私は京都の高校へ
彼は大阪の大学へと進学した

近い場所どいえど
互いに学校と練習に明け暮れる毎日で
連絡はとっていたけど

大学生になった彼には
いつも色々な女の影がチラチラと伺えた

幼なじみだった彼には、ファンクラブなるものまで
出来上がっていって
距離はどんどんと遠くなっていく

私は彼と違って、オリンピックを目指すような
アスリートでもなく
高校総体がいいところで
タイムが縮んでも嬉しくも何ともなかった

彼の携帯は繋がらない事が増えて
私もまた、部活も学校もサボる事が増えていた

あの中3の夏休みに経験した
店での出来事の方が
学校より、よっぽど勉強になる

私は黙って、京都にあるキャバクラで
また歳を偽って
アルバイトを始めた

自分では食べにいけないような
高級料亭やフレンチ
お客に色々なところに連れていってもらい
舌だけは、どんどんと肥えていった

着物やお花の稽古にも通い
私なりに試行錯誤しながら
仕事に没頭、いやハマっていた

歳が若い事もあって
舞妓の話もあったが
何かに束縛されるのが嫌で
その話は断った

そんな生活を続けながらも
いまだ自分の光は見つけられないままだった

貯めたお金を元に
一人で海外へも行ってみた

なんか世界が広がるかなって....

確かにどの場所も魅力的で感動するものもあったけど
自分の居場所ではない

無駄な経験など何もなかったけど
常に思ってた

私は一体、何がしたいんだろう?
何を求めてるんだろう?


こんな生活が続いて
結局あっという間に高校は中退の道へと進んでいった

母親は帰ってきなさいと言ってくれたが
父親は帰ってこなくていいと怒っていた

今まで良い子のふりをしてきたけど
もう誤摩化す事はできない

育ての両親に、高校の入学費用と授業料を
一括で払った

母親はどうしてこんな大金を高校生のあなたが持っているのかと
私に聞いてきたが
父親は、どうでもいいと
その金を奪うように鞄の中に入れると
母親を引っ張って

「もう二度と帰ってくるな」

と捨てゼリフを吐いて私の前から消えた

心配してくれていた母親には
心が痛かったが
また、元の生活に戻れるはずもなく
私は嘘でも家族というものだった人たちに
背を向けた

彼の携帯は繋がらなかった

急に孤独感が押し寄せて
涙が止まらなくなって
胸が苦しくなった

強くならなきゃ
強くならなきゃいけないんだって
自分に言い聞かせて
涙をなんども拭ったけど
溢れるものは止められなかった...

これからは私が選んだ道を歩いていく
誰にも何も言わせない

翌日、彼から電話がかかってきたけど
ささやかな抵抗をするように
電話には出ず店へと向かった


そして彼は異変をアンテナみたいなもので
察知したのだろう

あれだけ電話をしても
繋がらなかったのに

私の前にこんな時だけ現れるんだ


何も言わず、ただ抱きしめてくれた
ズルいよ......