・パンフレット」-1号に掲載されたもの。予後詩篇とされているものの、立詩彗星伝にカウントされるよう…。

 

この詩において、夫の心のすぐそばに在るものが列挙されているようで、いつになくトーンが安らぎモード。

 

そういえば、夫は幼いころ、視神経に炎症を起こし失明寸前になりかけたことがあると言っていた。それゆえ眼鏡には、近視用でも乱視適応するグラスを作らなければならなかった。しかし、それも夫のパートナー…。数少ない憧憬に、つかの間の夫の幸福のカケラが輝く…しかし、それも瞬きに近い安らぎ…だったかも…。