管理栄養士の資格を取ったからといって
スポーツトレーナーになれるわけではない

就職先などは主に、病院や学校
または開発などの会社関係が主だった

特殊な仕事というのは
「コネクション」がついてまわる

それは時として金であり
人脈がものをいう

私にはそんな金はない
そんな産まれなわけでもない

例えば彼から人脈を分けてもらう
できない話ではなかったが
そんな事は一番自分的に受け入れられないことで

今思えば、この大学生活の中で
勉強よりも没頭していたのは
人脈集めだった

どこにでもいる
田舎の女が
必要とされる特別な人材になる為

人脈は最大の武器となる

ありとあらゆる知識だけを詰め込んで
自分を売り込んでいく

そんなものを得る為の恰好の場所のひとつとなったのが
クラブという夜の水商売の世界だった

大学は入ってしまえば
かなり時間に余裕のある場所で
それはかなり都合が良かった

彼が東京で夢を叶えていたから

私も次へ行く場所は東京だと
おのずと決められていた

東京は住むところじゃないって言う人がいる

でも、私にとっての東京は
この上なく居心地のよい素晴らしい街だった

変なやつがたくさんいて
普通という言葉なんてもんが存在しない
知らないやつにはとことん冷たくて
殺伐とした空気が心地いい
嘘という名の仮面をまとった人種が
ゴロゴロしている

ちょっと変わってる?
っていう方が評価されたりして
そんな人間達と出逢うことで
癒された
そして、彼らに私は活かされた

でもそこから先は
能がなければ、容赦なくぶった切られる

頭をつかい
ここで生き残るんだ

冷めてる中のギラギラとした空気に
挑発されているようだった

大学生生活の中で
私が用意した物差し


管理栄養士と調理師の資格
ソムリエ

NYで覚えた英語
イタリアで覚えた料理と語学


クラブでナンバーワンという地位


一体何者だよ?
自分でもそう思う
よくそこまで没頭できたなと....
これが若さゆえの
無知のパワーなのだろうか

興味のないところには全くといっていいほど
努力という言葉の欠片もなかったが

興味のあるものには
努力という言葉というよりも
依存するように没頭していった


でもその影で
本当はわかっていたんだ

これだけ何かに没頭してたのは

どんどん遠くなってゆく
彼への焦りと不安

ありのままの自分っていうものが
わからなくなっていた

何も持たない私は
何の価値もないんじゃないだろうか?

ものすごい背伸びをして
それを悩む時間を必然的に避けて

自分さえも
一体何者なのかわからない自分を
作り上げていった

そしてそんな自分を
面白いと思ってくれる人達がいたのが
東京という場所だったから
そんな自分を増長させていった....


きっとこの頃から
私と彼はすれ違っていた


彼の呪縛から逃れるように
他の事に没頭して
それが皮肉にも
彼との距離を広げてしまっんだ

どんな時でも
一番に想ってたんだよ

でも、いい女ってあなたが言った
その言葉の呪縛に

バカな私は
はき違えて、方向不明になってしまった


スポーツトレーナーを目指していた18の頃

21歳になった私は
フードコンサルタントという
他の職業の道を選んでいた

華やかな場所の裏の世界に
惚れてしまったから