フォトアレンジ  音木六花

 
 

老年期




青春のハープを

自在にかき鳴らしていた

若い指は

時とともに朽ち


彼女が

やっと

欲心を飲みこんだ頃

硬直した指の間に

物憂い冬の気配が

行ききする
   

       

          
変容の霧が

彼女の魂の裾野に

漂いはじめ

時間の女神が

真の姿を現せば



地にあえぎ

悶えつつ 

彼女は

変容こそ神の試み…

その入り口だと気づく



 それでも

夜を走る鬼火の

瞬時の火柱は

思い出の河に沿って

秘かに漂っている

 

 

 

もしも

心というものの

その残滓があったなら

手のひらから

それを放擲できないとすれば

すべてを

流せないまま…

何ものかを抱えて…

神が用意した入り口の

その重厚な扉を

叩くことができるだろうか…

 

 

 

 

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