わたしは 特に絵に造詣が深い とかではない。


いや、まったくの素人だ。


だからわたしの好きな岡本太郎もゴッホも、なにが好きかといえば


その“人”なのだ。


その強烈な個性と生き方に惹かれるのだ。



そんなわたしが1枚だけ 本気で欲しいと思った絵がある。


片岡珠子の「赤富士」だ


自慢じゃないが 門外漢なので、その評判さえ知らなかった。


たまたま入った画廊に その絵はあった。


大きなサイズの絵が居並ぶ中に それは見落とされそうな小ささで、なんでもなさそうに展示されていた



が、それでもそれはわたしの目の中に、目を通して心の中に 飛び込んできた


いきなり心を鷲掴みにされた


「この絵、欲しい!」と思った。


凝視するわたしに気づいて画廊の人が寄ってきて 「富士山は片岡珠子ですよね」と話しかけてきた


(そうなんだ・・・)と思う わたし


「朝起きたときにこの絵があったら、元気出ますよ。」と言う。


そりゃぁ、そうだろう!この絵、エネルギーに満ち溢れている。


しかも、押し付けがましくない!



画廊の人、わたしに購入を勧めるが、わたしだって欲しいよ!


ただ、ただ、、、いかんせん高い!わたしの手の届く値段ではない。


もし、そんなお金があったら、わたしはまず必要不可欠な楽器を買うよ。


それすら買えないのに、、、、、、、、、、、。



泣く泣く店を出た。 後ろ髪をひかれるとはこのことだ。



片岡珠子は、前にTVでのインタビューに答えているのを見たことがある。


とっても穏やかなまあるいおばあちゃんだった。


その様子からは あのエネルギッシュな絵は想像できない。



わたしもできれば片岡珠子みたいになりたい。


穏やかでやさしくてまあるくて。 でもその作品は決してまあるくない。




今でも時々 あの絵が欲しいな と 思う。



多分、ほとんど100% 手にすることはないと思うが。