見知らぬ水音

 

ポシャーン

水音がなった

それは

現実にしては

透きとおりすぎる音で

どこか

別の空間からの

香りまでひきづっていた

 

 

 

水音は

耳に密着して

妙な緊張感を造っていた

よく考えれば

それは

現実には出会えない音だった

現実には鳴らない音だった

 

 

 

それは

湖の深くからか

潮騒のように荘厳に

荒ぶる音とか…

神秘とともに…

立ち上がってくる音だった

 

 

 

私は

躊躇しながら

部屋をのぞいた

誰もいなかった

ならば

音は

どこから聞えたのか

 

 

 

しびれるような

静寂が

床に沈みこんで

私を

溶かしてしまいそうだった

あの音は

どこからやってきたのか?

 

 

 

なのに

どこかで記憶していた

ひややかで

暖かい

その音

 

 

 

もしかしたら

あれは

羊水の音?

生まれてこられなかった命の

はじける音?

哀しい涙のしずく?

 

 

宇宙空間からかき鳴らされる

誕生の音?

それとも

この世を立ち去っていく

見送りの音?

それとも

誰かが

迎えにきた気配の音か

 

 

 

水晶を鳴らすような

透き通りながら

重々しく

地底からの声と

天井の声が

共鳴しあって

 

 

 

命の波動が

鳴っている?

命の波動が

恨んでいる?

 

 

 

私の

未知に

水音と

そして

しじまが重なる

 

 

 

私の今

過去

そして未来

ピッシューン!

また

水音が鳴る

 

 

 

この世に届かない

透き通った空間をたどりよせて

あなたは

天空の迷路を

歩いている

誰なの?

 

 

 

かの国の

水を引っ張りながら

迎えに来てくれた

あなたは…

わたしの

命の片割れか…

それとも

見知らぬ怨念か?

 

 

 

命の門が

迎えにきている

そして

私の前に立っている

……のか?

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~