そんな生活を続けながら
私は17歳になっていた

同い年くらいの制服を着た女の子達を横目に

これで正しかったのだろうか?
と疑問詞がついてまわる日々だった

確かに水商売は嫌いじゃない
天性まではいかないけど
肌に合わないわけでもなく
奥が深いとこにハマってもいた

でも、このまま水商売を極めることが
私の光なんだろうか?

彼はどんどんプロへの道へと確実に進んでいる
私は、いつまで経っても消えない壁に
苛々を募らせていた...



そんな頃に本屋で一冊の本と巡り会ったんだ


 スポーツトレーナー


スポーツ選手の栄養管理の仕事について
書いてあるものだった

同じような本を何冊も買いあさって
黙々と読みふけった

元々、栄養や料理をする事に関心があった私には
興味をそそられる分野だったし
何より、彼の仕事にも関わりがあるわけで...

めちゃくちゃ嬉しいプレゼントを開ける前みたいに
ただただ興奮していた


もしかしたら、これが私の光となるかもしれない.....


こうと決めたら、行動だけは早い方だった私が決めた
ひとつの瞬間、転機だった

管理栄養士の資格を取るには
大学に行かなければならない

だから、大学を受ける為の資格
大検を受けよう

本を見つけて翌日の事だった



何の根拠があるわけでもない
それが正しいとも限らない

でも、この時の事を思い出すと

つくづく自分は
直感と運のみで生きているような気がする
計算するほど賢くはなく
それほど慎重にも生きられない

失敗なのかも?間違っていたのかも?
って、もし途中で思っても
肯定の方向へ持っていかせる

誰にも間違ってるとは言わせない為に
自分を守る為に

間違い、過ちという言葉は
自分の存在と被ってしまう

受け入れてしまったら
私は潰れてしまっていただろう



そうした私の決意に
彼も少しだけ驚いていた感もあったが
いつもの如く

「いーんじゃない」

と軽く賛成してくれた

あれほど大嫌いだった
数式も文法も頭の中に叩き込んでいった

留年とかそんな時間の余裕はない

少しでも早く
大学に入り、資格をとり
その世界で働きたい

無我夢中に
または、何かに取り憑かれたみたいに


そうして、なんとか大検、入試を突破し
同い年の子達と共に 18歳の春
私は女子大に入学した

もちろん、入学金も学費も自分で払ったが
ただ、保護者記入欄があった為
それだけ母親にお願いすることにした

偽造なんて簡単だったかもしれないのに
どこかで知らせたい気持ちがあったんだと思う

母親は快く引き受けてくれて
電話口で泣きながら

「おめでとう、良かった、よかったぁ」

と何度も何度も私に言葉を送り続け

その度に心が締め付けられて
苦しくなった

心配してくれていた人がここにいる

もしも、あなたの本当の子供だったら
もっと私が素直だったら
言えてたのかな?

「心配かけて、ごめんね」って....

でもこの時は言えなかった

こんな私の事を心配してると周りが知ったら
また嫌味を言われてしまう
私のせいで辛い思いは、もうしてほしくない
もうしなくていいんだよ

嬉しいのに、私はそっけないふりをして
そんな母親を突き放した

家を出た時にとっくに
気持ちを捨てたはずなのに

彼さえいればそれでいいはずなのに

みんなそれで幸せになるはずなのに


またこの時も大丈夫って
自分に嘘をついた