大学に入ってからできた友達たちを
どっかでバカにしていた

何もわかってないお嬢さんたち
世間なんて何も見えてないだろう?

自分だって大して世間を見ているわけでもないし
子供だなって思ってはいたけど
ほんの少しだけ、しなくてもいい経験をしてきていた

きっとそれは、劣等感

無知でいる事や純粋さを
もう二度と、私は得る事ができないわけで

だから、どっかでバカにする事で
羨ましいと妬むような愚かな気持ちを
掻き消していた

この時の私には
まだそれを割り切れるほどの
心は持っていなかったから

彼女達をそういう目で見ていた
一番子供だった私...

彼の周りをちらほらしていた女たちの中でも
一番怖かったのは
無知な女

ねぇ、なんでそんな自信持てるの?
武器とか何にもないじゃん

それなのに余裕さえ感じる

私にとってストレスのような相手なわけだが
この大学生活の中で一番の親友となった子は
まさにその典型だった

彼女は、私に対して
凄いとか羨ましいとか
そんな言葉たちをボンボン投げつけてきて
最初はバカにしているのだろうと
苛立さえ覚えた

彼女は心を開き
悩みを相談してくる
私はいつも聞き役で、自分の本当のところの悩みは
口にできなかった

いつも上から目線でいさせてくれた彼女
私のどうでもいい
ちっぽけなプライドに踏み込んでこなかった彼女

ほんとは全部、私の弱さをわかっていたのかも知れない.....

4回生になったばかりの春

彼女は突然、大学を辞めると言い出した
初めてできた彼氏と
付き合いはじめてから半年ちょっとで
妊娠が発覚したからだった

その時、はじめて少しだけわかった気がした

あぁ、彼女は人は信じるという最強の
心の武器を持ってるんだと...

それが裏切られたとしても
きっと彼女はそこに理由を考え、許すだろう

やっぱり私は彼女には敵わない


彼にその事を話した時
少しバカにした口調で
「もったいねーな」と言った

幸せはそれぞれの物差しで違うけれど
もったいないって
何が?
将来?お金?仕事?時間?

それを得たところで
幸せになれるの?

得られなければ
幸せにはなれないの?

もったいないって確かに私も思ったんだ

そう思ってるうちは
きっと彼も私も
どこまでいっても満足できないんだろうなって
もしかしたら一生そうなのかも知れない

それって向上心なの?
自己満足のバロメーターが
きっと狂ってるんだ

そんな事を思うと
果てしなく続くこの先の未来に
疲れを感じた


彼女が無事子供を出産した時
私は東京への就職が決まっていた

彼女はまた私に
やっぱり凄いね!
と投げかけてきたが、そうは思わなかった

私なんかより全然凄いよ
心からそう思って、口に出せた時
少しだけ自分を認めれたような気がして
肩の力が抜けた